電話応対でCS向上コラム

第19回 ATMの先にあるニーズに応える-日本ATM株式会社-

お客さまにとってかけたくない電話

 弊社はATMのリモート監視をしています。国内のATM約20万台のうち、約半分のATMに設置されているインターフォンは、銀行ではなく弊社の監視センターにつながるようになっています。

 お客さまがインターフォンの受話器を取る時は「ATMの操作方法が分からない」「ATMが止まっている」など、何らかのトラブルに遭遇している時です。つまり、お客さまは電話をかけたくてかけているのではなく、電話をかけざるを得ない状況なのです。そのため、弊社のオペレーターには、お客さまの状況と困っている感情や背景などを察した応対が求められます。

お客さまの感情、背景を察した応対

 お客さまは「友人との食事会のため現金が必要」「家族旅行のため旅行会社に代金を振込まなければならない」などの“目的”を果たすために、ATMで現金の「引出し」や「振込み」を行っています。つまり、お客さまにとってATMでの取引は、あくまでも“手段”なのです。

 これは、とある監視センターでオペレーターから聞いた話です。大晦日の夜、ATMの画面に「取引中止」と表示されているのを見たお客さまが「現金の引出しができないと困る」とご立腹し、インターフォンから電話をかけてきました。オペレーターは丁重にお詫びをし、表示されている理由を説明し、近隣の稼動しているATMをご案内しました。しかし、お客さまの怒りはおさまりません。改めてお話をお聴きしたところ、オペレーターはお客さまが今日中に現金を引出したい感情と背景を察しました。そして「お年玉を今日中に用意して、落ち着いて新年を迎えたいですよね」とお伝えしたのです。

 すると、お客さまは「そうなんだよー」と落ち着いた口調になり、復旧まで待つことをご了承くださいました。お客さまは電話を切る前に「おたくも年末までお仕事、ご苦労さん。良いお年を」と、声をかけてくれたそうです。

電話越しに心が通じ合う

 ATM内で生じた問題を正しく速やかに解決することが、私たちには求められています。しかし、それだけに留まらず、お客さま本来の“目的”を叶えられるように“つなぎ”の役割も求められていること、そして、その役割を果たしたあとに、お客さまと心が通じ合うことをこの一件から教わりました。

次回の講師は、株式会社トヨタレンタリース山形の鷹濱 幸恵さんです。地元山形を愛し、ハートフルな指導をなさる企業内指導者です。第57回電話応対コンクール全国大会で審査委員も務めた方です

内田 佐也子氏

日本ATM株式会社 オペレーションサービス事業本部教育推進課所属。全国14ヶ所の監視センターで勤務する管理者とオペレーターを対象に、教育施策の企画と実施を担当。社内における電話応対技能検定(もしもし検定)の普及に尽力中。指導者級資格保持者21期生。

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