電話応対でCS向上コラム

第7回 相互理解に不可欠な「聴く」というアサーション

前回までは自己表現とアサーティブの関係を見てきました。アサーションを覚えて間もないころは、アサーティブになるために積極的な発言を心がける方が多いでしょう。しかし、ここで思い出してほしいことは、相手にも相手の気持ちや言い分があるということです。お互いに理解することを目指すのもアサーションです。今回では、相手の気持ちを引き出すために、積極的に相手に耳を傾ける、「聴く」アサーションに焦点を当てます。

「きく」で重要なのは、相手の伝えたいことを「聴く」こと

「きく」という言葉にはいくつかの意味がありますが、ここでは「聞く」「訊く」「聴く」について、それぞれの特徴を考えてみます。

「聞く」は、音や声を耳に入れるという意味であり、「訊く」は、自分の興味や関心があることを尋ねたり質問をするという意味です。会話の中では、言葉を「聞く」ことも、相手に「訊く」ことも大切ですが、それにも増して重要なのは、相手が伝えたいこと、知ってもらいたいことを「聴く」姿勢と反応を示すことです。

相互理解には、相手の話を聴くというアサーションが大切

アサーションの理解が進むにつれて、皆さんは自分の言い方や意見に関心が向きがちです。自分の思いを明確に伝えることは大切なことですが、相手の話を聴かなければ、一方的な主張になってしまい、相互理解は難しくなります。

忘れないようにしたいことは、「聴いてくれるあなた」がいるので、相手が自己表現できるということです。相手の話を聴くことは、受け身的な行為ではなく、実は、相手の話をうながし、意味を理解しようとする積極的、能動的なことです。「聴く」アサーションがあることを覚えておきましょう。

相手を理解するには、根気よくていねいに対話を続けること

相互理解とは、互いに相手を理解するという意味ですが、言葉を変えて言えば、相手の言葉がどのような意味を伝えようとしているかを理解し合って、共通の理解にたどり着くことです。

例えば、同僚が「昨日の朝は電車が止まっちゃって、参りました」と言った時、あなたが出勤時間に遅れて参ったのかと理解して、「それで会社に間に合ったのですか」と言うと、「それより冷房が止まっちゃって…」と言われ、「そうですか。昨日は、暑かったでしょうね」となると、「話す」と「聴く」がていねいにつながり、気持ちや伝えたい意味が分かち合えます。早合点しないで、根気よくていねいに対話を続けることが相互理解の鍵です。

話すことが苦手な人にもアサーティブに「聴く」

相手が話すことに苦手意識を持っていたり、伝えるのに苦心しているような時、あるいは自分にとって相手の言っていることが理解しにくい時も「聴く」アサーションが有効です。

相手の言葉や表情から受け取れることに想像力を働かせ、分かったことだけでも自分の言葉で返してみます。そうすると、相手は、あなたの寄り添って聴こうとした思いを受けて、分かってもらえた時は、ほっとして「そうです」と応え、分かってもらえなかったと思った時は、自分の思いを伝えようとするでしょう。相手が心を開いて話をするかどうかは「聴き方」によるのです。

話の途中でうなづきや相づちを入れて共感を示す

話をしている人は、もし聞き手の反応が鈍いと、理解されたかどうか分からず、不安になるでしょう。そこにはあなたの話し手に対する関心も理解しようとする共感的態度もが表現されてない可能性があります。

話し手が安心して話せるためには、相手に関心を寄せて聴き、タイミング良くうなづいたり、相づちを打つなど表情や言葉で共感を示しましょう。また、適切な質問をはさむことも、話をはずませる効果があります。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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