電話応対でCS向上コラム

第6回 自分の気持ちを把握することがアサーションの第一歩~攻撃的な上司へのアドバイス②~

前回では、部下に「攻撃的な態度」で接してしまう上司の皆さんに、なぜそのような対応になってしまうのかなどについてお話をし、その上で、解決方法の一つとして他者からのフィードバックにより「自分を理解すること」の重要さをお伝えしました。今回では、さらに一歩進めて、アサーションの第一歩ともなる「自分の気持ちを把握する」大切さを見ていくことにしましょう。

自分の気持ちが不明確だとうまく自己表現できない

上司の皆さんの中で、「自分はアサーティブになることが難しい」とお考えになっている方の中には、自分の気持ち、言いたいことがはっきりしないことがあるかもしれません。「何と言えば良いか」を先に考えるのではなく、まず、自分の気持ちが明確になっているかどうか、把握されているかを確かめることはアサーションの第一歩になります。

成長に伴い難しくなる「自分の気持ちを明確に把握する」こと

実は、「自分の気持ちを明確に把握する」ことは、人が成長する過程でどんどん難しくなっていきます。おそらく自分の気持ちを最も明確に分かっているのは、生まれたばかりの赤ん坊でしょう。お腹がすいた時、おしめが濡れて気持ち悪い時、抱いてほしい時、気分が悪い時など、言葉は使えませんが正直に泣いて気持ちを表現します。しかし、成長とともに、自分の訴えに対応してくれない親の態度や行動に接して、素直な自己表現をしなくなっていきます。表現されることのなかった気持ちや考えは意識の底に追いやられ、分からなくなっていくのです。

アサーションをしようとして心の底に眠っている気持ちをつかもうと努力すると、徐々に気持ちが分かるようになってきます。自分の気持ちが明確になると、言いたいことが分かって、アサーションにつながりやすいでしょう。

過度に結果や周囲を気にせず、自分の気持ちを適切に伝える

自己表現で重要なことは、言いたいことが伝わるかどうかの前に、自分の気持ちを適切に表現できているかどうかです。つまり、部下に伝わるかどうかは部下の受け取り方によって違いますので、伝わるかどうかは分からないし、それを怖れていても仕方がありません。むしろ、相手を大切にする気持ちを持ちつつ、まずはできる限り、自分の気持ちを正直に表現することにエネルギーを注いでみることです。また、他人や周囲の状況の方を気にして、自分の気持ちや考えを疎かにしていると、自分の言いたいことが言えなくなります。過度に結果や周囲を気にせずに、まず自分の思いを確かめてから、表現方法を考えてみることが重要です。

上司も部下も「それぞれの思いを表現する」アサーション権を持っている

さらに上司の皆さんにお伝えしたいことは、私たちは、誰もがアサーションする権利を持っているということです。アサーションとは「自分も相手も、それぞれの思いを表現すること」ですが、その拠り所になっているのは、自己表現の権利という、生まれながらにして誰もが持っている基本的人権を認めることにあります。つまり、人権は上司も部下も同等に持っているということ。言葉を変えれば、皆さんも部下も自分の考えや欲求を持って良いわけですので、常に思いが一致するとは限りません。上司も部下も互いの希望を述べ合う権利を大切にすると、葛藤が起こった時は歩み寄るアサーションが必要になってくるでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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