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ハラスメント対 策とは(前編)

記事ID:C10148

「これってハラスメントですか?」という問いが、今や職場では日常的に聞かれるようになりました。職場で起こるハラスメントのトラブルは、無意識のうちに始まってしまうことも少なくありません。管理職として大切なのは、基本を正しく理解し、起きる前から備えることです。

ハラスメント防止の基本とは

 ハラスメント防止の第一歩は、「会社としてハラスメントを許さない」という方針を明確に打ち出すことです。その上で、何か起きた時に誰に相談すればいいか、どのような対応をとるかをルールとして定め、社内に周知しておく必要があります。相談窓口の設置、実効性ある調査と対応、懲戒措置や被害者のケアなど、一連の流れをマニュアル化しておくことが重要です。

パワーハラスメントとは

 パワーハラスメント(パワハラ)とは、「職場において優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害すること」と定義されています。例えば怒鳴る、暴言を吐く、人格を否定する発言をする、長時間にわたって厳しく叱責する──これらは、パワハラに該当する可能性があります。
 一方で、「何を言ってもパワハラと言われそうで、指導ができない」という声も耳にします。指導はもちろん必要です。ただし、相手を傷つけない配慮や、言い方・伝え方を意識することが大切です。やりすぎない、感情的にならない、それがパワハラ予防の第一歩です。

セクシュアルハラスメントとは

 セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、「労働者の意に反する性的な言動により、労働条件に不利益を与えたり、就業環境を害すること」とされています。性的な関係を強要する、断ったことで人事上の不利益を与える「対価型」、卑猥な言動や性的なポスター、下ネタなどで職場の雰囲気自体を悪化させる「環境型」の2種類があります。
 性的な話題は、業務に必要である場面がほとんどありません。「軽い冗談のつもり」が相手には深い苦痛になることもあるので、注意が必要です。

マタニティハラスメントとは

 マタニティハラスメント(マタハラ)は、妊娠・出産・育児・介護などに関連する制度の利用に対して、不利益な扱いをしたり、嫌がらせを行うことです。「妊娠するタイミングを考えろ」「育休なんて取って、出世は望めないぞ」といった言動は、明確なハラスメントです。
 最近では、男性社員に対するパタニティハラスメントや、介護に関するケアハラスメントも話題になっています。制度の利用を妨げる雰囲気を作らないよう、管理職の姿勢が問われます。

カスタマーハラスメントとは

 カスタマーハラスメント(カスハラ)は、「『社会通念上不相当な態様』で、繰り返し『妥当性を欠く要求』を行い、就業環境を害する行為」です。顧客や取引先など社外の人間による過剰な要求・暴言・威圧的態度などを指します。
 「クレームを入れれば何でも通る」と思われてしまうと、現場のスタッフは心身ともに疲弊します。カスハラは業態によっても対応が変わってきますが、コールセンターでは、上司に代わるタイミングや、通話を終了してよい基準が決まっていることが多いようです。
 カスハラは、加害者が社外の人物であるという特徴を持つため、懲戒処分などの社内対応では限界があります。そのため、ほかのハラスメントに比べ、「起こさない」ことが非常に難しいのです。カスハラについては、起こる前提でのマニュアル作成が重要です。
 起こった時の報告・連絡・相談体制を整備し、警察や弁護士といった外部機関との連携体制も含めたフローを用意しておくことです。
 ハラスメントは、職場の信頼を一瞬で壊してしまいます。曖昧な状態を放置せず、起きる前から備えること。そして、誰もが安心して働ける環境を守るために、管理職としてできることから始めていきましょう。
 ハラスメント対策や職場環境づくりに悩んだ時に参考になるのが、厚生労働省が運営する「あかるい職場応援団」という情報サイトです。ハラスメントの定義や事例、相談対応の進め方、社内での研修用動画など、実務に役立つ資料が豊富に掲載されています。管理職として知っておきたいポイントを整理するのに最適なページです。ぜひ参考にしてください。

※あかるい職場応援団
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
(2025年8月時点の情報)

市川(いちかわ) (めぐみ)

1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。

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