電話応対でCS向上コラム

第4回 仕事とアサーション~アサーションを活用した働きやすい職場づくり~

自分も相手も大切にした自己表現であり、コミュニケーションであるアサーション。今回は、現代の労働環境に潜む問題点とアサーションを活用したその解決方法について考えてみたいと思います。

心身ともに疲弊しやすい現代の労働環境

地球規模での価格競争やアイデア競争の中で、企業は身を削りながら戦っています。そんな影響もあり、社内の人間関係が壊れ、ストレスで心身のバランスをくずし、うつ病などを発症する人も増えています。

そうした時代背景を受け、お互いを尊重して一人ひとりの個性と潜在能力を認め、組織への積極的関与を促すことなどを目的に、「アサーション」を取り入れる企業が増えてきています。

攻撃的な上司にはどのように伝えるか

一方、「アサーション」を取り入れていない企業の中には、競争と成果主義などのプレッシャーによって、一方的な命令や常に攻撃的自己表現をする管理者が目立つ組織も存在します。

例えば、ささいなミスでも声を荒らげる上司の下では、常にその上司の顔色をうかがう部下が増えます。それは決して、仕事の能率にはつながりません。上司がアサーティブにミスを指摘する必要はもちろんありますが、部下も上司に自分の思いをアサーティブに伝えることが必要です。

勢いに任せ「課長が怒って大声を出すから、みんな緊張して、ミスが増えるのです!」と攻撃的な自己表現をしてしまっては、人間関係は悪化していきます。しかし、非主張的な自己表現を繰り返し、我慢ばかりしていては、やがて自分に自信を失くし、暗い気持ちで日々を送ることになるでしょう。

部下が自分の思いを相手にしっかりと届けるためには、どのようにアサーティブに伝えることができるでしょうか?ミスがあったときはそれを認め、「今後、同じような間違いが起こらないように注意します。申し訳ありませんでした」とアサーティブに謝罪することが大切です。その上で「もう少し静かに話していただけると助かります」と、率直に自分の気持ちを伝えてみる。相互尊重の精神を持って対話を繰り返すことで、少しずつ信頼関係を築いていきます。

社内にアサーションの考え方を広めるメリット

社内にアサーションの考え方が広まれば、円滑な人間関係の構築以外にも、さまざまなメリットを生み出します。働く人々からは自由な発想や積極的な発言が生まれ、より創造的な製品開発や組織運営につながるでしょう。職場のコミュニケーションも豊かになるため、自然とお互いを思いやり、情報を共有する“つながり”が構築され、働きやすい職場づくりの基盤ができるでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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