企業ICT導入事例

-株式会社百戦錬磨-
国内初の「公認民泊」を実現 「旅行×ICT」で生み出す人々の移動と交流

海外からの観光客急増を背景に、注目を集めている「民泊」。
国内で初めて合法的な「民泊」運営の仕組みを作った株式会社百戦錬磨。
ICTを活用した「明確な移動目的」のある旅の創出は、地方創生や国際交流へつながっています。

深刻な宿泊施設不足に応える「民泊」の合法的運営

▲取締役COO(最高執行責任者)・三口 聡之介氏

年間2,000万人を超えて急増する海外からの観光客で、国内大都市圏での宿泊施設不足が深刻化しています。その需要を背景にAirbnb(エア・ビーアンドビー)など、インターネットで「民泊」を紹介するビジネスが増えています。しかし、日本においては多くが旅館業法に違反するだけでなく、利用者のマナー問題や近隣住民とのトラブルも多発し社会問題となっています。政府や自治体は、規制緩和と「違法民泊」の摘発に力を入れ始めましたが、根本的解決には至っていません。

こういった背景の中、2015年12月から「公認民泊」を掲げて、施設紹介のサービスを開始したのが株式会社百戦錬磨。その中心を担う、同社の取締役COO(最高執行責任者)の三口氏にお聞きしました。

「当社は、国家戦略特区において旅館業法の適用除外を認める条例に準拠した物件を紹介する『STAYJAPAN』というサイトを立ち上げました。東京の大田区や品川区、大阪の大東市などで現在約40軒を紹介しています。これは利用者にとって便利なだけでなく、空き家や空き室を持つオーナーや企業、つまり貸し手にも便利かつ安全・安心です」(三口氏)

三口氏の言葉どおり、同社の「公認民泊」事業は貸し手と借り手の双方に支持され、大手企業から提携申し出を受けるなど、幅広く注目を集めています。

起業のきっかけは東日本大震災復興支援のイベント

同社代表取締役を務める上山 康博氏とともに、現在の事業を立ち上げた三口氏は、子会社で民泊マッチングサイト「STAY JAPAN」の運営会社「とまれる株式会社」の代表取締役も兼任しています。

「私と上山は、携帯アプリケーション開発のベンチャー企業や大手のトラベルサイト運営会社で一緒に働いていました。独立・起業のきっかけは、2011年の東日本大震災の復興支援イベント『東北観光博』の運営に関わったこと。ここでいろいろな人と出会い、被災地の実情も知り、自分たちなりに考える旅行や交流を進めるビジネスのイメージができました」(三口氏)

そして翌2012年、被災地に雇用を生み出すために宮城県仙台市で創業。EC(電子商取引)サイトの構築・運営に必要なエンジニア確保の必要性などから東京にもオフィスを置く一方、本社は仙台とし、青森県の三戸では物産直売センターも運営しています。

小さく産んで大きく育てる 風変わりな社名に込めた思い

一度耳にしたら忘れられない「百戦錬磨」というユニークな社名には、どのような思いが込められているのでしょう。

「百戦錬磨のすごい会社という意味ではなく、自分たちの理想や仮説を、百戦してでも実現しようという思いから名づけました。でも百戦するには事業環境を固めねばなりません。安定成長させながら、成長しそうな事業を、『小さく産んで大きく育てる』ことが大切だと考えます」(三口氏)

その繰り返しの成果が百戦錬磨だと語る三口氏。同社の経営理念は「ICTを活用して明確すぎる移動目的を創り出し旅行需要・交流人口の拡大を図る」こと。民泊以外の「小さく産んで大きく育てる」事業にもこれは一貫しています。

「『とまりーな』というサイトは農林漁業など1次産業の家に宿泊する体験型の旅行を紹介します。また『JOINtly SPORTS』は、マラソンやバイクなどのスポーツイベント、『JOINtly GREEN』は、JAさんと提携して食と農に関連するイベントに参加するためのマッチングサイトです。共通しているのは、旅行や交流に『明確な移動目的』があることです。そして人生最後の“旅”が、自分の埋葬地を自分で決めることではないでしょうか。それが岩手県遠野市の曹洞宗のお寺と提携して始めた『千年樹木葬』の紹介サイトです」(三口氏)

モノよりもコトを求める時代 何ができるかを問い直しながら

▲「STAY JAPAN」と「とまりーな」から、「公認民泊」事業は大きな展開を続けています

サービスのラインナップが広がるとともに、さまざまな課題に直面し、まさに「百戦」状態にあるという同社。

「民泊事業は申込みが急増したけれど、施設が圧倒的に足りない。少なくとも100軒は早急に確保したいです。民泊に限らず、全国の企業や自治体からの相談も増え、地方創生につなげたいという声をたくさん聞きます。人々が旅行に求めるのはモノではなくコト、つまり日常では得られぬエクスペリエンス(体験)です。そのニーズと、地方創生というニーズをビジネスベースでマッチングさせるのは簡単ではありません」(三口氏)

2016年現在、4年後の東京オリンピックに向け、海外からの多くの観光客を受け入れる環境づくりが早急な課題となっています。「民泊事業」に懸ける思いと可能性について、最後にこう締めくくりました。

「“違法民泊”ビジネスは簡単にはなくならないでしょう。しかし、私たちは正攻法でやっていきます。『自分たちがやらないと誰もやらない』という使命感も強いです。すぐには儲からないですが、この正直さに対して出資や提携の話をいただけるのだと思います」(三口氏)

この言葉を裏づけるように、2016年4月には、大手私鉄やクールジャパン機構などから多額の出資が行われるに至った同社。三口氏は、「民泊事業」の成功を長期的な視点ではっきりと見据えていました。

会社名 株式会社百戦錬磨
設立 2012年(平成24年)6月19日
所在地(本社) 宮城県仙台市青葉区本町2-17-17 田畑ビル3F
代表取締役 上山 康博
資本金 7億8,400万円
事業内容 各種ICTサービスの自社開発/運営、コンサルティング事業、研修事業
URL http://hyakuren.org/

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