電話応対でCS向上コラム

-NTTファイナンス株式会社-
第76回 お客さまに合わせた応対とは?

記事ID:C10146

お客さまからの「直接指導」

 「あなたの言いたいこと、それで全部終わった?」
 電話の向こうで、半ば呆れたといった風に深いため息をついているお客さま。そして、そのお客さまは続けてこのようにおっしゃったのです。
 「あのね、そんなに一方的に説明されたら、こちらの言いたいことも言えないでしょ?もっと相手に合わせてくれないと…」
 これは、今から遡ること20年近く前、私が携帯電話の料金センターで電話応対をしていた時に、お客さまから実際に言われた言葉です。当時、まだ電話応対について体系的に学んだこともなく、「相手に合わせる」という概念すらなかった私は、お客さまからの思いがけない直接指導に、「なるほど!」と妙に納得したものでした。
 それから時は過ぎ、私はセンターの応対品質管理を担当することになります。そして、そこで改めて「お客さまに合わせた応対ほど難しいものはない」と身に染みて感じるようになりました。

言うは易く、行うは…

 「お客さまに合わせる」ための要素は、いくつもあります。例えば、「話す速度を相手に合わせる」「間を取る」「相手の反応に合わせて言い回しを変えてみる」「ニーズに応じた情報量を伝える」など…。ところが実際には、冒頭のエピソードでの私のように、間が少なく畳みかけるような話し方や、相手にとって不要な情報を延々と伝えている場面に遭遇します。意外と本人も自覚していない場合が多く、自分の通話録音を聴いて驚いているコミュニケーターもいます。また、せっかちな性格が早口に表れるというように、話し方には個人のキャラクターが如実に反映されるため、改善も一筋縄ではいきません。
 まずは本人に気づいてもらい、根気強く修正するしかないのですが、中には、個人に要因を求めるのは気の毒だと感じるケースもあります。

トークスクリプトは誰のもの?

 それは、「応対スクリプトや応対基準書の規定どおりに話すよう指導されているため、相手に合わないと分かっていながら画一的なトークをしている」というケースです。
 本来は応対品質向上のためのそれらのツールが、時に企業側の都合を優先したトークを引き起こしているというのは皮肉なものです。こうしたツールの在り方も、再考して良いのかもしれません。
 お客さまに合わせた応対とは何か…?無数の正解を求めて、思いを巡らす日々は続きます。

吉岡 聖司氏

NTT ファイナンス株式会社 ビリング事業本部 中国・四国ビリングカスタマセンター所属。これまでに、電話料金に関するお問い合わせ受付部門の応対品質管理を担当。また、電話応対技能検定の企業内導入実施機関として、社員向けの研修、検定を行う。電話応対技能検定指導者級資格保持者。2024年度企業電話応対コンテスト審査委員(商業・金融部門)。

「次回の講師は、オフィスKEI株式会社の山口 秀江先生です。電話応対コンクールの上位入賞者を多数輩出されている、この道のベテランです。おっとりとした穏やかな物腰の中にも、的確かつ分かりやすいアドバイスをくださる頼もしい先生です」

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