電話応対でCS向上コラム
Office Polaris-第72回 お客さまの心の奥深くまで聴くことの大切さ
記事ID:C10134
お客さまからの要望
ある自動車メーカー販売店舗で、お客さま応対の音声をリアルモニタリングしていた時のことです。ご用件は「担当営業を変えてほしい」ということでした。対応したスタッフが理由をうかがうと、「今の担当は話し方が幼すぎて、話が耳に入ってこない。説明が分からない。保険の手続きについて問い合わせたが、主語を言わないので手続きの流れが理解できなかった。悪い子ではないが、私とは合わない」とのことでした。
担当営業の上司へすぐに報告したところ、ほかのお客さまからも話し方について意見があったようで、担当者の説明力や話し方に課題があるので指導してほしいとのことでした。
何本か音声を確認すると、確かに語尾が上がる幼い話し方が気になります。また、お申し出のあった音声では、修理の流れを知りたいお客さまに「まず保険会社に連絡をしまして~」と説明していますが、「それは誰がするの?私?」と確認される場面が何回かありました。
課題は明確なのですが、どこかあきらめているようなお客さまの声や話し方が気になりました。
フォローコールで分かったこと
そこで、そのお客さまにお申し出へのお礼のお電話をし、ほかにも気にかかることがないかうかがったところ、次のようなお話を聴かせてくださいました。
30年来つき合いのあった営業所がなくなり、3年前、親身になって相談に乗ってくれた営業担当者のいるこの店舗で車の購入を決めた。しかし1年も経たずにその担当者が異動。次の担当者も1回顔を合わせただけで異動し、3人目の担当者には一度も会わぬうちに、今回のスタッフから新担当の通知ハガキが届いたとのこと。今回、車の点検の連絡をしたが、まともな挨拶もなく、事務的に日程を調整された。人生で何度もない高い買い物なのに、大切にされていると感じられず残念だったと、仰っていました。
きっかけは担当者の説明力や話し方への不満でしたが、実はもっと前からこの店舗全体に対して不信感をお持ちだったのです。これでは一人のスタッフの話し方を指導しても満足にはつながりません。
変わらない大切なこと
気持ちとお申し出は必ずしも一致しないことがあります。お客さまの話を心の奥深くまで聴き、フィードバックを真摯に受け止め、店舗全体で改善へつなげる姿勢が求められていると実感しました。
世の中が大きく変化する中で、ビジネスマナーの考え方も変わることがありますが、挨拶などの基本マナーやお客さまを大切に思う気持ちを言葉や態度で表すことの大切さを伝え続けていきたいと思います。

白井 裕美氏
Office Polaris代表。電話応対技能検定指導者級資格保持者(10期生)。電話応対コンクールの研修や指導、審査委員に携わるほか、電話応対技能検定の講習・試験実施にも積極的に携わっている。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 認定アンガーマネジメントコンサルタント。