企業ICT導入事例
-横浜信用金庫-AIの活用で、頻発する「特殊詐欺」を検知、お客さまの被害を未然に抑止
横浜市を中心に61店舗を展開する横浜信用金庫は、ATMを使った特殊詐欺を未然に防止するため、NTT東日本 神奈川事業部と共同で、AIを組み合わせたカメラとマイクを用いて実店舗での実証実験を行いました。
【導入の狙い】AIを組み合わせた監視システムの導入で特殊詐欺による被害を未然に防ぎたい。
【導入の効果】AI監視システムの実証実験により、職員の「特殊詐欺を防ぐ」という意識が今まで以上に高まった。
「特殊詐欺」の舞台は金融機関窓口からATMへ移行
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▲総務部 副部長 八幡 勝己氏
身内のふりをして現金を振り込ませる“オレオレ詐欺”や、「還付金が戻ります」と預金者を騙し、ATMを操作させて預金を奪い取る“還付金詐欺”など、いわゆる「特殊詐欺」の被害は後を絶ちません。
「お客さまの資産を守ることは、私たち金融機関の重要な使命です。特殊詐欺による被害を防ぐことは、その一環として非常に重要視しており、これまでも神奈川県警と協力して防犯キャンペーンを行うなどの取り組みを行ってきました」(八幡氏)
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▲総合企画部 推進役 汐見 孝氏
「窓口で多額の現金を振り込みたいという高齢者には、その理由をうかがうなどして詐欺被害から“水際”でお守りするよう、心がけています。実際、2017年にはそうした職員の声がけにより21件の“振り込め詐欺”を防ぎ、県警から表彰も受けました。しかし私たちを含め金融機関の対策が進んだことで、詐欺グループはATMを使った“還付金詐欺”など、職員の声がけを回避する手口に軸足を移しつつあります」(汐見氏)
職員の目が届きにくいATMコーナーをAIが常時監視
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▲総務部 主任調査役 秦 秀行氏
店舗によってはATMコーナーに「ロビーマン」という案内係が配置されています。また監視カメラも用意されています。しかしそれだけで、すべてのお客さまの挙動を確認することは困難でした。
「そうした中、2019年3月にNTT東日本から『AIを使った特殊詐欺防止の実証実験に協力してもらえないか』というお話をいただいたのです。ATMコーナーでの詐欺被害防止策を考えていた当金庫にとってもありがたいお話であり、協力させていただくことにしました」(秦氏)
店舗の選定などを経て、実証実験は8月1日から9月30日までの2ヶ月間行われました。
「実験の対象となる店舗を複数選定し、ATMコーナーにカメラとマイクを設置しました。選定した店舗はビジネス街よりも、個人で高齢のお客さまが多いであろう住宅地周辺から選びました」(秦氏)
「ATMを使った特殊詐欺では、多くの場合、犯人が被害者を言葉巧みにATMコーナーへ導き、電話で操作を指示して預金を振り込ませます。今回、NTT東日本が構築したシステムは、この犯罪の特性に着目し、カメラで撮影した画像をAIが解析し『人が電話をかけている動作』と判断した場合、またマイクが音声を感知した場合に、ATMの正面に設置されたディスプレイが『その振り込みは大丈夫ですか? あわてずに、今一度ご確認ください。』『その会話 大丈夫ですか?』といった警告メッセージを表示するというものです。また店舗内に設置したパソコンのディスプレイにもカメラがとらえた映像を表示するので、お客さまへの声がけがスムーズにできます」(八幡氏)
職員が「ATMコーナーの状況」に気を配る副次的効果が
では2ヶ月の実証実験で、どのような効果があったのでしょうか。
「幸い、実証実験中に実際の詐欺事案発生はございませんでした。AIはきちんと『電話をかける動作』を判断し、パソコンのディスプレイにカメラの映像を表示しましたが、実際には若いお客さまが会話しながらATMを操作しているというケースなど、特殊詐欺とは無関係なものでした」(秦氏)
ただこうした実験を行ったことで、副次的な効果があったと言います。
「ATMコーナーには以前からカメラが設置されていましたが、担当の職員が常に監視を続けることは難しい状態でした。今回の実証実験では、AIの判断で警告メッセージが店舗内にあるパソコンに配信されるため、担当職員の負荷を大きくすることなくATMコーナーの状況が分かることが確認できました。また職員の間にも『ATMコーナーが店舗内の死角になりやすいこと』があらためて周知され、手の空いた職員、店舗内を移動する職員がATMコーナーに高齢のお客さま、様子の落ち着かないお客さまがいらっしゃらないか、注意を払うようになりました。そうした意味で、職員の『特殊詐欺を防ぐ』という意識付けにも一定の効果があったと思っています」(秦氏)
AIの高精度化、高機能化により実用化への進展を期待
最後に、こうしたAIを用いたシステムについての期待と要望についてうかがいました。
「AIが『電話をかけている』という動作を認識し、警告してくれるという仕組みには将来性を感じました。人の目による監視には、やはり限界があり、営業時間中、すべてのATMの監視を続けることは困難です。人が見ていなくてもそうした判断を行い、お客さまに警告を発し、“いったん立ち止まって考えていただくこと”は、特殊詐欺による被害を食い止める第一歩になるはずです。今後はAIがさらに高機能化し、例えば『高齢の方が電話をしている』『会話の内容に特殊詐欺に関わる単語が含まれている』といった手がかりからより高精度の判断が実用化されることを期待したいですね」(八幡氏)
「特殊詐欺に騙されそうになっているお客さまは、そこに意識が集中し、冷静な判断ができなくなっています。職員による声がけも、一歩間違うと『自分の考えで振り込もうと思っているんだから』と主張するお客さまとのトラブルにもなりかねません。今回のディスプレイによる表示は、お客さま側にいったん冷静になっていただく意味で、良い着眼点だと思いました。今後のバージョンアップによりまた実験の機会をいただけるなら、ぜひとも協力したいと思います」(汐見氏)
企業名 | 横浜信用金庫 |
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創業 | 1923年(大正12年)7月 |
本店所在地 | 神奈川県横浜市中区尾上町2-16-1 |
理事長 | 大前 茂 |
出資金 | 18億2,200万円 |
事業内容 | 信用金庫法に基づく金融業務全般 |
URL | https://www.yokoshin.co.jp/ |
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