企業ICT導入事例

-大熊町役場-
復興への歩みにシンクライアントを活用

【導入の狙い】業務効率化とセキュリティ強化のため
【導入の効果】バックアップデータが役場機能の早期再開に寄与

復興への歩みを続ける大熊町

 福島県大熊町は、東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故で、町民が避難。町役場は同じ福島県の会津若松市役所追手町第二庁舎に出張所を開設、避難中の町民のサポート、そして復興への歩みを続けています。

 こうした大熊町の取り組みを後押しするのが、業務に使うデータとアプリをサーバに置き、各自のPCはネットワークを介してそのデータやアプリを利用するというシンクライアントです。

業務効率化を目的に「シンクライアント」を準備

▲総務課 管財係 係長・志賀 博英氏

 「大熊町のシステムは、職員が日常の業務に使う『情報系』と、税務や健康保険などの住民サービスに使う『基幹系』の二系統に分かれていました。各職員のデスクにはそれぞれのネットワークにつながるPCが2台置かれていたのです。これは非効率的で、かつ相互にデータをコピーする際などにUSBメモリなどを使う必要があり、セキュリティ上のリスクとなっていました。そこで、両者を1台のPCで利用できる『シンクライアント』の導入を決めたのです」(総務課 管財係 係長・志賀 博英氏)

BCP対策にもなった「シンクライアント」の導入

▲サーバに自動でバックアップ

 大熊町が導入を決めたシンクライアントは、NTT東日本の提案によるもので、試験導入は、2010年末にスタート。翌年春からの本格導入を目指して最終調整を行っていた矢先、東日本大震災が発生しました。
 
 「震災被害への対応、そして原発事故による町全体の避難。3月11日以降は、気の休まる日がありませんでした。しかしシンクライアントの試験導入により、町役場の業務に必要なデータのほとんどが新たに導入されたサーバにコピーされていたことが、復興の大きな足がかりになりました」(志賀氏)

 シンクライアント導入以前は、職員それぞれが自分のPCに作成した書類を保存。必要に応じて、サーバの共有フォルダを使うという業務フローとなっていました。シンクライアントの試験導入により、そうした個人PCのデータがサーバに集約されていたのです。

 「2011年6月、一時立ち入りが許可された際、私たちは、NTT東日本職員の協力もいただき、被災した町役場に向かいました。わずか2時間の滞在時間で、町役場のサーバルームから必要なサーバを搬出しました。シンクライアントの導入前で、職員各自のPCにデータが保存されている状況では、データの回収はまず不可能だったでしょう」(志賀氏)

 こうして町役場から救出されたデータは、新たにNTT東日本のデータセンタを保管場所として選択。以降、各職員が使うシンクライアント端末からのアクセスを受け、町の業務遂行をサポートしています。

ICTを活用した住民サービス向上施策

▲会津若松出張所内

 こうした努力により、住民へのサポートを継続する一方で、大熊町はICTによる住民サービス向上のための施策も実行しました。

▲町民に配布されたタブレット

 「大熊町の町民は、いま地域コミュニティからは切り離された存在です。そこで私たちは、各地に避難中の町民全世帯にタブレットを配布し、地域に根ざした町のコミュニティを、ネットの上に展開することになったのです」(志賀氏)

 大熊町は今年5月、「大熊町復興まちづくりビジョン」をウェブ上でも公開しました。このビジョンには、長いスパンでの復興計画の概要が記されています。この復興計画をICTが大きく後押しし、一日でも早くもとの生活を取り戻す日が訪れることを望んで止みません。

 「今後は、テレコム・フォーラムの掲載事例も参考にしながら、ICTなどを活用した町民コミュニティの維持・支援などを含め、町民の皆様の生活と健康を第一に考え復興に向けて取り組んでまいりたいと思っています」(志賀氏)

組織名 大熊町役場
設立 1954年(昭和29年)11月1日
所在地 福島県会津若松市追手町2-41 (会津若松出張所)
町長 渡辺 利綱
事業内容 町の行政事務の取り扱いおよび管理
URL http://www.town.okuma.fukushima.jp

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