企業ICT導入事例

-相互電業株式会社-
ICTで働き方改革を推進し業務効率化や風土改革を実現

働き方改革

公開日:2022/07/25

企業内で働き方改革や業務効率化を図るためクラウドサービスを導入し、利用促進の役目を担うのは管理職やヘッドハンティングされたICT活用を得意とする人材であることが多いでしょう。しかし、中には熱い想いを持った一般社員が担うということもあります。今回はその一つ、北海道帯広市の相互電業株式会社で社内のクラウド化推進をリードする、今野 愛菜氏に話をうかがいました。

クラウド化の目的を社長と共有

管理部 今野 愛菜氏

 相互電業株式会社は、電気工事を中心に設備工事や保安業務などを行っている企業です。同社のクラウドサービス導入は、管理部の今野 愛菜氏の「愛犬との時間をもっと増やすため、在宅勤務にしたい!」という想いがきっかけでした。
 今野氏が在宅勤務を実現するためにまず行ったのは、インターネットで「在宅勤務 方法」や「在宅勤務 事例」などと検索し、必要な情報を収集することでした。その中でたどり着いたのが、サイボウズ社のクラウドサービス「kintone」でした。

 「kintoneを活用した理由は、プログラミングの専門知識がなくともアプリを開発できることでした。そこで、会社の皆にとって便利なアプリを開発し、情報を共有して業務の効率化も図れるシステムを構築すれば、在宅勤務が可能になると考えたわけです」(今野氏)

 しかし、自分の想いが社内の方針に合っていなければ、受け入れられません。そこで、今野氏は堅苦しい雰囲気にならないよう、社長に雑談の形で提案してみました。すると、社長も自分と同じような想いを持っていたことが確認できました。

 「社長との話し合いでは、クラウド化の目的についてすぐに共通認識を持つことができました。まずは、社員の幸せのために“働き方を改善”していきたい。そのためには仕事の“脱属人化が必要”。そして“顧客対応力もUP”していきたい。この三つを支えるための正確で迅速な“経営情報(共有)”が必要という四つの目的について話し合いました」(今野氏)

社員が納得して業務改革を進めるために“雑談”を展開

 元々、同社には工事情報などが担当者に属人化されているという課題がありました。そこで、社長が顧客管理のシステムを導入して、この課題を解決しようとしていました。しかし、現場ではシステム導入の目的がしっかり理解されず、さらに経営者視点で作られたシステムだったせいか、ほとんど使われなかったそうです。今野氏はこの失敗を教訓に、次のステップへと進みました。

 「次に行ったのは、私と社長だけではなく、現場の視点を取り込むことでした。そこで、実施したのが『システム移行プロジェクト』と称した雑談です。時間帯にとらわれずその場で集まれる有志だけが集まり、より本音の部分、本当の想いが聞けるように、お茶とお菓子を用意して、新しいシステムの導入についてざっくばらんに話をしました。もちろん、中には導入に反対する方もいましたが、じっくりと理由を聞きました。そして、お互いの考えを話し合い、目的が一致するまで、長い時は一人2時間くらい話をしました」(今野氏)

 当初、導入への賛同者は全社の約3分の1でしたが、業務課題をピックアップし、最初に開発した精算請求アプリなどは皆に喜ばれたと言います。しかし、要望があったはずの日報と議事録のアプリはまったく使われていませんでした。理由を聞いたところ、「特に困っていないので、使う理由がない」とのことでした。アプリをいろいろ開発し、業務効率化を一気に進めたいという今野氏の想いと、ほかのメンバーとの間に温度差が生じ、人間関係までぎくしゃくしてしまったそうです。

 「自分の考えばかりで進めていては、現場が求めるものにならないと痛感しました。そこで、社内の各部門長と相談し、部門ごとに業務改革のためのワークショップを開催して社員一人ひとりの意見を吸い上げてもらいました。この意見を基に会社として一番に取り組むべきことを決めていった結果、全社的に同じ方向に向かうことができるようになりました」(今野氏)

アプリ導入に当たっては、実際に体験しながら操作性を確認

年間1,000時間、400万円削減さらにチームワークも強化

 工事に関する業務は、見積管理、積算・請求、原価管理などさまざまですが、同社の従来の案件管理は紙ベースのため、集約・集計に手間がかかり、非効率的なものでした。しかし、クラウド化の結果、作業時間が大幅に短縮され、社員全体の業務時間が年間1,000時間も削減されたそうです。

 「帯広市は広大な十勝平野に位置しているため、会社から工事現場まで車で往復3時間かかることもあります。以前は費用の精算や協力会社の伝票を処理する際、その都度オフィスに戻る必要がありました。クラウド化によってこうした移動時間などが大幅に削減されました」(今野氏)

 さらに、システムの集約などにより経費が年間400万円削減されました。そのうえ、クラウド導入は顧客対応力やチームワークの強化にもつながったと言います。

 「以前は工事情報が担当者のみに集中し、超属人化していたため、例えばA社を担当する社員が不在の場合、A社の電話応対もままならない状況でした。しかし、クラウドで情報共有が進んだおかげで、お客さまへの対応力が確実にアップしました。さらに、案件の担当者は誰か、ステータス(進捗状況)はどうなのか、誰が何件担当しているのかなど、現時点の状態が見える化、共有化されたことで(図参照)、ベテラン社員が新入社員の関わっている工事情報を見て、『この工事は得意だから、同行しようか』と名乗り出るようなチームワークも生まれました。そして、私個人としても在宅勤務が実現でき愛犬と一緒にいられる時間が増えて、安心して仕事ができています。他にも、社員それぞれの希望する人事制度が設立されており、会社全体で働き方改革が進んできています」(今野氏)

 このように、一個人の“想い”からスタートした同社のクラウド導入は、働き方改革や業務改善にとどまらず、会社全体の風土を変えることにもつながりました。相互電業株式会社の事例は、中小企業のクラウド化を進める際に、大いに参考になるのではないでしょうか。

※ kintone(キントーン)
開発の知識がなくても自社の業務に合わせたシステム(アプリ)を簡単に作成できるサイボウズ社のクラウドサービス。
会社名 相互電業株式会社
設立 1956年(昭和31年)7月
所在地 北海道帯広市東1条南5丁目2番地 相互ビル
代表取締役社長 板倉 利幸
資本金 2,000万円
事業内容 電気設備工事、LED化工事、住宅設備工事など
URL http://www.sougodg.co.jp/
ユーザ協会会員

「全国中小企業クラウド実践大賞2021」
日本デジタルトランスフォーメーション推進協会賞受賞
「テレコム・フォーラム 2022.4月号」掲載

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