企業ICT導入事例

-友鉄工業株式会社-
RPAによる作業の自動化で単純作業から人を解放し、生産性を向上

記事ID:D20010

ファイルのデータ同士のコピー&ペーストや、同じ内容のメールを宛先リストに基づいて送るといった単調な作業は、手間がかかり、人為的ミスの原因ともなります。こうした課題を解決するソリューションが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」です。このRPAの導入を手がかりに、社内のデジタル化を推進してきた友鉄工業株式会社に話をうかがいました。

 労働力不足が見込まれる中、単純作業から人を解放し、“頭を使う仕事”に多くの時間を充て、生産性を高める環境づくりが求められています。こうした観点から、現在注目を集めているのが「RPA」です。
 RPAは、ソフトウェアの“ロボット”が、人に代わり、あらかじめ定められた「シナリオ」に従ってパソコンを操作します。つまり人が行っていた単純作業をRPAに任せることで、人は単純作業から解放され、より生産性の高い業務に時間を使うことができるのです(図1参照)。
 このRPAによる効率化は、政府の「デジタル・ガバメント実行計画(2020年12月25日閣議決定)」においても「大量かつ反復して行われる業務の処理の高速化などにおいて、効率化・自動化の効果が期待される」とされ、「人的資源の戦略的投資」という観点からも、各省庁への導入推進が呼びかけられています。

ソフトウェアの“ロボット”「RPA」を現場が学ぶ形で導入

右:代表取締役社長 友廣 和照氏
左:鉄蓋事業部 土井 博恵氏

 広島市に本社を置く友鉄工業株式会社も、こうしたRPAを管理部門に導入し、大きな生産性向上を果たした企業の一つです。同社は工業製品の製造に使うプレス用の金型やマンホールの蓋などの鋳造品を手がけるメーカーで、これまで製造現場へのICT導入による効率化を図ってきました。しかし、取り扱う製品のほとんどが多品種少量生産のため、統合的なデジタル化がなかなか進まない状況でした。そんな折に、友廣社長は知人の紹介でRPAを知ります。

 「RPAはパソコンによる面倒な単純作業が自動化できることが魅力でした。弊社は統合的なソフトウェアがないため、例えば毎月の給与計算は勤怠のデータなどを個別のソフトウェアから数字を書き写して算出するなど、手作業が多い管理部門の負担軽減に役立つのではないかと感じました。そこで、ITシステム部に相談したところ、現場で実際に使う人が学ぶ形で導入するのがベストと話がまとまり、管理部門から優秀な社員5名を担当に選抜しました」(友廣氏)

 担当に選ばれた5名の中の一人、土井氏は研修に参加した際、「人がパソコンでやっていることは、すべてRPAで代行できる」という説明に大きな期待感を持った一方で、本当に自分たちにできるのかという不安があったと振り返ります。

 「導入当初はまず、身の回りの単純で簡単な定型作業からRPA化しました。もちろん、最初は上手くいかないことも度々でしたが、分からないことはサポートに聞く、ネットで調べるなどして進めるうちに、なんとなくコツが分かり、シナリオ作りを楽しめるようになってきました。それまで時間と手間をかけて行っていた作業が『ボタン一つ』で済むようになる度に達成感が生まれ、それが次のシナリオを作るモチベーションにつながりました。また、目的があいまいなまま無意識に行っていた作業が多くあり、それまで行っていた作業そのものが必要かどうかを考えるきっかけにもなり、実際になくした作業もありました。おかげで仕事が楽になったことを実感できましたし、データ化やデジタル化、効率化を考える時間が増えていきました」(土井氏)

人件費の大幅な削減により、導入初年度で費用の償却にも成功

 こうしたシナリオ作りの結果、生産性の大幅な向上に役立つものも生まれました。前述した、個別のソフトウェアから書き写して行う給与計算などは、読み合わせ確認の時間も含めると約2時間半かかっていました。しかし、RPA導入で入力などの作業が自動化されたことで、社員の業務に大きな余裕が生まれました( 図2参照)。

 「こうした積み重ねで、導入から1年半の労働時間の削減は729時間となり、単純作業から社員を解放し、より頭を使う業務への専念が可能となりました。人件費換算で考えると、導入初年度で費用は償却できたことになります」(友廣氏)

 RPAの効果は、こうした労働時間や費用だけにとどまらない効果も生んでいます。

 「手作業で同じことを繰り返す単純作業は疲れますし、間違えてはいけないというプレッシャーもありました。しかし、そうした作業をRPAに任せることで気持ちも楽になり、それ以外の仕事での生産性も上がっている気がします」(土井氏)

 さらに、管理部門でのRPA導入の成果が、生産部門に波及したものも見られるようになりました。例えば、工場での品質管理工程の一つであるテストピースの強度、伸び、硬さなどを測定する検査業務では、これまで単体の試験結果を手書きでメモしてからデータベースに入力していました。しかし、現在はRPAが数値を集め、そのままデータベースに入力する仕組み作りが進められ、RPAの効果が生産部門でも少しずつ認識されてきているそうです。

 「組織横断的なシナリオ作りに協力する中で他部署の業務の理解も深まり、仕事を楽に出来たおかげで感謝されたこともありました。その中でやりがいを感じましたし、皆で協力しあい、成長していける喜びも感じています」(土井氏)

RPAで作業効率向上に取り組む女性社員たち

デジタル化への理解が長く続く“手書き文化”の一掃へ

 同社の各部門でデジタル化の効果が認識されつつある中、友廣氏は「RPA導入により社風も変わりつつある」と言います。

 「当社は根強い“手書き文化”を払拭できないままでいましたが、RPAにより『デジタルは楽で便利だ』という認識が現場から広まり、これがデジタル化への推進力につながっています。今後も手書きからデータへ、手作業からRPAへという動きを加速させ、デジタル化を部署間を超えて横断的に広げることで、全社的にステップアップしていくことを目指しています(図3参照)」(友廣氏)

 さらに、同社は次のステップとして、技術の伝承にもデジタルの導入を目指しています。 

 「ものづくりにはやはり職人の技や勘どころが重要ですが、デジタル化によりスムーズで確実な伝承につながるものも少なからずあります。今後は、映像なども上手く使いながら、デジタルとアナログの融合での技能伝承を行い、会社の将来の成長を目指していきたいと思っています」(友廣氏)

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会社名 友鉄工業株式会社
設立 1959年(昭和34年)6月
本社所在地 広島県広島市安佐北区安佐町飯室6151-1
代表取締役社長 友廣 和照
資本金 4,450万円
事業内容 鉄鋳物製造の技術をベースに、企画提案、設計、鋳造、機械加工、 塗装、組み立てまでを一貫製造。
URL http://www.tomotetu.co.jp/
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