企業ICT導入事例

-スチールプランテック株式会社-
実務経験者が“ロボット”を制作し、RPAのスムーズかつ効率的な導入を実現

記事ID:D20005

パソコン上で行う定型や反復などの単純作業をシナリオに基づいたソフトウェア(ロボット)が行い、業務効率化を図る仕組みがRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)です。このRPA導入をIT部門主導ではなく現場主導、かつロボットの制作も現場で行い成果を上げたスチールプランテック株式会社に、その狙いと効果を聞きました。

−御社の概要について教えてください。

写真左から、鵜飼 夏子氏(プラントエンジニアリング本部 製銑エンジニアリング部 製銑・石灰炉グループ)、永嶋 千恵子氏(調達部 機材グループ主任部員)、櫻井 まゆ氏(企画部 経営企画室)、藤森 典子氏(管理部 人事総務室)、広瀬 友行氏(企画部 経営企画室主任部員)

広瀬:弊社は2001年にJFEエンジニアリング(旧NKK)、日立造船、住友重機械工業の製鉄プラント部門が統合、さらに2004年には川崎重工業の同部門も合流し誕生した製鉄プラントエンジニアリングメーカーです。1990年代には競合する欧州のプラントメーカーが国境を越えて統合し、競争力を高めていました。当時日本の各社はそれぞれの地域で戦っていましたが、日本の製鉄プラント技術を守るために大同団結したというのが統合の背景にあります。事業内容は製鉄機械、アルミニウムなどの非鉄金属製造機械、これに関連する各種機械の企画設計、調達、製造、据付、試運転、保全などで、導入からアフターサービスまで一手に引き受けています。

−RPA導入のきっかけについて教えてください。

広瀬:2017年頃から業務プロセス改革の一つとしてRPAが注目を集め始めていました。これに当社の社長が目を留め、業務プロセス改革の一環として導入の検討を命じたのがきっかけです。

−具体的にはどのような手順で導入を進めたのでしょうか。

RPA導入当初のワーキンググループは毎週1回開催され、ミーティングののち、シナリオの作り方を学びながら、実際に作成していった。メンバーが増えた現在も、週1回、ロボット作成にかかわる担当者が集まり活動している。

櫻井:弊社ではパソコンを使う作業の実務担当者の多くが女性で、作業内容を一番熟知しているのもそうした女性たちでした。そこで2018年に営業、人事、経理、調達、エンジニアリングの各部門から6名の実務担当者の女性が集められ、ワーキンググループが始動しました。「ロボガール」と呼ばれるこの女性たちが、「単純作業、繰り返し作業、煩雑な定型作業を削減し、社員が生き生きと働いてモチベーションを高める環境を作り、より高付加価値のある業務を行うためにスキルアップする時間を生み出そう」というスローガンのもと、IT部門のサポートを受けながら、RPA導入の手法やどの業務をRPA化するかといった検討を進めました。

「RPA化ありき」ではなく、業務プロセスの見える化から検討

−こうしたRPAの導入は社内IT部門が担うケースが一般的だと思いますが、なぜ現場主導としたのでしょうか。

永嶋:もちろん弊社でも、社内IT部門に頼む、もしくは社外のコンサルタントに「こことここをRPA化してほしい」と依頼するなどの方法をとれば、導入は早いし簡単だったでしょう。でもそれでは現場にRPAのノウハウが身につかないと考えました。さらに自身がRPAについての知識や技術を習得すれば、もっと深いレベルでの業務改革に役立てたり、社内のRPA未導入の部署にも横展開してさらなる効率化が図れるという意図もありました。

櫻井:実務担当者がRPAを使いこなす技術を身につければ、新たな女性活躍の機会を生むことにもつながると考えました。実際にそうした結果に結びついていると思います。

−RPA化する業務はどのように選びましたか。

櫻井:「RPAありき」ではなく、まず各部署で担当する事務処理作業全般に対し「不便、不足、不十分」など「不」のつくものをリストアップしました。こうして出てきた60件ほどの業務のプロセスをワーキンググループ内で説明したり、ときには実際に担当者が実演したりして、共有しました。その次に、このうちどれがRPA化することで「不の解決」につながるのかを検討しました。RPA化以外の方法で課題解決できる業務、手順を変更すれば別のシステムで処理できる業務、そもそも不要ではないかと判断した業務などを除いたものを、RPA化に取り組む対象としました(図1参照)。

速度と正確性が必要な作業、目が離せない作業をRPA化し負担を軽減

−具体的にはどのような作業がRPA化され、どのような効果が得られたのでしょうか。

藤森:人事ではシステム化がされていない反復定例的な業務があまり多くないため、RPAの活用できるケースが限定的でしたが、ある部門長から、「定時退業日」としていた曜日の所属内の部下の勤務終了時刻を翌朝に報告してほしいという依頼がありました。RPA化以前は二つの業務システムから手動でデータを抽出して結合し、表にしてメール送信するという作業を行っていましたが、朝の慌ただしい時間にまとめることがプレッシャーで、またちょっとした転記ミスも起こりがちでした。これをRPA化することで、正確なデータを毎週定刻に作成し、届けることができるようになりました。

鵜飼:お客さまのプラント設備の操業データを遠隔収集し、データ解析を行う業務が昨年よりスタートしました。そのための事前処理とデータ解析プログラムの実行をR P Aで行っています。2 4時間3 6 5日分のデータの事前処理は人の手による作業ではハードルが高かったでしょう。また、解析プログラムの結果を確認するためにパソコンのモニター画面をずっと監視することからも解放されました。

現場主導のRPA導入により「RPA化するための手順」という視点を共有

−RPAを現場主導で行ったことで、ほかにはどのようなメリットがありましたか。

櫻井:自身が担当する業務であることから、「負荷が大きいのでぜひRPA化したい」「ここは手作業でも問題ない」といった判断が的確にできたことです。またRPAについての知識が深まったことで、新たに導入する業務については、その流れを組み立てるときに「こういう手順にすればRPAでできる」という視点を持てるようになりました。

永嶋:IT部門に頼むとしたら、内容により「これ頼んでもいいのだろうか」という迷いもあったでしょう。しかし自身が行うことで、簡単なもの、単純な作業でもRPAに落とし込むことができるようになりました。またRPA導入に向けワーキングループを作ったことで、他の部署の業務内容を知ったり、効率化のノウハウを互いに情報交換できたりと、副次的な効果も生まれました。

−今後の展望をお聞かせください。

櫻井:2018年度のRPA導入後、2020年度までに累計3,640時間が節約できました(図2参照)。RPAが業務効率化に大きく貢献したといえます。一方、RPAの導入で単純作業から解放され、社員のストレスも減少していると考えられますが、この時間数だけではその効果が表に出てきていません。また時間の削減を訴えるだけでは、まだRPAの恩恵にあずかっていない社員にその有用性を理解してもらうことは困難だと思っています。RPA導入時から社内ポータルサイトに「鐵子の部屋」(下画面写真)というページを設け、社内への周知を図っていますが、今年度はより積極的に「業務効率化ができる」「より生産性の高い仕事に自分の時間を振り向けることができる」といったRPA導入のメリットを、社内全体に広報していきたいと思っています。

  • 「鐵子の部屋」トップ画面

  • 「鐵子メール」

RPA導入時に作られたキャラクターが「鐵子」で、同社ではRPAを使った業務処理を「鐵子に仕事をお願いする」と表現する。鐵子は独自のメールアドレスが与えられ、業務終了を各依頼者にメールで報告する機能も持つ。また社内ポータルサイトにある「鐵子の部屋」では、どのようなRPAが用意されているか、またその動作内容を示す動画が閲覧できる。

会社名 スチールプランテック株式会社
創業 2001年(平成13年)4月1日
本社所在地 神奈川県横浜市港北区新横浜2-6-23 金子第2ビル4-9F
代表取締役社長 灘 信之
資本金 19億9,500万円
事業内容 国内・海外向け製鉄機械、非鉄金属製造機械、コークス製造機械及びこれらに関連する設備の設計、製造、据付、販売ならびにアフターサービス
URL https://steelplantech.com/ja/
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