企業ICT導入事例
-軽井沢リゾートテレワーク協会-自然に囲まれ働く「リゾートテレワーク」のメリットとは
記事ID:D10009
コロナ禍により、特に大企業での採用が進んだテレワーク。そのテレワークをあえて自宅ではなく、都会から離れたリゾート地で行う「ワーケーション」「リゾートテレワーク」が、現在注目を集めています。東京から北陸新幹線で約1時間のリゾート地でのテレワークを推進する「軽井沢リゾートテレワーク協会」に話をうかがいました。
─貴協会について、簡単にご紹介ください。
軽井沢リゾートテレワーク協会
会長
土屋 芳春氏
軽井沢リゾートテレワーク協会は、2018年7月、国の「テレワーク・デイズ」に合わせ、軽井沢観光協会、軽井沢町商工会などが中心となって設立した団体です。現在、主に民間施設24ヵ所のテレワークスペースの活用などを通じ、軽井沢の“観光まちづくり”への寄与と“新価値創造”を目指しています。(土屋氏)
─軽井沢はテレワークという視点で、どのような特徴を持つエリアなのでしょう。
軽井沢リゾートテレワーク協会
副会長 理事
鈴木 幹一氏
軽井沢町は年間800万人以上が訪れる観光地として有名ですが、首都圏から新幹線を使い、わずかな時間でアクセスできることから、町外に自宅を持ちながら別荘で生活する「2拠点生活者」も少なくありません。つまりそうした背景から“滞在型の生活”に求められる商業施設や飲食店などのインフラもきちんと整っているのです。そのため軽井沢で企業研修を行う企業は多く、2018年に軽井沢アイスパークで企業研修を行った企業は234社(前年167社)、5,858人(前年4,177人)と増えています。そしてコロナ禍の昨今、軽井沢はテレワークの拠点としてさらに注目を集めています。(鈴木氏)
高い標高と冷涼な空気が、"創造的な労働"に大きく貢献
─軽井沢をはじめ、リゾートでのテレワークには、どのようなメリットがありますか。
軽井沢リゾートテレワーク協会
事務局長
工藤 朝美氏
軽井沢にいらっしゃってお仕事する方からは、都会での仕事では味わえない「どきどき感」「わくわく感」があると聞きます。その理由は、首都圏から標高約1,000mの軽井沢への移動は、冷涼な空気がもたらす「気候効果」や、標高差による「転地効果」につながり、脳の働きを活性化するためだと考えています。空気の良い軽井沢での仕事には、私自身も気分の高揚を感じます。(工藤氏)
時間や交通費を使いリゾートテレワークをして、どういうメリットがあるのだろうと感じる方もいらっしゃるでしょう。ただ実際に、東京で時間をかけて通勤し会議室で意見を交わすより、軽井沢で働くほうが、いいアイデアがわくんです。チームで働いても、やはり笑顔でコミュニケーションできて、会話が弾みます。そうした利点に着目する企業も増えてきており、例えばNTTコミュニケーションズも、ワーケーション体験トライアルとして軽井沢の駅前に拠点を設けています。(鈴木氏)
仕事に追われ制約のある都会ではアポの時間は限られますが、大自然に囲まれ時間の制限が除かれたリゾートでは、雑談からもさまざまなアイデアが広がります。さらに、スポーツや自然散策、芸術などのさまざまなアクティビティと組み合わせることにより人生の付加価値が高まるばかりでなく、チームビルディングに利用することで連帯感や達成感が高まります。(土屋氏)
テレワーカー同士の出会いが新たなビジネスの創出に
─リゾートでのテレワークを推進する自治体にアドバイスがあれば教えてください。
テレワークやワーケーションはブームになりつつあり、リゾートや各地で取り組みが始まっています。しかし、「テレワークに使える施設を作る」「そうした施設を宣伝する」といった“ハコモノ”中心の進め方で働く人だけを集めても、そこに生活や質の向上がなければ敬遠されます。地域DMO※が場所により頓挫したように、地域によっては一過性のものになってしまう可能性があると思っています。軽井沢では民間企業による参入が後を絶ちませんが、協会を立ち上げたことにより個々施設と連携し意識や質の向上を図るとともに、テレワークに適する地域であることのブランディングを進めています。さらに、軽井沢は「屋根のない病院」と
われたウェルネス気候が創造力や心身の安定に寄与してきたことから、別荘地やコミュニティ文化の成立にも貢献していますが、このように地域には個々の潜在力や物語性がありますので、地域全体のビジョンづくりが必要と考えます。(土屋氏)
また働く人同士が交流できるような仕掛けが必要です。例えば都会では成立しなかったビジネスマッチングにより、新たな価値が生まれ、それが新規事業として単なるテレワークを超えた成功につながることにもなるでしょう。(鈴木氏)
─今後の展望について教えてください。
協会も設立から3年目を迎え、もう「これから新たに何かをする」「テレワークの普及を推進する」という役割は一段落していると考えています。将来に向けては、より働きやすい環境の整備や、人々の連携を促していくことが重要でしょう。そうした活動を進めることで、さらに多くのテレワーカーが軽井沢に集まり、この町のリゾートテレワークを大きく発展させていくことになると考えています。(工藤氏)
昨年、幼稚園から中学校までの私立学校も設立され、移住者が増加しています。さまざまなライフスタイルを選択できる比較的余裕を持つ世代が多いのですが、このことからもさらに町としてのポテンシャルが上がりました。今後はビジネスや生き方改革に資するこの場所にインテリや学術・研究機関が集積し、いわばナレッジハブとしてさらに発展できるよう、活動を続けていきたいと思います。(土屋氏)
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「HANALE KARUIZAWA」2Fに設置されたテレビスクリーン
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軽井沢アイスパークチームビルディングセミナーの一環であるカーリングワーケーションの参加者
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電話会議の様子
Short Report 施設担当者のコメント
テレワークを視野に入れ開設、充実した業務環境を提供
「いこいヴィラ」は、当初からワーケーションやコワーキングを想定して開業した宿泊施設です。一般のホテルや旅館では“宿泊”がメインであり、スペースや設備において「滞在して仕事する」というお客さまのニーズに必ずしも応えられていない状況です。当施設では、2Fを宿泊エリアに、1Fはコワーキングや打ち合わせに使えるスペースにあて、ご家族の方がご一緒するワーケーションであっても、仕事に集中できる環境を提供しています。さらに余裕あるネットワーク環境も用意し、回線が遅いのではという不安も払拭しています。テレワーク拠点はそれぞれが違った特徴を持っています。満足できるテレワークの実現のためには、「そこで何ができるか」を十分に吟味して選定することが大切ではないでしょうか。(専務取締役 本間 継一氏)
軽井沢駅至近の予約制ワークスペース「HANALE KARUIZAWA」は、日中もしくは夜間の貸し切りでのスペース提供を行っています。東京から1時間のリゾート地での会議やイベントが、オン/オフの切り替えによる新たな発想や活発な意見交換につながるというご感想をいただいています。(マネージャー 大河原 健氏)
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「いこいヴィラ」の内観
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「HANALE KARUIZAWA」外観
※ 地域DMO(Destination Management Organization):観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域づくりを行う法人のこと。
軽井沢リゾートテレワーク協会は、軽井沢観光協会、町商工会、軽井沢旅館組合などで構成される民間主体の団体。軽井沢の標高約1,000メートルの気候、自然、さまざまな人々が集うコミュニティといった魅力をアピールし、企業・団体に軽井沢でのテレワークを促し、働き方改革や地域の活性化を目的として活動している。
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