企業ICT導入事例

-有限会社住友-
従業員によるパソコンの操作をAIが分析 業務改革に必要なポイントを可視化

会社の業務においては、日々、従業員により、多くのパソコン操作が行われています。その操作の可視化を通じ、改善すべき課題を浮き彫りにするのが「プロセスマイニングツール」です。有限会社住友は、このツールを使った業務改革に乗り出しました。

【導入の狙い】 従業員のパソコン操作を分析して作業手順の巧拙、ムダを可視化し、解決すべき問題を把握する。
【導入の効果】 一人ひとりの作業スピード、在庫の可視化が実現。今後の業務改革の礎に。

人手不足が生産に影響 新規顧客への対応にも影を

▲代表取締役 住友 壽氏

有限会社住友は、包装紙やフィルム、プラスチック容器など、食品のパッケージを専門に手がけるメーカーです。大阪市に本社を置き、取引先は全国に広がっています。

「主な取引先は食品関連の問屋さんです。かつてはオーダー品を中心としていた時期もありましたが、業務量の平準化が難しかったため、現在は基本的にこちらでご用意させていただいた規格品から、お客さまにお選びいただく形をとっています。ただ規格品と言っても、サイズ違い、色違いを含め数千種類もあり、生産及び在庫管理にはかなりの手間がかかっています」

同社は近年、恒常的に続く人手不足に悩んでいました。

「新規の取引先から発注の意向をいただくことも多いのですが、問題は現場の人手が足りず、そのすべてに余力を持って対応するのが厳しいことでした。またかつては販路開拓のために見本市にも出展していましたが、こちらも人手不足、そして生産余力の問題から中断しています」

プロセスマイニングツールの導入で業務の見える化を決断

同社では継続的に求人も出していましたが、その効果ははかばかしいものではありませんでした。

「人材がなかなか集まらず苦労しています。昔であれば残業を増やし、生産量を上げるという手法がありましたが、働き方改革が求められる現代はもうそんな時代ではありません。弊社ではコストの安いタイに現地法人を置き生産していますが、当面の対策としてタイの現地法人で経験を積んだスタッフ5名を日本に呼び、戦力となってもらっています」

現状の人手でさらに多くの仕事をこなすには、作業の手順や内容、仕事の導線などの見直しによる業務の効率化が必要です。しかし、そのためには“今ある業務内容”の見える化が求められます。

「特に対策が必要だと考えたのは、作業者のパソコン操作の手順です。慣れている人、慣れていない人の差は、小さくはありません。また生産工程にトラブルが発生した時のリカバリーが早い人もいれば、時間がかかる人もいます。そうした課題をどうすべきか考えていた時、NTT西日本から『業務改革に役立つ新しいソリューションがあるので、試してみませんか』というお声がけがありました」

従業員の作業手順だけでなく在庫の適正化にもヒントが

NTT西日本から提案を受けた「おまかせAI⦆働き方みえ~る」は、「プロセスマイニング」と呼ばれるツールです。これにより、社内のパソコンにインストールした専用ソフトウェアが従業員の操作ログを取得してAIが分析、同一の作業をこなす時間に個人差が見られる、人間による同じ作業の繰り返しが発生しているといった現象を、ビジュアルなグラフなどで“見える化”します。こうしたデータを基に、個人差がある場合は遅い人の手順を確認し、必要に応じて研修を実施したり、繰り返しの作業についてはRPA※(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を図るなど、具体的な課題解決を可能とする仕組みです。

「導入したのは半年ほど前です。わずかな期間ですが、AIのレポートからいろいろな課題が見えてきました。やはり人により業務の処理時間に差があることが数字に表れました。つまり、作業の早い人は、それだけ合理的な手順で物事を進めているということです。また生産設備についても、実は稼働が極端に少ない機械があるなど、これまで見えなかったところが明らかになりました。稼働が多い、少ないによって工場内の機械のレイアウトを最適化すれば、作業員の移動量を減らしつつ、生産効率を高めることができるはずです」

生産済み製品の可視化により“データ上の棚卸し”が可能に

さらに、在庫となっている生産済みの製品についても、可視化が図られたといいます。

「どの製品をどのくらい作るかという判断は、これまで営業スタッフの感覚に頼る部分が多く、最終的には営業と現場がコミュニケーションを取って数量を決めていました。しかし今回のプロセスマイニングツールの導入で、ある意味“データ上の棚卸し”が可能となり、長期間動いていない在庫があることも分かりました。過剰生産を防ぎ、在庫量を適切にコントロールできれば、人を増やさずともより多くのお客さまのご要望に応じることができるはずです。今後は感覚だけに頼らず、データに裏づけられた生産計画を立案したいと思っています」

  • ▲本社外観

  • ▲プロセスマイニングツールの分析結果が記載されたレポート

マニュアルの整備、RPAの導入も視野に入れつつ課題に対処

同社はこうして得られたデータを活用し、人を増やさず、また長時間労働を避けつつ、業績の拡大を目指しています。

「作業が早い人の手順をマニュアル化して作業者で共有すれば、短い時間でも生産性を高めることができます。また繰り返しの作業にRPAを導入することで、人的リソースをほかの作業に振り向けることも可能になるでしょう」

住友氏は、業務改革の最終的なゴールは、その成果の還元にあると言います。

「会社が潤って、その利益を従業員の皆さんと分かち合うことが理想です。そして従業員の負担に頼ることなく売上を伸ばしていくには、I C Tによる業務の効率化が必要だと考えています。またそうした効率化を目指すという考えが従業員に浸透すれば、一人ひとりが『現場をどうすればより効率化できるか』と考えるようになるでしょう。弊社のような中小企業がさらに伸びていくには、そうした現場の意識で会社を強くしていくことが不可欠であると思っています。現在はウィークポイントが見えてきたところですが、その分析をもとにRPAやIoTなどさらなるICTの導入も視野に入れ、業務改革に役立てていきたいと思います」

※ RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):パソコンで動作するソフトウェアロボットを用い、コピー&ペーストなどの単純作業から人の手を解放する仕組み。

企業名 有限会社住友
創立 1984年4月3日
本社所在地 大阪府大阪市平野区加美北3-2-24
代表取締役 住友 壽
資本金 300万円
事業内容 食品包装資材等の加工製品の製造販売、アルミ箔・紙・フィルム加工販売
URL http://www.u-sumitomo.co.jp/
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