企業ICT導入事例
-共栄産業株式会社-ICTを活用し、時計修理の生産性を向上
【導入の狙い】時計修理部門の人件費による赤字改善
【導入の効果】ICTによる工程管理で無駄をなくし、売上増を実現
▲代表取締役社長・小林 正博氏
一見、“アナログ的”に思われがちな「時計修理」の世界でも、ICTによる業務改革を進めている会社があります。東京で、超高級時計の修理も手がける共栄産業株式会社に、ICT導入の成果をうかがいました。
▲時計修理部
「弊社は1968年に創業し、当初は輸入腕時計への時計用バッテリー販売を主な業務としていました。時計修理が本業となったのは、大手時計メーカーで“マイスター”と呼ばれた人物を取締役として迎えてからです。彼が時計修理の世界で非常に著名であったため、師事したい、ぜひ彼の下で働きたいという時計職人が弊社の門を叩くようになり、この分野の事業が大きく拡大したのです」(代表取締役社長・小林 正博氏)
不十分な業務管理が原因で赤字部門に
▲取締役 部長・秋田 秀仁氏
しかし時計修理業の船出は順調なものではありませんでした。
「知名度が上がり、高級時計の修理依頼が多く寄せられるようになりましたが、修理部門は人件費がかさみ、月200~400万円の赤字が続いていました。その主な理由は、不十分な業務管理によるものでした」(小林氏)
「修理待ちの時計はラックに積まれ、そこから職人が選ぶというスタイルで、修理のペースも職人によりまちまちでした。また管理にはデータベース管理ソフトを使っていましたが、修理業務全般の状況も、個々の依頼品の状況も、把握が困難でした」(取締役 部長・秋田 秀仁氏)
外部コンサルタントを招聘し、業務改革を推進
小林氏、秋田氏はこうした事態の改善の解決を図るべく、外部のコンサルタントを招聘し、業務改革を進めました。
「自動車メーカーでの生産業務改革の経験もあるコンサルタントをお招きしました。そこから2年間かけての『改善』が始まったのです」(秋田氏)
コンサルタントの指摘は、修理待ち製品の整理や納期ごとのラベルによる色分け、さらに各種工具類の位置を固定化し、修理品が一定数たまってから次の工程の作業スペースに移動させることで、職人の手間を省力化することなど、多岐にわたりました。
「同時に私たちの意識改革も求められました。いままでは修理待ちの在庫が『しばらく仕事がある』という安心感につながっていました。しかし実際に売り上げとなるのは、修理が完了し、納品してからです。そのため、コンサルタントから、在庫の数よりも、修理の数を重視する姿勢を求められました。こうしたコンサルタントの意見により、現場の業務と経営の意識改革が同時に得られたことは、大きな成果でした」(秋田氏)
ICTによる工程管理を導入し、業務をさらに効率化
▲時計職人のみなさん
ICTを活用した工程管理の導入も、このワークフロー見直しを受け、進められることになりました。
「入庫した修理品にバーコードを貼り、それを各工程でチェックする仕組みを作り、社内外のPCで確認できるようにすることで、修理工程を“見える化”しました」(秋田氏)
▲パーツ管理棚
「データ化することで、それまで職人ごとにバラバラだった修理時間の均質化が可能となり、月間の修理対応台数は大きく飛躍しました。また修理を取り次ぐデパートなどからも、PCを使い納期が確認できるようになったことで、顧客満足度の向上にもつながりました」(秋田氏)
▲生産業務改革で改善された道具
この同社のシステムは、業務効率化が大きく評価され、2013年の「経済産業省 IT経営実践認定企業」に認定されています。
「ワークフローをそのままICTに置き換えたのではなく、コンサルタントのアドバイスにより業務の流れを見直した上でICTを導入したことが、この受賞につながったのではないかと考えています」(小林氏)
分業制を採り入れ、さらなる効率化を目指す
▲ICT活用で修理工程の精度アップに貢献
そしていま、同社はさらなる業務改革に踏み切っています。
「段階的な修理作業の分業制を採り入れ、さらに効率化を図っています。また『修理不完全』による再修理を減らすため、検品チームがしっかり動作確認するとともに、再修理となった事例を共有することで、修理工程の精度アップにも取り組んでいます」(秋田氏)
同社には、時計職人を目指す若い人材が着々と集まっているといいます。今後も同社のさらなるICT活用に、注目したいと思います。
会社名 | 共栄産業株式会社 |
---|---|
設立 | 1968年(昭和43年)8月 |
本社 | 東京都豊島区巣鴨1-11-1 巣鴨ダイヤビル |
代表取締役社長 | 小林 正博 |
従業員数 | 150名 |
150名 | 時計の輸入、販売、修理 |
URL | http://www.kyoeico.com |
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