企業ICT導入事例
-徳島県庁-OSSを活用し、システムをフレキシブル化
【導入の狙い】ローコストでのシステム改修
【導入の効果】フレキシブルな運用を実現
▲経営戦略部 情報システム課・山住 健治氏
ICTソリューションは、セキュリティリスクを回避するために、OSやハードウェアの変更などにともない、一定の期間ごとに更新が必要です。しかしそのコストは、決して小さくありません。
徳島県庁も、かつてそうした課題に突き当たり、少ない予算と更新の必要性との板挟みになっていました。
徳島県が、大手ICT企業の元幹部を非常勤のCIO(最高情報責任者)として招聘し、知事を本部長とする「ICT推進本部」の副本部長に抜擢したのは、平成18年でした。
「CIOのもと業務システムを洗い出した結果、部署ごとに必要なシステムを個別に導入したため、県庁全体としてうまく連携していないことが明らかになりました」(経営戦略部 情報システム課・山住 健治氏)
システム改修の予算の壁に直面
山住氏は、CIOのもと、業務システムを最適化すべく策を練ります。しかしその前に立ちはだかったのは、予算の壁でした。
「想定される費用は億単位でしたが、リーマンショックに見舞われ、予算は限られていました。しかし、今後の業務合理化を考える上では、システム改修は不可避だったのです」(山住氏)
OSSに見出した活路
▲自治体OSSキットのパンフレット
このとき、CIOが注目したのが、長崎県がOSS(オープンソース・ソフトウェア:ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを無償で公開し、誰でも改良や再配布が行えるソフトウェア)で構築し、他の自治体に無償提供していた総務系のシステムでした。
「CIOの指導のもと、徳島県は長崎県と協定書を結び、総務事務システム、電子決裁システムなどを本県仕様に一部変更し、採用したのです」(山住氏)
ちょうどその頃、徳島県に新たなICT導入の必然性が生まれます。それは、県庁のウェブ制作環境の刷新です。
「OSSでの利用について調査したところ、島根県がRubyという言語を使って開発したCMS(コンテンツ・マネジメント・システム:ウェブサイトのコンテンツを管理・編集・更新できるシステム)を公開していました。これを参考に、徳島県でもCMSを内製することに決めました。これが『Joruri(ジョールリ)』シリーズの端緒です。この一連のプロジェクトの追い風になったのは、皮肉にもリーマンショックによる景気後退でした。この危機に対処するため、政府から緊急雇用対策が打ち出され、本県にもその予算が交付されたことで、人を雇用して行うソフトウェア開発が可能となったのです」(山住氏)
▲『Joruri Maps』による同県のハザードマップ
多くのメリットがあるOSS
▲自治体OSSキットのポスター
以降、OSSの利用を加速している徳島県ですが、山住氏は「OSSには、コスト以外にも多くのメリットがある」と語ります。
「OSSはソースコードが公開されているため、仕様変更や改修が容易で、バグの修正が速やかに行われることも特長です。バージョンアップの適用も無償ですし、何よりもシステムに機能追加・改善をする自由が常に我々の手にあるということが最大のメリットです」(山住氏)
こうしてOSSにより開発された徳島県のシステムは、現在「自治体OSSキット」としてパッケージ化し、公開されています。
「CMSやグループウェアなどは、一般の企業でも十分活用可能です。ソフトの更新予算などでお悩みの中小企業の方にも、ぜひお使いいただきたいですね」(山住氏)
今後もOSSを県民サービス向上に役立てたい
今後徳島県では、OSSをモバイル環境での職員のセキュアな利用や、災害時情報共有システムに展開していく予定とのことです。
「OSSで構築した『徳島県総合地図提供システム』を、統合型ウェブGIS(地理情報システム)『Joruri Maps 』として5月に公開しました。今後もOSSの利点を生かし、県民サービス向上に役立てていきたいと思います」(山住氏)
ローコストでの導入が可能で、機能追加や改修が容易なOSSは、自治体のコスト削減の大きな切り札となる可能性を秘めています。そしてその特性は、企業活動においても非常に魅力的ではないでしょうか。
組織名 | 徳島県庁 |
---|---|
所在地 | 徳島県徳島市万代町1-1 |
知事 | 飯泉 嘉門 |
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