ICTソリューション紹介

-SOMPOリスクマネジメント株式会社-
熱中症対策義務化時代に広がる ICTツール活用の最前線

記事ID:D10065

年々深刻化する熱中症に対応するため、厚生労働省は2025年6月に「改正労働安全衛生規則」を施行し、企業の熱中症対策を法的に義務化しました。また、熱中症の早期発見、未然防止を目的としたICTツールの活用も広がっています。そこで今回は、ICTツールの効果的な活用法や導入に際しての注意点などを、企業のリスク管理を多角的に支援する、SOMPOリスクマネジメント株式会社の奥村 直幸氏にうかがいました。

熱中症対策の法的義務化が 企業に求めるもの

マーケティング戦略部
奥村 直幸氏

 熱中症リスクの深刻度が年々増加しています。気象庁の「2025年夏(6月~8月)の天候」では、平均気温が平年比プラス2.36℃と、観測史上最大の偏差を記録しました。また、総務省消防庁の「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、救急搬送者の累計は10万510人で、統計開始以来最多となっています。

「熱中症対策に関する企業からの相談も、前年の2倍ペースで増えています。今年は、5月から多くの地域で真夏日や猛暑日を記録するなど、熱中症シーズンの前倒し、長期化傾向が顕著です」(奥村氏)

 こうした状況を受け、厚生労働省は昨年6月に「改正労働安全衛生規則」を施行し、熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際、企業が取り組むべきさまざまな法的義務を定めました。目的は、熱中症の早期発見と重篤化防止です。
 具体的には、熱中症の疑いがある従業員を見つけた際の連絡網の整備や担当者を明確化する「報告体制の整備」、涼しい場所への移動や身体の冷却などの対応フローを定めた「対応手順の作成」、朝礼やマニュアルなどで手順を従業員に伝える「関係者への周知」が明文化され、違反した際の罰則規定も設けられています。

 「熱中症が正式に労働災害として認められた点が、最大の改正ポイントです。初期症状の見逃しや初動の遅れを防ぐために、熱中症の兆候を速やかに見極め、適切な処置を早急に行える体制づくりと従業員教育が企業に求められています」(奥村氏)

 では、労働安全衛生規則で義務化の対象となる「熱中症を生ずるおそれ」とは、どのような状況を指すのでしょうか。

 「『WBGT128以上』『気温31℃以上』の環境で、連続1時間以上、または1日4時間超の作業が見込まれる場合、熱中症リスクが高い状態とみなされます。こうした条件に該当する作業を行う企業は、速やかな対応が求められます。熱中症は、建設業など屋外での作業が伴う業界に多いと考えがちですが、熱源が身体のそばにある厨房作業や、空調が効きにくい商業施設のバックヤード業務など、屋内でも多く発症しています。今や、あらゆる業界が熱中症リスクと隣り合わせなのです」(奥村氏)

本人が気づかない危険を早期発見し迅速に対応

 近年は、ICT機器を活用した熱中症対策が活発化しています。熱への耐性は個人差があるため、従来のように人の経験や勘に依存した一律的な管理体制では、熱中症を防ぎきれません。そこで体調データや気象情報を基に、個人に最適化した判断を行える、ICTならではの早期発見や予防効果が評価されているのです。

 「個人の体力や体質は異なるため、各自のバイタル情報※2を把握できていなければ、本質的な対策にはなりません。ICT機器の最大の利点は、早期発見能力と情報の可視化にあります。本人に自覚症状がない段階から体調の異変が検知できるため、熱中症の早期発見や未然防止に効果的です。また、得られたデータはクラウド上で共有されるため、管理者が遠隔地にいても現場状況をリアルタイムで把握でき、従業員への迅速な指示出しにもつながります」(奥村氏)

 では現在、どのようなICTツールが活用されているのでしょうか。奥村氏は、大きく「環境予測型」と「ウェアラブル型」に分類できると説明します。

 「環境予測型とは、作業現場のWBGT値や温度・湿度をリアルタイムに計測するツールで、労働安全衛生規則が定める『WBGT28以上』『気温31℃以上』の確認に欠かせません。暑熱環境下の現場だけでなく、日中の温度変化が激しい場所や熱がこもりやすい職場などでも有効です。また、蓄積されたデータや気象予報を活用し、作業困難日を予測して工程を事前調整するなど、さまざまな用途で活用されています」(奥村氏)

 一方、ウェアラブル型は、作業者個人の体調を測定する機器です。リストバンド型やスマートウォッチなどの腕時計型、ヘルメット装着型、衣服型などがあり、多くが脈拍数をベースにバイタル情報を収集しています。

脈拍数や現在地などを可視化した、『みまもりふくろう』のダッシュボード機能

 「主な機能を、弊社のリストバンド型デバイス『みまもりふくろう』(画像参照)を例に説明すると、4秒ごとに脈拍数を計測し、熱ストレスリスクを算出します。異常値を検知した場合は2分後にアラートを発出し、本人や管理者などに危険を通知します。本人の脈拍数、熱ストレス、作業強度などのアラート基準値は、個々に自動的に設定されます。また、GPSを搭載しているので、単独作業中に体調不良が生じた場合でも位置情報を迅速に把握でき、早期救助につながります」(奥村氏)

 さらに、ウェアラブル型ツールは取得したデータを可視化するダッシュボード機能、救急機関への緊急通報機能や転倒検知機能、メッセージ送受信機能など、多彩な機能を備えた製品が登場しています。通信方式もスマホ連携型、ルーター経由型、SIM接続型など、さまざまです。そのため、導入の際には現場の規模や電波環境、単独作業の有無などを踏まえ、自社の業務環境に適した製品を選択することが重要です。

ICTを活用した熱中症対策で 重要になる運用力

 ICTツールは、多くの企業の熱中症対策に貢献しています。しかしICTだけに頼った対策では、十分な効果は期待できません。奥村氏は、労働安全衛生規則で義務化された、緊急時の対応手順や報告体制などと連携してこそ、ICTは能力を発揮すると指摘します。

 「ICTの導入自体が、義務化されているわけではありません。『報告体制の整備』『対応手順の作成』『関係者への周知』を適切に実践し、十分な効果が得られるのであれば、必ずしもICTに頼る必要はないのです。しかし実際には、WBGT値の常時確認や従業員の体調把握、危険兆候の早期発見などを人力だけで行うのは困難です。それだけに、ICTと運用ルールの連携こそ、熱中症対策最大のポイントだと言えるでしょう」(奥村氏)

 さらに、こうした連携がうまく機能することで、副次的な効果も生まれていると言います。

「自分の体調を常に見守ってもらえている安心感から、作業に集中しやすくなり、業務効率がアップした。アラート発生時に管理者から連絡が入るため、従業員に『会社が気にかけてくれている』という意識が芽生え、会社と従業員の信頼関係が向上した。また、現場の技術者と管理者のコミュニケーションが活発になり、チームワーク向上につながったなどの事例が報告されています」(奥村氏)

 熱中症対策は、もはや単なる労災対策ではありません。従業員の安全確保はもちろん、企業の信用や生産性にも直結する重要な経営課題となっています。人手不足などに悩む中小企業こそ、ICTの導入を積極的に検討されてはいかがでしょうか。

※1 WBGT
Wet Bulb Globe Temperatureの略。気温、湿度、輻射熱の3要素を基に、熱中症の危険度を総合的に評価する指標のこと。
※2 バイタル情報
バイタルは「生命の維持に必要な」という意味。主に体温、呼吸、脈拍、血圧の数値の情報を指す。
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会社名 SOMPOリスクマネジメント株式会社
設立 1997年(平成9年)11月19日
所在地 東京都新宿区西新宿6-8-1 住友不動産新宿オークタワー28F
代表者 中村 隆久
資本金 3,000万円
事業内容 経営コンサルティング事業、リスクエンジニアリング事業、データドリブン推進事業、サイバーセキュリティ事業
URL https://www.sompo-rc.co.jp/

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