ICTソリューション紹介

-株式会社NTTPCコミュニケーションズ-
真夏の猛暑から従業員を守るICTを活用した熱中症対策

記事ID:D10045

熱中症への対策が、企業にとって喫緊の課題となっています。特に建設業や製造業など、炎天下や高温多湿な環境での作業が発生する業界では、ICTやIoTを導入して社員の熱中症の危機を未然に防ぐ試みが必要不可欠になっています。それらの熱中症対策システムの特徴や導入にあたっての注意点などを、株式会社NTTPCコミュニケーションズでIoTを活用したサービスを企画開発している赤池宏一氏にうかがいました。

熱中症への取り組みが企業の重要なテーマに

 熱中症の被害が年々増加しています。人口動態統計より環境省が作成した「熱中症による死亡者の状況 5年移動平均」によると、死亡者数は平成29年~令和3年の平均値で1,134名にまで達しています。この数字は約10年前に比べて約2倍以上、約20年前に比べて約5倍以上の伸びであり、右肩上がりの状況です(図参照)。

図:熱中症による死亡者の状況 5年移動平均(全国)出典:人口動態統計より環境省が作成

 また、厚生労働省がまとめた「令和5年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」における「熱中症による死傷者数の業種別の状況」では、建設業、製造業、運送業だけで全体の50%を超えており、特に炎天下や高温多湿の環境下で作業が発生する業種の危険性を示唆しています。それらの業種を中心に、高温多湿環境下での作業がある企業にとって、熱中症対策はもはや避けては通れない企業課題になっています。

サービスクリエーション本部
担当課長 赤池 宏一氏

 「熱中症増加の最大の要因が、地球温暖化にあるのは間違いありません。企業はこれまでも電動ファン付きの空調服の支給、扇風機やドライミストの導入、給水所を設置し適度な休憩を推奨するなど、さまざまな対策を講じてきました。しかし、数字の変遷を見る限り満足のいく効果が得られているとは言えません。その要因の一つとして、近年における労働者の高齢化が指摘されています。厚生労働省の発表では、2019~2023年に発生した死傷災害者数の約5割を、50歳代以上が占めていると報告されています」(赤池氏)

 人間は高齢になるほど、生活習慣病など持病を持つケースが増える上に、体内の水分が減少し、暑さを感じにくくなることが知られており、若年層に比べて熱中症への耐性が低くなります。また、ベテランほど自分の経験に過信を抱き、周囲に助けを求めることへの抵抗感が強い傾向があるため、発症を未然に防げないケースも多いと指摘されています。

 「2024年問題など、労働時間管理の適正化などに目が向けられている昨今ですが、2025年3月31日には『高年齢者雇用安定法』の継続雇用制度における経過措置が終了します。同年4月1日からは、企業には希望者全員を65歳まで継続雇用する責任が生まれ、職場の高齢化はますます進むと推測されます。そのため現場監督者や安全管理者が労働者全員の状況をICTやIoTを活用して見守り、現場全体で熱中症を未然に防ぐシステムの導入を検討する企業が増えているのです」(赤池氏)

通信機能を有した端末なら常時バイタル管理が可能

 ICTを活用して熱中症の危険性を検知するシステムには、現在大きく三つの技術が使われており、複合化されたサービスも活用されています。

 「まず、労働現場の気温、湿度や日射状況などの環境情報を計測分析し、暑さ指数(WBGT値)として熱中症の危険度を表示するタイプがあります。このタイプは、システムが検出した暑さ指数が設定値を超えると、パトランプが点灯し現場に熱中症の危険を知らせます。工場など、常設設備で働く作業者が瞬時に情報を共有できるため、製造業などとの相性が良いとされています」(赤池氏)

 残る二つは作業者が身体に装着して使用するデバイス「ウェアラブル端末」で、リストバンドやヘルメット、ウェアタイプなどを作業者が身に着けて利用します。そして、深部体温(身体の中心部の体温)を測定し熱中症の恐れを検知するタイプと、脈拍を計測し熱中症だけでなくさまざまな体調の不調を検知するタイプに分類されます。

写真:同社のサービス「みまもりがじゅ丸」で活用されているリストバンド型活動量計「mSafety™」

 「弊社のサービス『みまもりがじゅ丸』(写真参照)は、従業員の脈拍や位置情報を専用のウェアラブル端末で取得し、体調の変化をリアルタイムに伝えています。端末をスマホや中継器と連結し、全員のデータを常時クラウドにアップすることで健康状況の一括管理を可能にしています。作業者の体調変化は常に管理画面に一覧表示され、熱中症など体調不良の恐れなどを察知すると、すぐにアラートで通知される仕組みです。管理画面では、一画面で最大8ユーザーの脈拍状況が同時に確認できるうえ、常に危険な状況の人から順番に並べて表示されるなど、視認性を工夫しています。またGPS機能を活用すれば作業者の位置が把握できるため、建設業や運輸業など作業範囲が広範囲に移動する職種でも、リアルタイムで作業者の位置確認や実際に異常が発生した場所の特定が可能です」(赤池氏)

 そして通信機能をはじめ、最近ウェアラブル端末の高機能化が顕著だと赤池氏は話します。

 「平常時心拍数などの設定が個々に可能なタイプも存在します。バイタル情報は人によって異なり、同じ環境下にいても受けるストレスの量などは変わるため、より細かな安全・健康対策を可能にしています。またGPS機能を搭載したタイプは、最近、端末自体に中継機能を搭載したタイプが登場しています。これまで必要とされたスマホや専門の中継器が不要となったため、簡便性がさらに向上しました」(赤池氏)

無理のない導入と活用がICT戦略を成功に導く

 熱中症対策システムの導入は、健康経営の観点からも社員に歓迎され、企業力の向上に貢献すると考えられます。しかし、だからこそICTの導入には慎重さが必要だと赤池氏は語ります。

 「ICTの導入には、運用をスムーズに行える現場の能力が必要です。特に高齢化が進む職場では、ICTに馴染みのない従業員が多い場合も考えられます。これまでもシステムの使い方を習得するのに時間がかかり過ぎ、社内の協力体制が確立できず、効果が発揮できない事例がありました。また、経営陣が最初から多くの機能を盛り込もうとすると、稼働までに多くの時間を要するだけでなく、現場スタッフに運用管理の負荷がかかり過ぎてしまいます。まずは、会社の状況に合わせて検討し、現実的に始められるサービスを選択することが有用です」(赤池氏)

 ICTを活用した従業員の健康ケアは、多くの企業に注目されています。ますます深刻さを増す地球温暖化を前に、建設業や製造業、運輸業だけでなく、農林業や警備業、造園業など、それぞれの業種に適したICTによる熱中症対策をはじめとする安全・健康対策は、より多くの業種で必要不可欠な存在になっています。

「mSafety™」は、ソニーネットワークコミュニケー ションズ株式会社の登録商標または商標です。

※ 暑さ指数(WBGT値)
WBGTはWetBulbGlobeTemperatureの略。熱中症を予防することを目的としてアメリカで提案された指標。気温、湿度、日射・輻射熱の3要素を取り入れ、「蒸し暑さ」を一つの単位で総合的に表している。
会社名 株式会社NTTPCコミュニケーションズ
設立 1985年(昭和60年)9月4日
本社所在地 東京都港区西新橋2-14-1
代表取締役社長 工藤 潤一
資本金 40億円
事業内容 インターネットやVPNなど各種ネットワーク環境の構築と、それに付随するネットワーク機器の提供。データセンターやホスティングに関わる各種サービス。セキュリティ機器、通信機器などの製品販売及び製品保守サービスなど。
URL https://www.nttpc.co.jp/
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