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-株式会社ストロボ-
自動運転の「レベル4」解禁によるクルマ社会の新たなビジネスの可能性を探る

記事ID:D10033

2023年4月1日より改正道路交通法が施行され、自動運転「レベル4」の公道走行が解禁されました。区域などが限定されるとはいえ「完全自動運転」の車が走行する時代がやってきたことで、この先、私たちのクルマ社会はどのように変化していくのでしょうか。今回はウェブメディア「自動運転LAB.」運営元の株式会社ストロボの代表取締役社長、下山 哲平氏に話をうかがいました。

どこまで実現した?自動運転の現在地

代表取締役社長 下山 哲平氏

 日本の自動運転は運転の主体や自動運転の技術到達度、走行可能エリアなどで分類されており、米自動車技術会(SAE)が作成した基準に準拠した、0~5段階の目標が設定されています。このうちアクセル・ブレーキによる縦方向の運転支援「レベル1」、ハンドルによる横方向の運転支援も加えた部分自動運転「レベル2」、一定条件(緊急時はドライバー対応)での自動運転「レベル3」までが実用化されています。この段階について下山氏は次のように解説します。

 「足の操作から解放されるレベル1は『フットフリー』、手の操作から解放されるレベル2は『ハンズフリー』、運転中の前方確認から解放されるレベル3は『アイズフリー』とも表現されます。大きな違いは、レベル1と2の運転の主体が人(ドライバー)であるのに対し、レベル3の場合は運転の主体が自動運転システムになる点です」(下山氏)

 このレベル3までは、これまでも公道で走らせて安全を確認する実証実験を経て、一部で実用化されています。

 「例えば、2020年11月より茨城県境町にてレベル2で定期運行中の路線バス(写真①参照)があります。このバスは運転席のない車両で、同乗のオペレーターがモニターとコントローラーで補助操作を行っています。また、福井県永平寺町では2021年3月よりほかの車両が乗り入れない遊歩道でレベル3の自動運転バスが定期運行していましたが、2023年5月からは区間をさらに限定して、レベル4の車両の運行が始まっています。さらに2021年、ホンダからレベル3対応の乗用車が世界で初めて販売されました。この車は、渋滞時の高速道路でレベル3自動運転に切り替えることができます」(下山氏)

写真①:茨城県境町で運行中の自動運転バス

完全自動運転の認可で事業化へ大きく前進

 レベル4解禁によりどのように変わるのか、下山氏は次のように話します。

 「レベル3までは、トラブルが生じた際の対処を人が行うことが義務づけられていました。しかし、走行エリアなど条件を限定した公道での『完全自動運転』が可能なレベル4では、この義務がなくなりました。そのため、レベル4の車両ではトラブル発生時は速やかに路肩へ停車し、アラートを発信するなど緊急対応まで自動で行われるようになっています」(下山氏)

 レベル4以降はドライバーの同乗が必要ないため、主に輸送・配送や地方・過疎地での公共交通などのドライバー不足を補うことが期待されます。そこで早速、今年4月にはレベル4自動運転によるトラックの高速道路走行の実証実験が行われるなど、実用化に向けた動きが加速し始めました。また、これまで活用されていなかった新しい技術の導入にも期待が高まっています。

 「例えば、信号とバスが通信ネットワークで結びつき、『手前の信号があと何秒後に赤に変わるので、停止する』『信号があと何秒で青に変わるので、何秒後に発進する』といった判断をする自動運転技術です。この技術の導入には、経路上の信号機を通信ネットワークに対応させる工事など、インフラの整備が必要です。そのためのコスト確保に、自治体や企業の後押しも普及のカギとなるでしょう」(下山氏)

 このほか、日産自動車が自動運転における複雑な事故を回避する技術開発に注力を入れています。同社はレーザー光を照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間から物体までの距離や方向を測る技術を搭載した試作車による緊急回避操作の模様を公開するなど、今後の実用化が期待されます。

レベル4解禁で期待が高まる自動運転が実現する未来

写真②:茨城県つ くば市の自動配送 ロボット。市内に2 台配備され、対象 店舗から配送対象 地域へ注文から20 分~75分で配送し ている(2023年5月 時点)

 自動運転はドライバーが不足する過疎地や地方での実用化が期待され、これまで国土交通省は高齢化が進む中山間地域での生活の足の確保を目指し、秋田県上小阿仁村などで「道の駅を拠点とした自動運転サービス」の実証実験に注力してきました。しかし、ビジネス面では「まずは都市圏での普及が先になる」と下山氏は予想しています。

 「人の少ない地方では、多くの利益は見込めません。そのため、事業者はまず人の多い都市圏での事業展開を考えると思います。例えば、『完全無人タクシー』の導入です。24時間365日いつでもスマホで呼び出せ、指定した場所へ自由に移動できるとなれば、利便性は大いに高まります。このような完全無人タクシーはドライバーの人件費が不要なため、運賃は従来の1 /10程度に下がる可能性があります。そうすると人々が気軽に利用できるようになり、外出や移動の機会も増え、消費活動も活発化して高い経済効果を生むかもしれません。また、車内においても運転から解放された利用者が楽しめるようなコンテンツや車内広告などの需要が高まり、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあります」(下山氏)

 完全無人タクシーと聞いても遠い未来の話と思われるかもしれませんが、下山氏は「中国では2022年8月より武漢と重慶で実用化され、各都市で100台ほど運行されている」と話します。

 このほか、自動運転技術の将来的なビジネス活用について「ロボットによる配送・宅配の実用化が進む可能性がある」と話します。

 「2022年、茨城県つくば市では、車両型の自動配送ロボットによる公道走行・配送サービス(写真②参照)が保安監視員随行で始まりましたが、改正道路交通法により随行者なしに移行の予定です。このような事業も改正道路交通法の施行をきっかけに各地で増えていくかもしれません」(下山氏)

 しかし、これらの本格的な実現には商圏全体をレベル4の範囲にする、つまり「特定の商圏内におけるレベル5(完全自動運転)」まで範囲を拡大することが不可欠ではないでしょうか。

 「そのような極めて広い範囲を対象としたレベル4の達成には、全国のインフラ整備と道路情報をインプットしたソフトウェアの開発が必須です。そのためには全国規模で実証実験を行い、大量のデータ収集や蓄積が必要なため、相当な時間がかかると予想されます。しかし、例えばスマホなど新しい技術が5年程度で一気に『当たり前の世の中』になったことを踏まえると、2030年頃までには完全自動運転が一般的に普及するのではないかと期待しています」(下山氏)

 固定電話から携帯電話、そしてスマホへと進化しアプリビジネスが活性化したように、車も自動運転の進化により、どのようなビジネスチャンスが生まれるか今後が楽しみです。

会社名 株式会社ストロボ
設立 2016年(平成28年)12月
本社所在地 東京都港区麻布十番1-5-10-5F
代表取締役社長 下山 哲平
資本金 1,900万円
事業内容 デジタルマーケティング、新規事業開発支援、ウェブメディア「自動運転LAB.」運営など
URL https://www.strobo-inc.jp/
URL https://jidounten-lab.com/
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