ICTソリューション紹介

-株式会社NTTコノキュー-
企業の課題解決の切り札として期待されるXRの可能性とは

記事ID:D10047

日本企業における人手不足は年々深刻化しており、大きな社会課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、XR(クロスリアリティ)という現実世界と仮想世界を組み合わせて新たな体験を作り出す技術です。今回は、XRを活用したサービスやソリューションを提供している株式会社NTTコノキューの朽木 大祐氏と野秋 浩三氏に、XRのビジネス活用について話をうかがいました。

XR(AR、MR、VR)とは

空間ソリューション 主査 野秋(のあき) 浩三(こうぞう)

 XRは、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR (Mixed Reality: 複合現実)、VR(Virtual Reality: 仮想現実)といった技術の総称です。メタバース事業、デジタルツイン事業、XRデバイス事業を3本柱に事業を展開するNTTコノキューの野秋 浩三氏は、これらの技術について次のように解説します。

 「まず、ARは現実の風景にさまざまな情報を重ねて見せる技術です。スマホやタブレットで見ることができるため気軽に体感でき、ポケモン GOをはじめゲームにも数多く採用されています。VRは目にする映像がすべてバーチャル(仮想)であり、専用のゴーグルを装着して360度すべて仮想の世界に入り込んだような没入感のある体験ができる技術です。MRはARとVRの中間に位置するもので、頭に装着するディスプレイなどを通して現実空間に仮想の情報や物体を融合させて表示する技術です。端的に言うと、重ねるのがAR、入り込むのがVR、融合させるのがMRとなります(図参照)」(野秋氏)

図:AR・MR・VR とは

 これらのXR技術は、人手不足を解決する技術として、さまざまなビジネスシーンにおいて活用が進んでいます。例えばMRであれば、製造工場や設備点検の作業において、現場の様子を遠く離れた場所からでも確認できるため、バックオフィスにいるベテラン作業員が現場の作業員に対して、あたかも現場にいるかのようにアドバイスでき、現場の作業の省人化が図れます。
 また、ノウハウを持った人材がリモートで技術伝承することも可能です。さらにコロナ禍では非接触のコミュニケーションが求められ、リモートワークやリモート会議が定着し、大学ではオンライン授業や大学案内、エンターテインメント分野では無観客ライブなどが行われました。

人手不足や技術継承の課題を解決するXR活用事例

写真:経験の浅い作業者にスマートグラスの視界に分かりやすく指示が表示される

 XRを活用して人手不足を解決している事例として、野秋氏は産業用のカッティングマシンを販売する商社の事例を紹介します。

 「こちらの会社は、顧客に納入した機器のカスタマーサポートにXRサービスを導入して、業務の効率化を実現しました。従来、顧客から故障などの連絡があった場合、電話でサポートしたり、込み入った内容の場合は現地へ駆けつけて修理対応を行い、1件当たり1時間ほどかかっていました。それが、XRを活用することでリモートでも現地にいるような指示ができ、対応時間は1時間から10分に短縮されました。これにより、顧客が増えてもサポート要員を増やすことなく対応ができています」(野秋氏)

 次に、野秋氏はXRを活用して技術継承を実施している事例として、福岡県の農業の事例を紹介します。

 「イチゴ畑にいる学生の視界が農業学校のディスプレイに映し出され、それを見ながら指導者がアドバイスを行うという事例です。スマートグラスをかけた学生が両手で茎や葉に触れると、農業学校のディスプレイにあらゆる角度から捉えたイチゴの画像が映し出され、その場で問題点や解決方法がアドバイスされます。これにより新規就農者への効率的な技術継承が可能になっています」(野秋氏)

 このような遠隔での指導は、製造工場などでも活用されています。さまざまな計器が並ぶ現場において、どのレバーを操作するのかといった指示は、音声とともに画像が共有できたとしても、分かりにくいことがあります。そういう場合に、XRなら作業者のスマートグラスの視界に矢印や丸印を表示させて、分かりやすく指示することができます。このような指導方法は、例えば海外に新しい製造拠点を立ち上げる際や、新人を早く育てたい場合などに、熟練技術者が遠隔指導するような形で活用されています。

教育や観光、医療、身近なEC分野でも活用

空間ソリューション 担当課長 朽木(くちき) 大祐(だいすけ)

 製造業や農業分野での遠隔指導におけるXRの活用事例を紹介しましたが、教育現場ではVRを活用した事例がよく見られます。例えば仮想空間に大学案内の空間を設けて、受験生が情報収集や進学について相談するといった使われ方や、小学校の英語の授業で教室の壁に仮想の海外の街並みを映し出し、アバターの英会話音声を再生する海外体験ルームを設置したという事例もあります。
 一方、NTTコノキューの朽木 大祐氏は、身近な生活シーンにおけるARの活用事例についても紹介します。

 「ARで自分の部屋に購入を検討している家具を配置した時の様子を見ることができるサービスや、バーチャルフィッティングという洋服を試着するサービス、メガネをかけたり、メイクのシミュレーションができるサービスもあります。このようなサービスによって、EC販売事業者は購入後の返品率を下げるというメリットがあります」(朽木氏)

 さらにARでは、町おこしなどを目的に、観光地に物理的な施設を建築することなく、スマホをかざすと施設が現れるといったバーチャルな観光スポットを設けたり、この技術を応用したスタンプラリーイベントなども開催されています。また、医療分野では、MRを活用して首都圏在住の救急エキスパートの技術を地方の医科大学の学生に遠隔で指導するといったことが行われています。
 なおXRの導入にあたっては、企業の情報システム部門が主導で進められることが多いと言います。中には、実際にXRサービスを使用する現場との合意がないまま、導入を決めてしまい、導入したものの現場では使われないというケースは多々あるとのことです。そこで同社は、XRの導入を検討している企業に対してサービスのデモを行う場合は、必ず現場の方にも立ち会ってもらい、実際に使っていただいてXRサービスを理解してもらうことを心掛けているそうです。

これからのXRの可能性

 今後のXRの進化について、朽木氏は次のように語ります。

 「XR自体は、技術の一要素でしかありません。大事なのは、今後そこに何を表示して、どのような体験を提供していくかということです。活用される分野は今後ますます拡大し、ビジネスや生活のあらゆる分野で使われていくと考えています。デバイスに関しては、例えばスマートグラスにメールの着信が表示されるようになるなど、XRデバイスが今後のスマホになり得る可能性もあるかと思います」(朽木氏)

 一方、野秋氏は今後のXRサービスの広がりと、AIが導入される可能性に言及します。

 「XRデバイスは軽量化が進み、普通のメガネのようになるかと思います。そこに例えば映画を映し出すようなサービスはすでに登場しており、身近なものとなっています。また、今後XRを活用した遠隔での作業サポートがどんどん進んでいくと、サポートする側は人ではなくAIになっていくことも考えられます」(野秋氏)

 XRは現在、さまざまなビジネスへの展開が進められています。今後はあらゆるビジネスシーンや日常生活における活用が進み、XRがもっと身近な存在になってくると考えられます。

ポケモン GO
2016年に配信が開始されたスマホ向けゲーム。位置情報により現実世界が舞台となり、AR(拡張現実)を活用することで、ユーザーは現実の風景越しにポケモンを発見できる
会社名 株式会社NTTコノキュー
事業開始 2022年(令和4年)10月1日
所在地 東京都千代田区永田町2-11-1山王パークタワー7F
代表取締役社長 丸山 誠治
事業概要 XRに関わるソフトウェア・ハードウェアの技術開発、メタバース、デジタルツイン領域において、グローバル市場を見据えたサービス及びソリューションの提供、XRデバイスの企画開発
URL https://www.nttqonoq.com/
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