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-西日本電信電話株式会社(NTT西日本)-
大容量で低遅延、消費電力も大幅カット 次世代へ向けた「IOWN構想」で叶える未来

記事ID:D10042

通信業界では今後、高度な情報処理によるデータ通信量の増加に伴い、増え続ける消費電力への対応などが求められています。この課題を解消する次世代ネットワークとして注目を集めるのが、NTTグループが多数のアライアンスパートナーと連携し、推進している構想「IOWN」です。今回は、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の技術革新部IOWN推進室の小山 晃広担当部長、今井 徹担当課長に「IOWN」の概要や展望についてうかがいました。

IOWN構想で豊かな社会を創造

技術革新部IOWN推進室
担当部長 小山 晃広氏

 NTTグループが2019年5月に構想を発表した「IOWN(InnovativeOptical and Wireless Network)」は、「革新的な光及びワイヤレスネットワーク」と直訳されます。NTT西日本で「IOWN」の社会展開・推進を担う小山氏は、構想の経緯をこう話します。
 「AIやICTの活用がこのまま拡がり続けると、今後、全国で膨大なデータ量が飛び交うことになります。また、これらのデータを分析したり伝送するには、相応のICT機器やエネルギー量が必要になります。そのため、NTTグループではIOWNで『大容量』『低遅延』『低消費電力』のネットワークを構築し、2030年までの社会普及を目指しています」(小山氏)

技術革新部IOWN推進室
担当課長 今井 徹氏

 「IOWN」には、大容量、低遅延、低消費電力を実現するために、光回線のネットワーク網に、ネットワークから端末まで、すべてに光工学(フォトニクス)を導入したオールフォトニクス・ネットワーク(AllPhotonics Network:APN)という新技術が用いられています。従来の光回線との違いを、同じく「IOWN」推進を担う今井氏は次のように解説します。
 「現在、パソコンで文字や画像、動画などのデータを送信する場合、電気信号が使われます。そして、このデータは光ファイバーケーブルを通じて送られますが、電気信号のままでは伝搬できないため、電気信号から光信号へ変換されます。また、受信されるまでの中継の過程においても多くのネットワーク機器を経由していますが、そのたびに電気信号と光信号の変換が行われています(図1参照)。このような、電気信号から光信号へ、光信号から電気信号へと変換する際に電力を要し、また負荷がかかることで通信効率が下がり、通信の遅延を引き起こしていました。APNはこのような無駄な変換を省き、端末から端末まですべて光信号で結ぶことで、これらの問題を解消します」(今井氏)
 NTTグループでは、APNに対応したネットワークサービス「APNIOWN1.0」の提供を2023年3月より開始しました。大阪・関西万博の開催にあたっても、夢洲会場内のパビリオン・催事施設などの主要施設間を接続することで、会場内のさまざまなコンテンツやイベントの共有、距離を感じることのない一体感と没入感のある体験が可能な実証環境を提供する予定です。

図1:電気信号と光信号を活用した通信の仕組み

大容量、低遅延が解決する遠隔漫才の絶妙な掛け合い

 「IOWN」構想の下、大容量、低遅延、低消費電力の光ネットワークで全国が結ばれると、どのようなことが可能になるのでしょう。小山氏はその具体例を「低遅延の実現」をポイントに挙げ解説します。
 「『APN IOWN 1.0』は、リモート会議などで相手の反応が遅れて届くような通信の遅延が抑えられます。そのため、より緻密さが求められるリモート操作に有用です。例えば、離れた場所から熟練の専門医が手術支援ロボットを使って行う遠隔手術などが挙げられます」(小山氏)
 「また、NTT西日本ではIOWN APNを活用したさまざまなイベントを開催しています。例えば、人気お笑いコンビが遠隔地にいる相方とリモート漫才を披露するイベントを開催しました(図2参照)。従来のリモート接続では音声や映像が少し遅れて届くため、漫才の絶妙な掛け合いは成立しづらかったのですが、イベントではIOWN APNの活用により、見事に漫才が成立しました。ほかにも、『サントリー1万人の第九』コンサートでは3つの離れた会場をAPNでつなぎ合唱を違和感なく行えるか検証しました。メイン会場の指揮者の映像とオーケストラの演奏音を凍京、大阪の遠隔会場2拠点に伝送し、遠隔会場の約150名の合唱をメイン会場に送り返すのですが、片道約700kmもの距離感で、ズレを感じさせることなく合唱でき、IOWN APNの超低遅延を実証できました」(今井氏)

図2:APNによる多地点間お笑い・エンタメライブ

 このように大容量、低遅延、低消費電力の通信環境は、緻密な操作を必要とする建設機器の遠隔操作、情報の遅 れが致命的となる金融取引など、さまざまなビジネスシーンでのニーズが考えられます。
 このほか、大容量と低遅延のネットワークの浸透は、大規模な情報処理を行うデータセンターの全国各地への分散化を促すと考えられています。
 「企業や研究機関が大型コンピュータによる大規模な情報処理、大量の顧客情報の保管・管理などを行うデータセンターは、ビジネス拠点との通信遅延を避けるため、都市圏の郊外に設置される傾向があります。ですが、全国で同条件の高速通信が可能になると、都市圏から離れた地方でもデータセンターの建設需要が高まると見込まれます。その結果、企業はデータセンターを各地へ分散させ、地震など災害時のリスク回避を行うことになるでしょう」(小山氏)

多くの企業・業種連携でIOWN構想の実現を目指す

 現在、限定的な導入・実証段階にある「IOWN」ですが、ネットワークを全国に拡げ真価を発揮するには課題もあります。
 「大容量、低遅延はすでに実装していますが、低消費電力を実装する接続機器の開発はこれからの段階です。IOWN構想を実現するには、このような開発を含めたさまざまなインフラの構築が必要なため、その周辺機器を開発するメーカーや、ネットワークの活用を考え実行する企業・団体の皆さんの協力が不可欠です」(今井氏)
 NTTグループはデバイスの開発をはじめ、ネットワーク活用のための協業・共創を最重要課題と捉え、世界のさまざまな有力企業の参入により「IOWN」ネットワークの国際標準化を目指しています。IOWNが解決したい課題は世界共通の課題であり、民間企業1社の力で解決することは到底不可能なため、さまざまなイノベーションが必要です。そのため、国内外問わずパートナー連携を行い、「オープンに取り組んでいる」と小山氏は話します。
 「『IOWN』は国内外を問わず『みんなで拡げましょう』という姿勢で推進しています。特に『IOWN』は、NTTが提唱する『デジタルツインコンピューティング(DTC)』の活用も構想に含まれ、企業・団体の参入が不可欠です」(小山氏)
 「IOWN」ネットワークが拡がると、中小企業でも店舗のリモート接客、工場機械のリモート操作、さらにDTCの活用など、さまざまな利用機会が考えられ、ビジネス拡張のチャンスが広がりそうです。

※ DTC
Digital Twin Computingの略。人間の行動・心理データと、生活、交通、産業、自然現象などで生じる物理的データを組み合わせ、サイバー空間上に現実に近い状況を再現し、リアルタイムで実証、動態予測を行う技術。
会社名 西日本電信電話株式会社(NTT西日本)
創立 1999年(平成11年)7月1日
所在地 大阪府大阪市都島区東野田町4-15-82
代表取締役社長 北村 亮太
資本金 3,120億円
事業内容 電気通信役務の提供、及び電気通信技術に関する研究など
URL https://www.ntt-west.co.jp/
〔ユーザ協会賛助会員〕
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