ICTコラム
第1回 オフィス業務自動化を実現するRPAの未来現在、人間に代わってオフィスでパソコンを操作して作業を行うRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が注目されています。そこで今回より、この「RPA」にスポットを当てた連載をスタートします。第1回目は、オフィス業務自動化を実現するRPAの概要と定義について解説していきたいと思います。
1.未来の働き方が現実となる「RPA」
ここは某オフィス。事務処理用のデスクスペースにはパソコンが整然と並んでいる。しかし、そのパソコンの前に職員はいない。一見、パソコン自体も稼働していないように見えるが、パソコン内ではソフトウェアのロボットが、ルーティンワークを自動実行していた。しかもその処理速度は人間の10倍で、申請書類の入力、集計作業、経費精算作業を正確に処理している。一方、事務処理用のデスクスペースとは対照的に、顧客との接点である受付窓口は多数の職員であふれ、顧客の相談には手厚く応対し、また新しく企画したサービスを積極的に提供するなど、活気と笑顔に満ちていた――。
これは、私が思い描くRPAを活用した未来の業務自動化オフィスの実現イメージであるが、決して絵空事でも遠い未来の話でもない。
現在、少子高齢化時代の到来を迎え、人員の充足に悩む企業は少なくない。工場などの生産現場ではロボットによる自動化と改善活動が進み、高いレベルの業務効率化を達成してきたが、オフィスの自動化は進んでこなかった。しかし今、オフィスにおいても人間に代わってロボットが業務を代行する時代が訪れたのだ。それを実現するのが、RPA(Robotic Process Automation/ロボティック・プロセス・オートメーション:ソフトウェア型ロボット)である。
例えば、これまで人間が行っていた情報システム操作や申請書類のテキストデータ変換、データの入力・出力・変換操作、各種検索調査などパソコン相手の定型作業を、RPAに任せることで超過勤務の削減や労働者不足の補填を達成し、ホワイトカラーは人間にしかできない業務に専念できるようになる。
2.RPAの定義
RPAとは、ルールエンジン・機械学習・人工知能(AI)などの技術を有するソフトウェア型ロボット(仮想知的労働者・デジタルレイバー・デジタルパートナーなどとも呼ばれる)が、ホワイトカラーのパソコン操作(アプリケーション操作)を代行することにより業務自動化するという概念である。欧米では2015年からブームになり、日本でも2016年からブームが始まった。2017年にはAIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)と並ぶIT分野の最注目ワードとなり、2018年もブームはさらに拡大している。このようにRPAは、もはや目新しい技術というよりも、あって当たり前、使っていて当たり前の技術になりつつある。
RPAは、「働き方改革」や「ホワイトカラーの生産性向上」といった課題を現実的かつ短期的に解決できる具体的手段として関心を集めている。各種解決手段の中でも、特にRPAが注目される理由としては、導入しやすくかつ導入効果の高いことが挙げられる。
例えば、従来人手で行っていたデスクワークをRPAにより自動化したことで、作業時間を7割削減できたとか、作業速度が5倍速になった、という事例も珍しくないのだ。
3.RPAによる業務自動化の動き
そこで、実際にRPAがどのように動くのか、具体的な事例を用いて紹介する。
これは、ある電気店において、エアコン工事の受注名簿から訪問工事の作業指示書を、自動作成したケースである。
図1のモニター画面の左側がコールセンターで受け付けたエアコン工事依頼名簿で、画面の右側は工事業者に渡す作業先指示書だ。そのプロセスは次の通りである。
①左側の名簿から氏名や電話番号をコピーし、右側の指示書にペースト(貼り付け)して転記。
②地図ソフトを起動し、名簿の住所欄に記載された住所を入力して検索。地図を拡大操作して、範囲を指定し、該当箇所を画像形式に変換した上で、右側の指示書に貼り付ける。
③指示書のファイル名に、名簿の受付番号欄の値を入力し、ファイルを保存。
④この①~③の定型作業を、名簿の件数だけ繰り返す。
作業速度は人間の約3倍、1日あたりの作業時間も人間の約3倍(人間が1日8時間働くところ、RPAツールは3倍の24時間働く)と考えると、3倍速で3倍の時間働けるRPAツール(ロボット)は人間の9倍の生産性がある(ホワイトカラー9人分の働きに相当する)ということができるだろうか。
これは余談ではあるが、車両の動力を「50馬力」などと表現するように、RPAツール(ロボット)の仕事率を「9人力」などと表現する単位が生まれるかもしれない。
(次回へ続く)
中川 拓也氏
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 社会基盤 ソリューション事業本部 社会基盤部 ソリューション事業部 RPAソリューション担当課長
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