ICTコラム
第41回 知っておきたい効果的なターゲティング広告とはインターネット広告の現状
さまざまな技術が進化する昨今、ユーザーは多くの情報を自分好みの入手経路から得ています。特にスマートフォンが普及してからは、ウェブサイトを閲覧するだけでなく、SNS、動画、スマートフォンアプリケーションなどの利用率も高まり、情報の接触機会も多様化しています。
ユーザーの情報リテラシーも高まる中、自分が興味を持てないバナー広告などを閲覧した場合、どのような感情を抱くでしょうか?興味がない同じようなデザインのバナーを何度見ても、不快でしかありません。
ターゲティング広告の重要性
ユーザーに不快感を与えず、ユーザーに興味関心を好意的に抱いてもらうためには、むやみにバナー広告を出すのではなく、適切なタイミングと適切なターゲティングが重要になります。ユーザーが求めている情報がそこにあれば、ユーザーの満足度も高まり、企業の売上にも連動するでしょう。本記事ではさまざまなターゲティング手法を紹介いたします。配信戦略の参考になれば幸いです。
1.リターゲティング
ターゲティング広告の手法として最も多く使用されている手法でしょう。「リマーケティング広告」と呼ばれることもあります。一度広告主のサイトに訪れたユーザーに対して、サイト離脱後、他サイト閲覧時に追従して配信する手法になります。一度広告主のサイトに訪れていることもあり、広告効果も高い配信になります。
一方、同じようなバナーを長期間表示させても、ユーザーにとっては魅力に映らないでしょう。多くのユーザーに関心を継続して抱いてもらうには、複数の訴求バナーを配信することが重要です。場合によっては、訪問経過日数ごとに変更、または訪れたページごとに変更することも効果的でしょう。
2.類似ユーザー
広告主のサイトに訪れたことがあるユーザーと「ウェブ上で近しい行動をしている」ユーザーに対してバナーを配信する手法になります。ターゲットの特性上、似たようなユーザーに対して配信することができるため、広告効果が高いだけでなく、新規ユーザーの獲得も期待できます。また、配信する類似ユーザーリストは「サイトに訪れたことがある」という条件だけでなく、条件指定した上で作成することもできます(特定のページを閲覧したユーザーなど)。
では、最も効果が期待できそうな条件指定は何でしょうか?理論上も経験上も同様ですが「コンバージョンユーザーの類似(コンバージョンページを閲覧)」が最も効果的な結果が多いです。類似ユーザー配信の注意点としては、取り扱いサービスのターゲットユーザーの行動が特徴的でない場合や十分なコンバージョン数がない場合(コンバージョンユーザーをリスト化する場合)などはターゲット精度が低くなることが想定されます。但し、実際に配信をしてみないことには、結果が分かりませんので、最初は試験的に小規模で配信してみることをお勧めします。
3.興味・関心
ユーザーの興味関心、習慣、積極的に調べている情報などに対してターゲティングする手法になります。配信媒体(Google、Yahoo!など)によりターゲティングに利用している情報、ターゲット項目はさまざまです。Facebook広告など、SNSアカウントの情報からターゲティングを行うこともできます(例:最終学歴、役職など)。媒体が定義したテーマが基本設定になりますが、Google広告では自分でテーマを作成することも可能です。興味関心のターゲティングは潜在層~顕在層まで幅広いユーザーにサービスを認知してもらう機会を創出します。読者の皆様の興味関心はどのターゲティングに属しているのでしょうか?実は確認する方法もございます。Googleアカウントにログインした状態で以下URLにアクセスすると、自分の興味関心カテゴリが表示されます。いかがでしょうか、当たっていますでしょうか?
https://adssettings.google.com/authenticated
(編集部注:Google広告設定にて「広告のカスタマイズ」設定をオンにしている場合に表示されますがオフにしている場合は表示されません)
▲イメージ図
配信事例
それでは、実際に各種結果を比較してみましょう。以下の例は国内旅行に関連したサービスに対する配信結果です。本サイトの場合のCV(Conversion)は、サービス申し込み件数となります。
▲国内旅行に関連したサービスに対する配信結果
注文数や資料請求数などの成果1件を獲得するために要した単価を示すCPA(Cost Per Acquisition/Cost Per Action、広告費用÷成果獲得数の値)の値が低ければ費用対効果が高い広告となります。CPAを基準として三種類の広告を比較評価すると、単価が低い順に①リターゲティング>②類似ユーザー>③興味・関心となります。
②類似ユーザー及び③興味・関心は、成果獲得率の指標であるCVR(Conversion Rate、成果獲得数÷サイト訪問回数の値)こそ①リターゲティングに比べて低いですが、広告1クリック獲得に要した単価を表すCPC(Cost Per Click、広告費用÷クリック数の値)が低いため、CPAの上昇を抑えています。配信当初は検索連動広告を中心に配信強化をしていましたが、CPCが上昇して、CPAも高騰してしまいました。その中で、各種ターゲティング配信を効果的に配信することで、効率的に獲得数を伸ばすこともできました。
最後に
今回紹介した以外のさまざまなターゲティング手法もございます。各ターゲティングの特徴を把握した上で、サービスとプロモーション目的に合った配信を行い、効果的な配信を実現していただきたいです。また、主役はユーザーになります。サービス提供側の一方的な発信ではなく、ユーザーの立場になり、どのような情報をどういった形式で伝えれば満足してもらえるかということを忘れないでください。良質なコミュニケーションを展開することで、企業とユーザーの信頼関係が生まれるのではないでしょうか。
里村 仁士氏
2010年よりブルースクレイ・ジャパン株式会社にて勤務。リスティング運用、サイト分析、人材育成など業務に従事。2013年に Google広告トップコントリビューターとしてGoogle社より認定。リスティング運用以外にもウェブ解析士講座、企業研修、インハウス運用支援などの教育事業も展開中。
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