ICTコラム

第34回 インターネットとリアル、双方から潜在的なニーズを探り、戦略的サイトへ変貌させる方法

ウェブ戦略の成功には、お客さまが求めているコンテンツを定期的に模索し、本来の目的に即したサイトを維持、必要があれば再構築することが不可避です。今回は、ダスキンあざみ野支店において実際に行ったリニューアル事例をもとに「お客さまの潜在的ニーズを探り、反映する手順」をご紹介します。

Step1 目標とターゲットの明確化

 今回の事例は、地域密着型で既存顧客の維持により基盤が安定しているため、ホームページによる新規顧客開拓に注視してこなかった経緯があります。サイトは何年も放置され、スマートフォンにも未対応。BtoB、BtoCなど基本方針も定めず、コンテンツを継ぎ足したことから、サービスに関する情報と会社に関する情報が混在し、アクセスがあっても、すぐに離脱してしまう傾向にありました。

 このような場合、最初に「サイトの目標とターゲット」を定める必要があります。まずはヒアリングを行い、目標が「家事代行サービスやハウスクリーニングの新規顧客開拓」にあり、ターゲットが「時間・体力・技術的に、掃除や家事を負担に感じる近隣在住の成人女性」であることを明確にすることから始めました。

Step2 インターネットとリアル、双方からお客さまの求める情報を探る

 次に「目標達成には、どのような情報が必要か」検討します。このときサービスや商品を提供する立場から「伝えたいこと」を優先すると、お客さまを置き去りにする可能性があります。お客さまの立場から「何が知りたいか」を予測することが重要です。

 お客さまが求めている情報を探るには、お客さまに聞くのが一番です。現場からのリアルな声とインターネットから得られる情報、双方を利用すると良いでしょう。

1.お客さまの声
 店舗で行うアンケート、営業が現場で受け取る「声」などがある場合は、まずそちらを精査しましょう。
「事前に伝えるべきだった、印象が大きく異なっていた、誤解があった」などの問題点を洗い出すと同時に、競合と比較検討し選んだ理由など、残すべきコンテンツも明確にすることができます。

2.ソーシャルリスニング
 TwitterやFacebook、インスタグラム、ブログといったSNSへの投稿、Yahoo!知恵袋のようなコミュニティサイトに寄せられている質問や不安も非常に参考になります。現場で収集したお客さまの声よりも率直で忌憚のない意見や感想が得られるほか、潜在的なニーズを探ることもできます。

3.お問い合わせ
 電話やメール、サイトのお問い合わせなどから寄せられる「よくあるご質問」も重要です。お問い合わせ内容に明らかな偏りが見られる場合は、そのコンテンツが不足している、もしくは掲載してあるのに分かりにくい状況が考えられます。

4.インターネットで利用できる無料ツール
 既に解析可能なデータを収集・蓄積している場合は、Googleサーチコンソール(https://www.google.com/webmasters/tools/home?hl=ja&pli=1)を利用し、どのようなキーワードで検索すると検索結果に表示されているのか、そのうちどれぐらいの人が実際にサイトを訪れているのか、確認しましょう。その際、Googleアドワーズ(https://adwords.google.com/um/signin?hl=ja_JP)のキーワードプランナーをあわせて利用し、集客効果の高いキーワードを探すと良いでしょう。広告を出稿しなくても、おおよその数字であれば、無料で調べることが可能です。例えば、キーワードプランナーで見つけた集客効果の高いキーワードをサーチコンソールで参照。検索結果に表示されていない場合は、そのキーワードに即したコンテンツを充実させる、などの対応をとることが有効です。

▲表示された検索結果をサーチコンソールで調査した画面

5.競合サイト
 お客さまの立場で競合サイトと比較した場合、どこが分かりやすく、どこが分かりにくいのか、検討することも大切です。こだわりが強い場合など、どうしても主観が入る場合は、ターゲットの条件に即した人に客観的に判断してもらいましょう。

Step3 目的に即したサイトへ再構築

 調査の結果、今回はリアル・インターネットともに「料金・所要時間・サービス内容・対応エリア」のニーズが圧倒的に多いことが分かりました。リニューアル前も情報が掲示されていましたが、滞在時間が短く、離脱も高いことから、非常に分かりづらい状態にあると考えられました。そこでまずは、料金の目安や特徴など、サービスの情報をしっかり記載し、画像も追加。モバイルフレンドリーにも対応し、カテゴリーごとに色を分けるなど、操作しやすく、直感的に分かりやすい構成へ変更しました。

 また「ダスキン×掃除×口コミ」「(競合)×ダスキンとの違い」「家事代行会社おすすめ」など、比較検討するためのキーワードが多く、なかには「ダスキン×高い」などネガティブな要素もみられました。そこで「社員教育の徹底や、個人情報保護への取り組み」など価値の高さについても触れることにしました。

まとめ

 ダスキンあざみ野支店の場合、リニューアル前はサイトを見てお問い合わせいただく件数が、多くても月に1~2件しかありませんでした。しかしお客さまの潜在的ニーズを意識してリニューアルした結果、初月で既に25件まで伸びています。

 ウェブ戦略を成功に導くためには、インターネットとリアル、双方からお客さまの声に耳を傾け、悩みや欲求など潜在的なニーズに応えていくことが重要です。誰が何のために閲覧するのか。定期的に顧客のニーズに応じたコンテンツを維持することで、戦略的サイトを構築し続けていきましょう。

後藤 亜希子氏

ウェブモ株式会社 代表取締役。WACA認定上級ウェブ解析士。

運用しやすいシステムの開発、ユーザーの視点に立ったサイト制作、数字に裏打ちされたコンサルティング。三つの柱を中心に、顧客の課題に取り組む。受け身型ではなく提案型解決に挑んでいる。

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