ICTコラム

第32回 事例から見る「ウェブ×地域創生」~ウェブだからできる新たな発想へ

第1回第2回のコラムでは地域創生に役立つウェブコンテンツを考えるためには、順序立ててウェブ戦略を考える必要があるということを述べました

順序立ててウェブ戦略を考えたあとは、さらに「ユニーク」なウェブ活用のアイディアを生み出していくことが必要になるでしょう。それにより、他社・競合との差別化を図っていき、注目度を高めていきましょう。

ウェブ×地域創生の成功事例

 では、ウェブ活用のアイデアを考えるヒントになるウェブ×地域創生のユニークな成功事例を紹介します。事例を参考にしていくことで新たなアイデアのきっかけになると思います。

 まず「オンラインコンペ」による名産品のリデザインの事例です。

事例1)デザインで石垣島を旅しようUSIO Design Project 名産品リデザインアイデア募集
http://usioproject.com/product

 USIO Design Projectはデザインの力を通して、石垣島の魅力を再発見するプロジェクトです。その取り組みのうちの一つとして「USIO Design Project 名産品リデザインアイデア募集」がありました。石垣島の名産品10アイテムを対象に、リデザインアイデアをオンライン上で募集し、コンペを行いました。石垣島名産品の魅力を最大限に伝えるデザインを競い、デザイナーによる石垣島現地視察を経て島内事業者・生産者と共同で製品化し、石垣島の新しいブランド産品として販売されました。

 このプロジェクトでのオンラインコンペの特徴の一つは、「全てのコンペ応募作品を閲覧できること」です。作品応募者が他者のコンペ応募作品を閲覧できることで応募者同士の刺激をうみ、よりブラッシュアップされた多くの作品が生まれます。また、コンペ参加者以外の一般ユーザーにとっても、様々な作品を見ることができるのはその名産品や取り組みに対する興味を生んだのでしょう。結果、コンペには国内外から431点の作品が集まるなど、盛り上がりを見せました。

 このプロジェクトでユニークな点は、デザインが採用された応募者には、石垣島への視察訪問(2泊3日)への招待や石垣島の名産品セットのプレゼントといった特典があります。オンラインでのつながりが、オフラインのつながりとなり、もっと地域を知ってもらうきっかけとなります。

 コンペティションという、従来オフラインで行なわれてきた施策をオンラインに導入するということが成功した事例と言えるでしょう。そして、オンラインで完結せず、オフラインでの体験が加わることで、オンライン・オフライン両方のメリットをもたらし、ユーザーをさらに石垣島の魅力に引きこむことに成功した点も特筆すべきです。

 次は、近年メジャーになりつつある動画による事例を見てみましょう。

事例2) 秋田県の映像プロジェクト『True North, Akita.』
http://augment5.com/video/151611926

 秋田の移住者増加のための認知拡大を目的として、秋田県仙北市の美しい雪景色、豊かな自然を感じさせる山々、住民の表情、祭事・生活の様子などが採光豊かな映像で彩られた動画です。

 「動画コンテンツが地域の魅力を伝えるために有効である点」に関して、この動画を制作したaugment5 Inc.の代表である井野英隆氏が、『「検索可能な世界」と「検索がおよばない世界」に区別して考えると、「音」や「匂い」は「検索がおよばない世界」に属する』と発言されています。

 地域が持つ音や匂いといった「その場にいないと体験が難しい価値ある一次情報」は検索不可能な世界です。しかしそれを動画に映像として一次情報により近い形で入れ込むことで、ウェブ動画として「検索可能」にし、数多くの人に届けること、伝えることが可能になるのです。

 この動画の印象的な点は、秋田の名物や名所が紹介されるわけでもなく、解説やナレーションもないことです。解説やナレーションという装飾をそぎ落とし、秋田に暮らす人々と美しい自然などのありのままの光景が伝わります。

 『True North, Akita.』はおよそ2ヶ月で20万回以上の再生を記録し、120か国以上もの人たちに閲覧されました。従来のテレビCMでは制作費と出稿料で数千万円はかかるといわれています。地方自治体や地方の中小企業の限りある予算中で、比較的安価にPRにつながる映像コンテンツを作成でき、時と場所を選ばず多くの人に発信することができたという点はインターネット動画の優位性によるものだと言えます。さらに、従来は海外の人々に映像を届けるということは稀でした。インターネット動画だからこそ、国境も超えて多くの人に魅力を伝えることを可能にしたのだと思います。

 各事例はそれぞれユニークな工夫がなされており、差別化されたからこそ注目を浴びました。これらの事例を参考にしつつ、自らの施策に合わせたオリジナルなアイデアを見つけ、施策に落とし込んでいってください。

 ウェブの特性を活かしながら、日本各地の魅力を発信する事例がもっともっと増えていくことを期待します。

小熊 亮人氏

株式会社トラスWebディレクター。WACA認定上級ウェブ解析士。

経営コンサルティング事務所のアクセス解析や改善提案を担当、現在は大手通信企業に常駐し、サイト運用ディレクションに従事。

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