ICTコラム
第29回 ご自身で行うアクセス解析のススメ突然ですが、皆さんはご自身で自サイトのアクセス解析を行なっていますでしょうか。実際のところ運用と解析を制作会社に委託することも多いと思いますが、施策や広告などサイトのことを一番よく分かっているのは運営者ですから、アクセス解析を運営者が行うことでよりスムーズに解析が行えるはずです。そこで今回はご自身で行うアクセス解析についてお伝えしたいと思います。
アクセス解析は意外と簡単!?
「アクセス解析」という言葉に「難しいもの」というイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
解析用のツールと言えば、Google Analytics(グーグルアナリティクス)やAdobe Analytics(アドビアナリティクス)といったものがあります。集計画面は複雑に見えるかもしれませんが、どういった値が計測されていて、それをどうやって集計するかが分かれば比較的簡単に集計できるようになると思います。
実際にどういった値を集計できるのか、Google Analyticsをもとによく使う集計値についてご紹介していきます。
ページビュー/セッション/ユニークユーザー
すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、アクセス解析の入口でつまずきがちなのが、ページビュー/セッション/ユニークユーザーの違いです。実際、集計結果をご報告した際に、違いについて質問されることが多々あります。基礎的かつ重要な指標ですので、ぜひ覚えておいていただければと思います。
ページビュー(PV)
▲ページビューのイメージ(4PV)
ページビューとはユーザーがページを開いた回数を示しています。
セッション(SS)
▲セッションのイメージ(2SS、4PV)
セッションはサイトを訪問した回数を示しています。一度別サイトを訪問した後に再訪問した場合などに回数が増えます。
※セッション数は「ページ別訪問数」や「訪問者数」として記載されることもあります。
ユニークユーザー(UU)
▲ユニークユーザーのイメージ(3UU)
ユニークユーザーは指定した期間の間に何人のユーザーが訪問したかを示しています。一人が複数回に分けて訪問していても(複数セッションあっても)ユニークユーザー数としては1として集計されます。
※ユニークユーザーは「実訪問者数」や「ユーザー」として記載されることもあります。
▲Google Analyticsでの表示(赤枠)
これらの指標から、1訪問あたりに閲覧したページ数(ページビュー数÷訪問数)などが分かるため、ユーザーがどの程度サイトに興味を持って回遊したのかを推測することができます。
例えばブログ形式のサイトで、「いろんな記事を読んでもらいたいが1訪問あたりのページビュー数が少ない」といった場合、ユーザーへの訴求方法や動線を見直す必要があるかもしれません。
集計方法(Google Analyticsの場合):行動>概要
直帰率/離脱率
次に、直帰率と離脱率についてご紹介します。
直帰率/離脱率とは
直帰率とは、ユーザーがそのページのみ閲覧した割合(すぐにサイトから離れてしまった割合)のことです。離脱率とは、ユーザーがサイトを回遊してそのページを最後に見た割合のことです。
▲Google Analyticsでの表示(赤枠)
この指標から、ユーザーの訪問をサイト回遊につなげられていないページやユーザーの興味を失ってしまっているページなどを推測することができます。
例えば直帰率の高いページで考えられるのが、「検索エンジンからサイトに訪れたが、求めていた情報がなかったためサイトを離れてしまった」といったことが考えられます。この場合、ユーザーが検索したキーワードに関連しないコンテンツではないか、関連した内容が分かりづらい(気づきにくい)ことはないかなどの見直しが必要です。
集計方法(Google Analyticsの場合):行動>サイトコンテンツ>すべてのページ
参照元/メディア(リファラー)
参照元/メディア(リファラー)は「どこから訪問したか」という指標です。大きく分けて以下の分類で計測されています。
○参照元/メディア(リファラー)の分類
名称 | 分類 | 詳細 |
---|---|---|
organic | 自然検索 | 検索エンジンの検索結果からの流入 |
paid | 有料検索(広告) | 検索エンジンの有料広告からの流入 |
referral | 遷移元 | ほかサイトからの流入 |
direct | 直接流入 | メール内のリンクやブックマークなどウェブ外からの流入 |
▲Google Analyticsでの表示(赤枠)
この指標を見ることで、どの検索エンジンからの自然検索で流入したのか、ブックマークからの流入がどれくらいあるかなどが分かります。
例えばアクセスの急増があった際に、どこからの流入が多く増えているかという点から要因を切り分けることができます。
集計方法(Google Analyticsの場合):集客>すべてのトラフィック>参照元/メディア
時間帯分析
時間帯分析は、週や日の中で時間帯ごとにアクセスがどれくらいあったのかが分かります。
▲Google Analyticsでの表示(赤枠)
この指標から、ある日突然アクセスが急増した際などに時間帯を調べることで要因を切り分けすることができます。参照元と合わせて調査することでより詳細が分かります。
過去に私が担当したケースでは、ある日の14時ごろアクセスが急増しましたが、その時間帯に運営側で何かの施策を打ったわけではなかったので細かく調査したところ、14時ごろに某ニュースサイトに掲載された記事の中に関連情報としてリンクが貼られたことが原因ということが分かりました。
集計方法(Google Analyticsの場合):行動>概要(時間別サマリー)
最後に
今回ご紹介した指標は基本的なものです。それぞれを単体で集計するのではなく、組み合わせて集計することでより細かく解析することができます。
スマートフォンでアクセスしたユーザーがよく見ているページはどこか、日中閲覧しているユーザーはどんな属性か、直帰率の低いランディングページから遷移しているページはどこか、など気になった部分をどんどん深掘りしていくイメージで調査していきます。
どんなことにも言えると思いますが、まずは一度やってみることをおすすめします。そうすることで、今まで見えなかったものが見えたり、新たな発見があったりするかもしれません。
解析した結果からどのような施策が有効か、どんな対応を行うのが良いかというのを一緒に考えご提案するのが私たちウェブ解析士や制作会社の仕事です。どちらか一方が全てやるのではなく、協力してやることでより精度の高い施策が出来上がると思いますので、ぜひ周りの担当者を巻き込んでサイト改善に取り組んでいただければと思います。
串田 工氏
株式会社トラスWebディレクター。WACA認定上級ウェブ解析士。
大手通信企業の会員サイト運用のディレクションに従事し、これまでの実務で培った経験を基に知識だけに頼らないアクセス解析による改善提案でWebサイト価値向上に貢献。
現在は、プロジェクトチームのマネジメントを行いながら、新人の育成、新規サイト制作や映像制作のディレクションなど多岐に渡り活躍。
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