ICTコラム
第27回 マルチデバイス対応でユーザーの満足度を高めるスマートフォンやタブレットの普及により、ウェブサイトはモバイルファーストの時代へと移り変わりました。そこで今回はマルチデバイス対応が及ぼすユーザー満足度への影響について考えてみたいと思います。
マルチデバイス対応とは
マルチデバイス対応とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのさまざまな端末で最適に閲覧できるようにすることを指します。
マルチデバイス対応されているサイトでは、それぞれの端末サイズにあった情報配置(レイアウト)になっていて、ユーザーが不便なく利用できる構成になっています。
例えば有名SNSのFacebookの場合、パソコンで閲覧すると4カラム表示され、メニューやタイムライン、お知らせなどが一画面内で確認できますが、スマートフォンで閲覧するとメニューは上部にアイコンで表示され画面にはタイムラインが表示されます。
スマートフォン・タブレットの所有率
近年、スマートフォンやタブレットの所有率は増加する一方です。2015年時点では、スマートフォンの所有率が約70%、タブレットについては約30%程度の所有率という調査結果が出ています。スマートフォンについてはパソコンと同じくらいの所有率であることが分かります。(図1)
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(図1)
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(図2)
※出典:総務省「通信利用動向調査」
ユーザー層の想定と利用シーンを考える
サイトを訪れるユーザーにはさまざまな方がいます。性別や年齢はもちろんのこと、職業にもたくさんの種類があり、それらの組み合わせによって行動パターンは大きく違います。
年代別でパソコン・スマートフォン・タブレットの利用時間帯を見てみると、男女学生の場合は、前述のスマートフォン所有率からも分かる通り、スマートフォンの利用がほとんどです。時間帯については朝の通学時間帯や帰宅後から就寝までのリラックスタイムでの利用が多い傾向であることが分かります。(図3)
20~40代の男性では、通勤時間や夕方以降のリラックスタイムのほかに昼休み時間での利用があることが分かります。利用端末も時間帯やライフスタイルに合わせて使い分ける傾向があります。(図4)
20~40代の女性では、オフィスワークの方や専業主婦の方などがいることから、朝から夜までいずれの時間帯でも利用があることが分かります。日中の時間帯は家事や育児の合間に利用することが多いためか、パソコンを開いてじっくり利用するよりも、スマートフォンやタブレットで短い時間で利用していることが考えられます。(図5)
50代以上の方についてはスマートフォンでの閲覧よりも使い慣れているパソコンでの利用が多い傾向であることが分かります。(図6)
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(図3)
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(図4)
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(図5)
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(図6)
※参考文献
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平成26年 Yahoo! Japan PCとスマートフォンの検索傾向について属性・利用時間帯で比較検証
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平成27年 総務省 通信利用動向調査
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平成28年 総務省 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
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平成29年 LINE株式会社 インターネットの利用環境 定点調査(2017年上期)
ターゲットに合わせたマルチデバイス対応
マルチデバイス対応を検討するにあたり、第一に考えなければいけないのが、サイトのターゲット層です。前述の通り、ユーザーによって利用シーンや利用端末に違いがありますので、対象サイトのターゲットがどのユーザー層なのか、また実際にサイトにアクセスしているユーザーがいつ、どんな端末でアクセスしているかを知っておく必要があります。
学生や20代くらいをメインのターゲットとする場合、リテラシーが高いため、デザイン性を重視したアイコンで直感的に操作できるサイトであっても問題ありませんが、中高年層をターゲットにしたサイトでは、メニューを分かりやすくテキストで表示したり、少し文字を大きくしたりすることがユーザー満足度を高めるためには必要です。
女性向けではポップなカラーリングや、写真を多く使うことで満足度を得やすいですが、利用傾向からも分かるとおり、短い時間で利用していることが多いと考えられるため、求めている情報にスピーディにたどり着く必要があります。
中高年層はパソコンの利用も多いため、パソコンサイトをメインに作成し、スマートフォンからの閲覧が多いコンテンツのみマルチデバイス対応を行うという方法もあります。
最後に
ユーザーの利用シーンを考え、ターゲット層にあったマルチデバイス対応について考察しましたが、サイトの目的、ユーザーが求めているものは多種多様です。ご自身で運営されているサイトを訪れているユーザーがどんな時間にどの端末で訪問しているかを解析した上で、ユーザーのニーズにあった対応を検討していただければ幸いです。
串田 工氏
株式会社トラスWebディレクター。WACA認定上級ウェブ解析士。
大手通信企業の会員サイト運用のディレクションに従事し、これまでの実務で培った経験を基に知識だけに頼らないアクセス解析による改善提案でWebサイト価値向上に貢献。
現在は、プロジェクトチームのマネジメントを行いながら、新人の育成、新規サイト制作や映像制作のディレクションなど多岐に渡り活躍。
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