ICTコラム
第21回 アフィリエイト広告の賢い利用術広告は成果が保証されていないというのは一般的な考え方です。インターネット広告では、どこの広告から成果が上がったのかを把握できるため、成果報酬型の広告手法が存在します。それがアフィリエイト広告です。アフィリエイト広告には、いくつかの問題点もありますが、矢野経済研究所の調査※1によれば、市場規模は拡大しており、今後も20年までは伸びると予測されています。同研究所は、アフィリエイト広告により獲得されるユーザーの質向上が、拡大の要因になっていると見ており、今後も正しく利用すれば効果が見込める広告手法になると考えられます。
本稿では、アフィリエイトの問題点を明確にしつつ、企業がどのように活用していくべきかを広告主側の視点で簡潔に解説していきたいと思います。
アフィリエイト広告とは
アフィリエイト広告とは、資料請求や購入といった成果に応じた広告費を支払う成果報酬型の広告形態です。通常、アフィリエイトサービスプロバイダー(以降、ASP)にて提供され、ASPはどのサイトの広告から成果が上がったかを把握する計測システムにより、成果を上げたサイトオーナーを正しく判別し、サイトオーナーへの報酬の支払いを可能にしています。また、広告主へは成果数に応じた広告費を請求することで成果報酬型の広告掲載を実現しています。
アフィリエイトの問題点
アフィリエイトに大きな影響を与えたニュースが2010年のステマ※2問題です。これは某芸能人が、紹介料を受け取って、ペニーオークション※3サイトをあたかも本当に利用したかのようにブログに掲載したことが問題となりました。この紹介料を受け取って広告を掲載するという仕組みはアフィリエイトにも共通するため、大きな影響のあったニュースでした。
本来、アフィリエイト広告は、広告であることを明示して商品やサービスの紹介をするため、広告であることを隠して紹介するステマとは明らかに違うものと言えます。にもかかわらず、アフィリエイトにも影響した根本的な理由は、「報酬を受け取って広告を掲載している」という点です。つまり、広告であることを明示して紹介することが却って、「本心ではないのではないか」という一般消費者(ユーザー)の不信感につながってしまっているということです。
実は、この不信感をクリアすることがアフィリエイト広告を成功させる要因になります。
アフィリエイトは理想的な仕組みでもある
アフィリエイト広告は、問題点だけを論えばこれ以外にも問題点はありますが、正しく活用できれば、広告主にとって理想的な仕組みでもあります。
弊社で扱った一例を紹介します。
期間 | 合計 | ||
---|---|---|---|
クリック数 | CV数 | CV率 | |
期間1 | 14,495 | 97 | 0.7% |
期間2 | 15,576 | 62 | 0.4% |
期間3 | 17,018 | 86 | 0.5% |
期間4 | 16,098 | 62 | 0.4% |
※クリック数:アフィリエイトサイトのリンククリック数
※CV数:コンバージョン数=商品購入が申し込まれた数
※CV率:クリックされた回数に対して商品購入が申し込まれた率
このデータは弊社が携わった案件で、何万円もする比較的高価な商品の購入をコンバージョン※4としたアフィリエイト広告の実際のデータになります。この商品はCMなどマス媒体を利用した、大々的な認知広告への予算投下を行っておりませんでしたので、広告主は莫大かつ固定的な広告費用でなくアフィリエイト広告の固定費用※5、成果報酬のみで定常的な購入を獲得できたことになります。
一般に広告費は水物とも揶揄されますが、この状態になると、費用対効果としてROAS※6はもとより、ROI※7までも明確にでき、売上も見込めるという、広告手法としては理想的な仕組みとなってきます。
有力アフィリエイターはなぜ説得力があるのか。
多くのアフィリエイト案件を運用し有力なアフィリエイターと意見交換をさせて頂く中で、有力アフィリエイターに共通に見られたことがあります。それは一般消費者の側に立つというビジネスマインドです。先ほど、「不信感のクリアが成功の要因」と述べましたが、有力なアフィリエイターほど、このビジネスマインドがベースにあり、自然と課題をクリアしていることを実感します。
有力アフィリエイターと提携するために
- ①報酬に魅力がある。
- 報酬の魅力は、数値では表現できませんが、このような関係式と考えてください。
報酬額÷成果難易度=報酬の魅力。
つまり、報酬額が低くても成果地点の難易度が低ければ、報酬の魅力につながります。成果地点の難易度を下げる具体例は、初回購入を半額にするなどです。 - ②商品に魅力がある。
- 商品の魅力とは、主に価格、機能、サービス、ブランドなどです。これらが他社の商品・サービスより魅力があるか、差別化ができているかなど、アフィリエイターはそうした点をとても重要視しています。
- ③対応が誠実である。
- これは特に重要です。アフィリエイト(Affiliate)の和訳が「提携」であるように、広告主とアフィリエイターがお互いの条件合意の上で実現されるパートナーシップです。
終わりに
アフィリエイト広告は、効果が得られるまでに長い期間を要するケースもありますが、他の広告では得られない効果を生み出すこともあります。また、提携するサイトは選ぶことができるので運用次第でリスクも回避できます。アフィリエイト広告は、ウェブ広告ならではの手法であり、諸刃の剣の側面もありますが、一つの選択肢として活用を検討してみてはいかがでしょうか。
※1 矢野経済研究所(2016)「アフィリエイト市場に関する調査を実施」
http://www.yano.co.jp/press/pdf/1630.pdf
※2 ステマ:ステルスマーケティングの略。消費者に広告と気づかれないように宣伝行為をすること。
※3 ペニーオークション:入札ごとに手数料がかかるオークション形式。ボットによる自動入札で手数料をだまし取ったとして逮捕者が出た。
※4 コンバージョン:ウェブ上で得られる成果。お問い合わせフォームからのお問い合わせや資料請求、商品の購入などが定義される。
※5 アフィリエイト広告の固定費用:ASPは通常一定の初期費用や月額費用がかかるためその固定費用の採算が合うかを検討する必要がある。
※6 ROAS:Return On Advertising Spendの略。広告費に対して売上がいくらかの指標。計算式はROAS=売上÷広告費×100
※7 ROI:Return On Investmentの略。一般的には投資額に対して利益がどれくらいかを示した指標。広告の分野では広告費に対して利益(売上-広告費)で換算することもあり、式はROI=(売上-広告費)÷広告費×100で計算される。
小野瀬 友樹氏
株式会社グラタス代表取締役。
NECにて大規模プロジェクトに参画したのち、ウェブ広告代理店エイムスネットを経て現在に至る。
顧客の事業成果に貢献する!をモットーとし、データに基づいたサイト改善と広告戦略を軸にウェブコンサルタントとして活動中。大手から中小企業まで幅広く実務に従事している。
ウェブ解析士マスター。Yahoo!プロモーション広告プロフェッショナル。AdWords公認プロフェッショナル。テクニカルエンジニアNW。
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