電話応対でCS向上コラム
第29回 想像力を鍛える-尾道国際ホテルグループ-記事ID:C10011
海と山に囲まれた、情緒ある町並と歴史ある寺院、映画の舞台としても有名な広島県尾道市に、私共、尾道国際ホテルグループはございます。ホテルには、観光・ビジネス・サイクリングなど、さまざまな目的のお客さまがお見えになります。
「こんなに利用しているのに!」「なぜできない!」
ホテルに入社して、お客さまの応対や仕事にも慣れ、日々の業務をこなせるようになった頃、時々ご利用くださるお客さまの中に、とてもリクエストの多い方がいらっしゃいました。その方は会社の社長さんで、毎回、人数・泊数・食事などの度重なる変更に加え、威圧的な物言いをなさる本当に苦手なお客さまでした。どう手を尽くしても、ご希望にお応えできない時は、お詫びをするのですが「なぜ、できない!」「こんなに利用しているのに!」などと責められ、正直、『また面倒なあのお客さまが来た!』と思いながら、応対をしていました。
ところが、その方は、いつの頃からか、話し方が柔らかくなり、ご利用の際には、ご指名くださるようになっていました。時には手土産まで用意し、お越しくださるのです。
怒られたくない!
なぜ、このお客さまの態度や応対がこんなにも変わったのでしょう。最初の頃は私自身、とにかく『怒られたくない!』の一心で応対していました。例えば、ご予約の際には必ず前後日程の状況も確認し、混雑している時は、変更があれば早めにお伝えいただくようお願いしました。また、お客さまにプラスの情報を伝え、何かあれば、すぐご連絡くださるようになりました。やがてご希望に添えない時も、以前ほど声を荒げる事なく、『そうだよね、仕方ないよね』と言ってくださるなど、徐々に優しくなってきたのです。
部下や仕事がらみのお客さまを伴ってのご宿泊に、神経を遣うのは当然です。
事前に不都合になりそうな情報をお伝えしておけば、仕事先での段取りや心づもりも違ってくることでしょう。『怒られたくない』と思いながら行っていたことが、お客さまにとってはとても大事なことで、安心感、信頼感につながっていったのだと、随分経ってから気がつきました。
想像力を働かせる
『想像力を働かせる』これは、ある研修で講師に言われたことです。
急いでいる方、お子さま連れの方、ご年配の方、雨の日、寒い日、何を必要として、何が要らないのか、これからどのように行動するのかなど人それぞれです。想像することで、できることはたくさんあります。時にはお節介になることもありますが、どんな場面でも想像力を働かせ、相手に寄り添った応対ができるように、常に訓練をする。そうするとさらに想像の幅も広がってきます。
とはいえ、いまだに苦手だと感じるお客さまはいらっしゃいます。また、お叱りを受けることもあります。私自身、まだまだ想像力を鍛える必要がありそうです。
岸上 美紀氏
尾道国際ホテルグループ接遇課長。尾道第一ホテルサブマネージャー。第52回電話応対コンクール全国大会出場。電話応対技能検定指導者級資格保持者。もしもし検定企業内導入実施機関の社内講師として指導にあたるほか、社内外のイベント司会なども行う。