電話応対でCS向上コラム
第22回 会社の代表であるという意識-ヤマト運輸株式会社-「寿司屋の職人」に
“宅急便”の産みの親である弊社2代目社長は宅急便を始めた頃、自社ドライバーに対し「寿司屋の職人になれ」と説いたと言います。もちろん、本当の寿司職人になれというわけではありません。ドライバーだからといって運転だけすればいいのではなく、寿司職人がお客さまをもてなすために仕入から支度、接客、握り、見送りと、責任を持って仕事するように、どんなお客さまにも責任を持って対応しましょうということです。つまり、自分は会社の代表であるという意識を持って仕事をしましょうということを伝えたかったのです。この考えは「全員経営」という言葉で今も大切に受け継がれています。
「申し訳ございません」が伝わらない
私がオペレーターとして仕事をしていた時、ご立腹されたお客さまからのお電話を受けたことがありました。一生懸命お詫びをし、何とか早く担当の宅急便センターに引き継ごうとしたのです。しかし、お客さまは「お前は申し訳ございませんしか言うことがないのか!」と、怒りの矛先が自分に向いてしまったのです。お叱りを受けた理由は、当時の私には「会社の代表である」という意識が欠けていたのです。言葉では「申し訳ございません」と言いながらも、早く担当へ引き継ごうとしていた私の気持ちをお客さまは見抜いていたのです。お客さまにとって、電話に出たオペレーターがヤマト運輸そのものという認識にもかかわらず、お客さまのために自分には何ができるか考えもせず、どこか他人事な応対をしていたのです。寿司職人になれていないと気づいて猛省しました。
お客さまにもオペレーターにも満足を
最近CIS(顧客感動満足)という言葉を耳にするようになりました。弊社もCIS実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。私は会社の代表として電話に出ることがCISの第一歩だと考え、研修を担当しています。
会社の代表であるという意識で仕事をすることはオペレーターにとって、時にプレッシャーになることがあります。でも、責任を持って応対した先には、CIS実現だけでなく「あなたに応対してもらえて良かったわ」というお客さまからの最高の賛辞が待っていることも、オペレーターに経験してほしい。そのために、受身の研修ではなく、自分で考え、自分で答えを導けるような参加者主体の研修を心がけています。また、昨年から実施機関として、電話応対技能検定(もしもし検定)3級の指導をしています。ベテランオペレーターからも気づきや学ぶことが多いと好評で、これをきっかけに応対品質をもっと上げようと、社内のモチベーションが上がっていると感じています。もしもし検定を今後も展開しながら、お客さまにとっても、働くオペレーターにとっても、満足度の高いコールセンターを目指してまいります。

永野 亜美氏
ヤマト運輸株式会社 厚木コールセンター所属。第51 回電話応対コンクール全国大会出場。電話応対技能検定指導者級資格23 期生。現在、電話応対コンクールの指導、オペレーター・新入社員の研修を担当。楽しく、主体的に学べる研修を心がけ電話応対品質の向上に取り組んでいる。