電話応対でCS向上コラム

第16回 「迅速」「正確」「丁寧」の優先順位-NTTコム エンジニアリング株式会社-

テクニカルコールセンターは「正確さが命」か?

 私が所属しているのは、ネットワークやクラウドなど法人向けICTサービスの運用・保守・故障受付をしているセンターです。技術的に高度なお問い合わせも多く、「ミリ秒」単位のお話をすることもあります。そのため、従業員は通常、情報の「正確さ」には特に注意して対応しており、しっかりとした裏付けが取れない時は「確認・調査を続けております」といった回答を基本としています。

 ただ、その姿勢が「曖昧な情報発信はいかなる場合も避けねばならない」という思い込みも生んでいました。というのも、お客さまにこうした固定観念を打ち砕かれる出来事があったのです。

「正確な時刻とかはどうでもいい」

 以前、私が業務で直接訪問したある企業さまから、このようなお話をいただきました。

 「故障の回復見込みについて、正確に何時何分に直るかとか、そんなことはどうでもいいので『ざっくり』とした回復時期をいち早く教えてもらいたい」

 この言葉に私は驚き、「『ざっくり』とした情報などお客さまに言えるはずもない」と少し反発感さえ覚えました。

 しかし、お客さまの話をよくお聴きすると「『午前中は無理そう』とか『今日中には直らなそう』ということを、すぐに、ざっくり教えてくれれば、こちらはシステムや人員をバックアップ側にすぐ切り替える。しかし『調査中・確認中』で引っ張られるとその判断ができず、業務停止時間ばかりが延びてしまう」ということでした。

 この言葉を聞いて愕然としました。「曖昧な情報ではご迷惑をかける」という我々の思い込みが、むしろお客さまのご迷惑を大きくしていたのです!

「迅速」「正確」「丁寧」はニーズ次第

 このお客さまと出会って、私は深く学びました。一口に「迅速」「正確」「丁寧」な対応といっても、お客さまのニーズに沿った優先順位が必ずあるということ。そして、その優先順位を間違った対応をすれば、むしろCSは下がるということを。

 今では電話応対技能検定(もしもし検定)の講習などでは、次のように言っています。

 「怪我や急病で救急車を呼んで、やっと到着した隊員に、『大変恐縮ではございますが、お身体に手を触れてもよろしいでしょうか?』などと『丁寧な配慮の言葉がけ』をして欲しいですか?」と。そして、「迅速」「正確」「丁寧」の優先順位を間違わないためには、お客さまニーズを正確に理解する必要があること。そして、ニーズを正確に理解するためには、やはりお客さまの話をしっかりと「聴き取り・訊き出す」応対をする必要があることを、いつも皆で話し合っています。

次回の講師は、株式会社コンシェルジュの植村 知佐子さんです。従業員個々のスキルアップのみならずコールセンターのトップとして、人財戦略の観点からも『もしもし検定』を推進されています。経営層の目線も併せ持った指導者です

中澤 響氏

NTT コム エンジニアリング株式会社 東京オペレーションセンター(TOC)所属。指導者級第20期生。2017年より社内向けに「もしもし検定」3級~1級を指導中。応対スキル・技術スキルともに高いオペレーターの育成が目標。

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