企業ICT導入事例

-株式会社リョーワ-
事業環境の変化に合わせAIで新規ビジネスを創出

記事ID:D20021

長年続けてきた事業が時流により縮小し、思い切った事業の変革を図る必要性を感じている企業は多いはずです。今回は、そういった事業環境の中、従来の事業を継続しながらも、AIを活用して新事業を立ち上げ、その取り組みで「DXセレクション2022」準グランプリを受賞した、福岡県北九州市の株式会社リョーワの代表取締役、田中 裕弓氏に話をうかがいました。

事業環境の悪化が予想され事業変革に着手

代表取締役 田中 裕弓氏

 株式会社リョーワは1968年の創業以来、油圧に特化したビジネスを手がけてきました。油圧は、建設機械や各種車両、製鉄機械や工作機械、産業機械などの駆動源として使われています。
 油圧には、精密で円滑な動きが可能、振動が少ない、高温など労働環境の悪い場所でも使用できるといった長所がある一方、電気消費量が大きい、油漏れの危険性がある、騒音が大きいといった短所があります。さらに、油圧装置に詳しい人材不足などを背景に、近年は半導体や自動車の分野などにおいて電動に置き換わるケースが増えています。同社代表取締役の田中 裕弓氏は、そうした傾向を実感した出来事を振り返ります。

 「駆動源が油圧から電気へと変わる機械が増えてきていることに対する危機感を最初に感じたのは、1997年に当時の主力事業であった半導体製造装置のメンテナンスで取引のあった、大手電機メーカーの方の『将来油圧は無くなる』という言葉でした」(田中氏)

 このような状況の中、田中氏は2010年ごろに「脱油圧化による油圧装置の減少」と「人口減少による日本市場の縮小」を対応すべき課題と定め、事業変革を本格的に開始します。

AI外観検査システムによる新規ビジネスをスタート

 事業変革における大きな取り組みの一つが、「単なる油圧装置の修理屋」からの脱却です。その発端となる、新規事業開拓のきっかけが2011年にありました。

 「当社が中途採用した社員に、製品・部品の表面を検査する外観検査装置の技術を有している者がいたため、ある会社から外観検査を自動化する装置を製作できないかという相談があったのです。私自身、電子部品メーカー時代に検査業務で苦労した経験があったため、その装置のニーズの高さを実感し、すぐに事業化することを考えました」(田中氏)

 外観検査は基本的にメーカーが製作するすべての製品・部品に対して行われています。検査は目視や機械で行われ、「一つひとつ正常な部品・製品(OK)」と、「傷などの不具合のある部品・製品(NG)」に選別されます。この検査を目視で大量に行う場合は、担当者の目の負担が過大になり、体調不良や注意不足によって精度にバラつきが出てしまう懸念があります。そこで、同社は目視に代わりAIを活用して部品・製品の選別を自動で行う、外観検査システムを開発しました。これが現在はAI事業として確立し、同社の事業を担うもう一つの柱となっています。

 同社の外観検査システムは、自動車メーカーや大手部品メーカーとの取引を実現しています。さらに、日系製造業が数多く進出しているタイに販路を拡大するなど、事業の拡大を目指しています。

 「タイは日本同様、少子高齢化による労働人口不足が問題となっていましたので、外観検査を自動化するニーズがあると考えて進出を目指しました。その流れで、タイの大学内に開発拠点を設け、外観検査システムのプログラム開発を行っています」(田中氏)

 さらに、同社はスマートフォンやスマートグラスでの検査が可能な独自のクラウドAI外観検査システム(写真①参照)を開発し、事業化しています。

  • 写真①:画像処理データをスマートグラスに実装したAI画像システム。検査する対象物を手に取り、スマートグラスで見ると、部品ごとにOK/NGが表示される

 「本来、AIを活用した外観検査は開発費用が1,000万円ほどかかります。それでは、大手企業はともかく、中小企業が導入することは困難です。そこで、低価格で提供できるサブスクリプションサービスを立ち上げました」(田中氏)

ドイツのインダストリー4.0を参考に経営戦略を策定

写真②:産官学連携で開発した学校向けの自動検温システム

 同社の変革は、田中氏が2015年から北九州市の大学院で学んだ「インダストリー4.0」を参考に行われました。「インダストリー4.0」とは、ドイツ政府が2011年に発表した産業政策であり、製造業においてICTを取り入れ改革を目指すというもので、「第4次産業革命」と訳されます。

 「ベルリンの壁崩壊後に経済が低迷したドイツは、かつて『欧州の病人』と言われていましたが、2013年頃は『欧州の優等生』と改称されるほどに回復しました。そのカギを握っていたのが中小企業でしたので、インダストリー4.0を含めて変革の参考にしようと考えました」(田中氏)

 インダストリー4.0は、人間や機械、そのほか企業資源が互いに連携することで製品の製造や納品に関する情報を共有し、製造プロセスを円滑にすること、さらに新たなビジネスモデルの構築をもたらすことなどを主な目的としています。

 「製造プロセスの円滑化については、見積・販売・仕入れ・財務情報などのデータ連携を図る新業務システムを導入しました。新たなビジネスモデルとしては、モノ(装置)の販売からコト(システム)の販売などが挙げられます。それらを実現するために、自社主義の壁を取り払ってオープン・イノベーションという考えに大きくシフトしました」(田中氏)

 田中氏は、インダストリー4.0の考えを参考に、産官学と連携する「オープン・イノベーション」や、海外や社外の人材を積極的に採用する「ダイバーシティ経営」、海外人材やインターンシップ生を育てる「人材育成」などを経営戦略に掲げています。その戦略に合わせ、コロナ禍には北九州市や大学などと連携し、AIを活用した公共施設の3密を回避するシステムや自動検温システム(写真②参照)の開発に取り組みました。

 産官学と連携し、国内外に門戸を開放することは、同社の持つアイデアや技術などの知的財産が社外に流出するリスクの増大を招くでしょう。その対策として同社は、社員はもとより、インターンシップ生に対しても秘密保持誓約書を交わしています。さらに、中堅・中小・ベンチャー企業の知的財産活用をサポートする公的機関である「INPIT(インピット)知財総合支援窓口」と連携し、機密情報の管理や、社内データへのアクセスを管理する方法などをサポートしていただいているとのことです。

 「当社は従業員数24名の中小企業のため、新規ビジネスなどでイノベーションを起こすには、社外の力は必須です。そのために産官学との連携を強化しており、顧問には大手企業の元取締役や大学教授が名を連ね、外観検査システム部門の事業部長も社外の人材です」(田中氏)

 同社は、社外のさまざまな人材と連携することで新規ビジネスを立ち上げました。このような考え方は、人材不足に悩む中小企業にとって、大いに参考になるのではないでしょうか。

DXセレクション
経済産業省が選定・公表する中堅・中小企業などのモデルケースとなるようなDX優良事例。
会社名 株式会社リョーワ
創業 1968年(昭和43年)5月
本社所在地 福岡県北九州市小倉北区浅野3-8-1 AIMビル7F
代表取締役 田中 裕弓
資本金 2,000万円
事業内容 油圧機器販売、油圧メンテナンス、各種配管工事、外観検査システムの開発
URL https://e-ryowa.com/
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