企業ICT導入事例
-神戸市役所-「検索ボックス」中心のデザインにリニューアル。目的の情報へのアクセス導線を大きく改善
膨大な情報量を抱えるウェブサイトでは、利用者が必要な情報を見つけ出すことが困難で、豊富な情報が“持ち腐れ”になってしまうケースもあります。神戸市役所はウェブサイトのリニューアルを機にトップページを大胆に変更、「検索」を前面に押し出し使いやすさを大きく向上しました。
【導入の狙い】検索により必要な情報にダイレクトにたどり着く導線を用意し、利用者の使い勝手を向上
【導入の効果】キーワード検索でウェブサイト内を移動する利用パターンが増加。利用者からも高評価を獲得
「多すぎる情報量」が、かえって利用者の使いづらさに
▲神戸市 市長室
広報戦略部 広報課
中務 雅史氏
人口約153万人(2018年10月現在)の兵庫県神戸市は、かつて大規模な地方自治体のウェブサイトに共通する悩みを抱えていました。
「地方自治体のウェブサイトは、住む人、働く人、そして関連する企業や団体など、利用者のさまざまなニーズに応えるため、膨大な情報を網羅的に掲載しなくてはなりません。しかし情報量が多くなればなるほど、ウェブサイトのページ数も多くなります。私たち神戸市のウェブサイトもかつてページ数が11万ページ近くにも上っていました」(中務氏)
利用者がこうした膨大なページから必要な情報を探し出す導線設計は、トップページから大カテゴリ、中カテゴリというリンクをたどる構造が一般的です。しかし中務氏は、それだけでは情報の整理が間に合わなかったと振り返ります。
「最大の課題は『情報が見つけづらい』ということでした。神戸市では、私たち広報課がウェブサイトの構造を考え、担当の各部署が個別のページを作ります。この『見つけづらさ』の解消には、サイト内の導線の見直しが必要でした。そうした考えをまとめ、リニューアルの目的を定義した上で、2015年7月にコンペを行いました」(中務氏)
コンペにより「情報の探しやすさ」と「デザイン」を重視した提案を採択
リニューアル前のウェブサイトは、アクセスするとまずカバーページが表示され、その次に多数のリンクが用意された実質的なトップページが現れるという構成でした。
「コンペはこの2ページの新たな構成案を募集する形にしました。重視したのはまず情報の探しやすさです。これだけ大規模なサイトでは、リンクをクリックするだけの導線では限界があります。実は従来のサイトにも検索ボックスを用意しており、アクセスログからその利用率が非常に多いことが分かっていました。ですので、検索機能をより利用しやすい形にする必要性を感じていました。次に求めたのは、神戸市らしい大胆で突き抜けたデザインです。コンペの結果、ペタビット株式会社の案を選択し、同年7月に契約いたしました」(中務氏)
ペタビット株式会社の提案は、トップページは検索ボックスと神戸市らしい写真や動画を配置するデザインで、利用者は検索ボックスにキーワードを入力するか、リンクをクリックすれば従来の実質的なトップページに移動し、求める情報にアクセスできるというものでした。
「こうした大胆な変更には批判もあるだろうと思っていました。しかし、同年10月にベータ版を公開してアンケートを実施したところ、大半の方から肯定的な評価をいただきました。また地方公共団体に求められる障がいのある方、ご高齢の方の使いやすさについても、そうした分野で実績のあるNPO団体にテストを依頼し、問題ないという回答をもらいました」(中務氏)
迷うことなく情報にたどりつける利用者が増加。「使いやすい」という高い評価も
こうしてリニューアルされた神戸市ウェブサイトは、2016年2月に公開されました。
「トップページの検索ボックスの下には、よく検索されるキーワードを5つ表示し、利便性に配慮しています。また、ここに市役所が特に訴えたいキーワードを配置することも可能です。さらに検索の精度を向上させるため、Googleカスタム検索も導入しました。例えば、単純な検索でイベント情報を調べると、直近のものではなく、過去のページが上位に表示されることもあります。しかしGoogleカスタム検索では、特定のキーワードで上位に表示されるページを指定できるため、無駄や回り道なく求める情報にアクセスすることができます。あとはリニューアルに合わせ、すでに不要と思われるページの削減も行いました」(中務氏)
こうしたリニューアルの結果、使いやすさ、そして実際の利用状況はどのように変化したのでしょうか。
「リニューアル直後に行ったアンケートで、『情報をとても探しやすい』『まあまあ探しやすい』と答えた人の合計は約85%、『目的の情報が見つかった』という人は約91%と、高い評価をいただきました。また、アクセス状況を確認したところ、リニューアル前と比べて、利用者一人あたりの閲覧数が少なくなっており、ウェブサイト内をあちこち迷わず、目的のページにたどり着いていると推測される行動が増えたことが分かりました。利用者が検索を積極的に活用し、目的の情報にたどり着きやすくなったことから、検索を軸にしたリニューアルは正しかったと考えています」(中務氏)
コンセプトはほかの自治体にも波及。2019年はさらなるリニューアルも予定
神戸市が先鞭をつけたこうした先進的な取り組みは、日本のほかの地方自治体にも広がりを見せています。
「問い合わせも多く寄せられ、神戸市をモデルにしたと思われるリニューアルを行ったほかの自治体さまも、すでに現れています」(中務氏)
最後に、今後の展望についてうかがいました。
「このリニューアルからまだ2年ほどですが、2019年の秋には全面リニューアルし、CMS※を強化するとともに、すでにアクセス数で全体の6割を占めているスマートフォンへの対応をより一層進めていきます。また、ページの質についても、古くなった情報を削除してさらにスリム化するとともに、実際にページを制作する市役所内各部署への研修を通じ、より分かりやすさを追求していく予定です」(中務氏)
※CMS(Contents Management System):ウェブブラウザなどを使ってウェブサイトを管理・更新できるシステム。
組織名 | 神戸市役所 |
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所在地 | 兵庫県神戸市中央区加納町6-5-1 |
市長 | 久元 喜造 |
URL | http://www.city.kobe.lg.jp/ |
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