企業ICT導入事例

-大田原商工会議所-
適材適所のクラウドサービス選択で、マイナンバー記載書類の低コストかつ安全な利用と保管を実現

マイナンバーの保管場所としてクラウドを検討する事業者が増えています。しかし、すべてのクラウドがマイナンバーを安全に保管し、ストレスなく利用できるわけではありません。栃木県大田原市の大田原商工会議所は、複数の選択肢を検討し、最終的に事業所内にデータがあるかのように取り扱うことのできるソリューションを選択しました。

【導入の狙い】マイナンバーの含まれるWordやExcelファイルを安全に保管し、利用したい。
【導入の効果】アクセスログが記録できるクラウドサービスを採用、各部署で効率的な利用を実現。

震災を受け利用を開始したクラウドサービスに新たな課題が

  • ▲専務理事 東郷 隆浩氏

    2011年3月に発生した東日本大震災は、大きな地震と未曾有の津波で、全国各地に大きな被害をもたらしました。

    「大田原市は震度6強を記録し、当商工会議所のビルも大きな損傷を受けたことで、移転を余儀なくされました。業務に使っていたサーバーも同時に移設しましたが、その作業に苦労したこと、また無停電装置があっても万一の災害時にサーバーへの電源供給に不安を感じたことから、設備更新のタイミングで事業所内でのサーバー利用を止め、ファイルサーバー機能を持つクラウドサービスの利用へと転換いたしました」(東郷氏)

  • ▲中小企業相談所 指導課
    経営指導員 植木 孝幸氏

    「しかし、その後のマイナンバー制度スタートにより、さらなるシステムの更新が必要となりました。マイナンバーを含むファイルは、一般の業務ファイルのような利用者の制限による管理では不十分で、“誰が・いつ・どこからアクセスしたか”のログをきちんと保存する仕組みが必要です。しかし、当時利用中のクラウドサービスには、そうした詳細なアクセスログを記録する仕組みが搭載されていなかったのです」(植木氏)

模索する中、要件に合致するクラウドサービスを発見

同会議所は、当時利用中のクラウドサービス提供事業者に、ログの記録に対応できるかどうか問い合わせました。しかし、返ってきた答えは期待とは異なりました。

▲中小企業相談所 所長
経営指導員 清水 信行氏

「対応するには、そうしたプログラムをゼロから開発する必要があるというのです。そしてその開発費用の見積りは、とても当会議所の財政規模で負担できるものではありませんでした」(清水氏)

「こうした経緯を受け、マイナンバー管理ソフトの利用も検討しました。しかし、そうしたソフトの多くは、主に会社で働く従業員のマイナンバーの『保管』が目的で、当会議所のように共済、労働保険などの各部署が、会員である事業所さまからお預かりするマイナンバーが記載されたWordやExcelのファイルを利用し、かつ安全に保管するという用途には不向きでした」(植木氏)

こうしていったんは暗礁に乗り上げた同会議所のマイナンバー利用に向けたシステム更新に、新たな展開が訪れます。

「NTT東日本のサービス『あずけ~るPRO』を利用することにより、こちらの求めていた“誰が・いつ・どこからアクセスしたか”というログを記録する仕組みが低価格で利用可能で、かつ社内にあるファイルサーバーを操作するのと同じ感覚でWordやExcelのファイルを読み書きできると分かったのです。詳しい機能や料金についてさらに確認したのち、マイナンバー関連のファイルを保管、利用するサーバーとしての採用を決定しました」(清水氏)

詳細な利用環境を検討しシステムの全面的な移行を決断

ただ採用決定後の調査により、導入には若干の軌道修正を求められることとなります。

「当初は従来のクラウドを一般のファイル向けサーバーとして継続利用する予定でした。しかし『あずけ~るPRO』ではIPv6※1が必要と分かり、IPv4※1で利用していた従来のクラウドも、IPv6に対応したNTT東日本のクラウドサービス『クラウドゲートウェイ サーバホスティング』へスイッチすることとしたのです」(植木氏)

新たなクラウドサービスの利用については、旧システムからの移行に細心の注意を払ったと、植木氏は語ります。

「システム移行の負担と労力は、かつての事業所内のサーバーからクラウドにデータを移行する際に経験していました。今回は“ファイルの置き場所”だけでなく、クラウドにアクセスするV P N※2や電話までを含んだ大がかりなものとなるため、その煩雑さは前回以上が予測されました。しかし、N T T東日本が現状のシステム構成と移行後のイメージをそれぞれ図に描いて解説してくれたこと、また移行の流れについても、従来のクラウドから 新規のクラウドに一気に切り替えるやり方と一定の併設期間を設けるやり方の二つから、こちらが分かりやすいと思ったものを選択できたことで、予想以上にスムーズに終えることができたと思います」(植木氏)

マイナンバー管理の手間から解放され、業務も効率化

このシステム更新は、大田原商工会議所の業務を大きく効率化することとなります。

「マイナンバーが含まれるファイルを安全に利用、保管できるようになり、事務作業の効率が格段に上がりました。必要に応じ各事業所さまに問い合わせるやり方では、返答に時間を要したり、また対象の従業員がすでに退職していてマイナンバーが分からないといったケースも少なくありませんでしたから」(清水氏)

最後に、今後の「あずけ~るPRO」及びクラウドサービスの利用について、展望をうかがいました。

「今は機密性の低いファイルについては事業所内のNAS※3も併用している段階ですが、将来的にはすべてクラウドに切り替え、堅牢性を高めたいと思っています。そうすればファイル管理の手間も削減できるはずです」(清水氏)

「マイナンバー管理に悩んでいる商工会議所は少なくないと思います。研修会などで横のつながりができた商工会議所には、こちらの事例をお伝えし、ぜひ参考にしていただきたいと思います」(植木氏)

※1 IPv6/IPv4:インターネットで通信するための標準プロトコル(ルール)のこと。IPv6はIPv4よりも新しいプロトコルで、より多くのインターネット機器が利用できるほか、通信速度でも優位となる。
※2 VPN:バーチャル・プライベート・ネットワークの略。インターネットを利用しながらも、事業所とクラウド、事業所間などを専用の回線のように安全に通信できる仕組み。
※3 NAS:ネットワーク・アタッチド・ストレージの略。ネットワークに接続することで、複数のパソコンから共有のHDDとして利用できる。

組織名 大田原商工会議所
設立 1947年(昭和22年)
所在地 栃木県大田原市山の手1-1-1 皇漢堂ビル1F
会頭 玉木 茂
事業内容 地域内における商工業の総合的な発展を図るため、商工業者の意見を集約し、政策提言、経営支援、地域振興など、さまざまな活動を行っている。
URL http://www.ohtawaracci.or.jp/
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