企業ICT導入事例
-株式会社スーパーワークス-建築図面を3D化するインターネットサービスで中小工務店と施主の悩みを解決
理想的な家づくりに必要なこととは、施主の要望と設計者の提案と工務店の実務がしっかりかみ合うこと。そのコミュニケーションに役立つのが「立体モデル」ですが、従来の方法では費用も手間もかかります。そこで開発されたのが、インターネットを介して誰でも、どこからでも「立体モデル」が見られる株式会社スーパーワークスのアウトソーシングサービスです。このサービスは業界初といわれ、建築の世界に新風を吹き込んでいます。
【導入の狙い】施主、設計者、工務店が悩んでいた「イメージを伝える困難」を解消。
【導入の効果】完成イメージを効率よく確認し合って満足度の高い建築が実現できる。
完成のイメージを伝える難しさは、家を建てる際の大きな壁だった
▲代表取締役(一級建築士)・岩城 裕介氏
岡山市内の建築設計事務所で父と一緒に施設や住宅の建築設計を行ってきた岩城 裕介氏は、2007年頃から客先を回りながらいつも同じ問題に直面していました。それは「頭の中の完成イメージを、施主に伝えることの難しさ」であり、施主もまた「変更などの要望をどう伝えたら良いのか分からなくて困っている」ということです。建物をいろいろな角度から寄ったり引いたりして検討するプロセスが不可欠です。多くの場合3DCAD※ソフトなどを使って何通りもパース(完成イメージ図)を出力し、打ち合わせを繰り返します。しかしこの方法では、費用も時間もかかってひどく効率が悪くなります。施工する工務店も同じ悩みを抱えており、時には施主も施工店も面倒をきらって、曖昧な合意のまま工事を進め、結果として十分に満足できない建物になってしまうケースが少なくないのです。
「私たち設計者や工務店と違って、施主が設計図面や建築材料のデータだけではイメージできないのは当然です。3DCADを導入し習得するよりも、もっと簡単かつ低コストに、この問題を解決する方法はないかとずっと考えていました」(岩城氏)
画期的な立体モデル作成サービスが住宅建築プレゼンの現状を変革
思案してきた課題解決に光が見えたのは2014年、地元TV局が自社サイト内に開設した「インターネットで見られる住宅展示場プロジェクト」に同社が参加したことが契機でした。いくつもの住宅会社が提案するデザインを、ウェブ環境の中で自在に見て回れるようにするには、データ量に制約があります。イメージを正確に伝えつつ、軽快に動くようにするには、品質とパフォーマンスのほど良いバランスを考えなければなりませんでした。
岩城氏は、システム会社の専門家たちとほぼ1年がかりで完成させました。そしてこの時のノウハウを基に起業し、プレゼンサービス「ネットモケイ」として売り出すことにしました。建築物の立体モデルをインターネット上で見られるようにする、3Dモデリングのアウトソーシングのサービスです。
このサービスにすぐに反応したのは住宅設計事務所や小規模の工務店でした。アクセスした画面で3Dモデルを動かしながら施主に見せて打ち合わせができるので、これまでパース出力(多くは外注)にかかっていた時間と費用を大幅に削減しながらも、部屋の広さなどを表現できると評価してくれたのです。また、スマートフォンやタブレットでも使えるので、違う場所にいる関係者たちともイメージを共有できることも好評でした。
「手軽に安く使える3DCADのインターネットサービスには、確かな需要があると確信しました」(岩城氏)
本腰を入れて営業を強化し、「潜在ニーズを掘り起こしたい」
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▲施主さまにも分かりやすいと評判の「ネットモケイ」
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▲エムアンドシーシステム株式会社 営業・室山 隆利氏
岩城氏が始めた新しい事業の次の課題は売り込みの工夫です。
「潜在的に多くのニーズがあることは把握していましたが、中小工務店の多くはICT全般の知識や技術に詳しいとは言えず、難しいサービスは受け入れられません。しかし既存の出力サービスとの違いを分かってほしい。ですから簡便に使える機能に絞ることと、説明する場合も3DCADやVR(仮想現実)などの用語を使わないように配慮しました」(岩城氏)
また、オプションのサービスとして、入手した設計データから3Dプリンターを使って石膏に着色したミニチュア模型を作ることができます。家具も置かれた精巧な模型なので細部の打ち合わせに役立ちます。ガラス製のクリスタル模型も作ることができ、竣工の記念品として喜ばれています。
地域のビジネス交流会で「ネットモケイ」を知った倉敷市の「エムアンドシーシステム株式会社」が、提携を申し入れてくれたことも事業にはずみをつけました。提携先の担当者はこう語ります。
「パソコンが使えないという小さな工務店の方が、スマートフォンで使えると喜んでくれました。施主との打ち合わせもスムーズになったそうです。当社はシステムの導入から開発、要員教育まで行う会社です。その営業も兼ねて市場を回り、岩城さんと情報共有しながら、販促方法や機能の改善を手伝っています。協業しながら事業を育てていきたいのです」(室山氏)
地方の設計事務所や工務店でも全国市場相手に展開できる可能性
岩城氏は、ICTは事業に必須のツールであり、クラウド経由で利用できるサービスはまだまだ求められると考えています。幸いにしてその成果は、地域の複数のビジネスコンテストで優秀賞を、また「おかやまIT経営力大賞」のチャレンジ特別賞を受賞。首都圏での各種展示会にも出て高い評価を得ており、建築関係者だけでなく、全国各地でがんばる中小企業に「挑戦しよう」という勇気を与えています。
「このサービスは、住宅建築プレゼンのありかたをがらりと変えると確信しており、もっと市場開拓したいと思います。モバイルやクラウドなど、時間や場所や設備に制約を受けにくいICT環境が急速に普及しています。それは地方の中小工務店にも、当社にも、そしてデータ入力を手伝ってくれる仲間にもプラスです。他社に先行しているサービスとはいえ、追いつかれないようにチャレンジを続けなくてはなりません」(岩城氏)
※3DCAD:3-dimensional computer aided designの略。コンピューターを使って工業製品や建築物を立体的に表示・編集する作図システム。
会社名 | 株式会社スーパーワークス |
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設立 | 2015年(平成27年)12月 |
所在地 | 岡山県岡山市南区新保1142-1 |
代表取締役 | 岩城 裕介 |
事業内容 | 建築業界向けICTサービスの開発及び提供 |
URL | http://superworks-inc.com/ |
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