企業ICT導入事例

-葛城市-
住民票発行や買い物、健康診断もできるICカード。ICTで新しい住民生活支援

奈良県葛城市では、高齢者サービスにICカードを持ってサービス拠点に出向く方式を採用。産官学の連携と市民の協力で、コストをかけず、持続可能なサービスを目指して課題に取り組んでいます。

高齢者の暮らしや健康に伴う不安をどう解消するかという課題に直面

▲葛城市役所 企画部 部長・米井 英規氏

奈良県葛城市は、県の北西部に位置し大阪府と境を接する人口約3万7,000人の街。2004年に新庄町と當麻町が合併して誕生しました。大阪市や奈良県大和高田市のベッドタウンとして人口は微増しているものの、合併当初17%だった高齢者比率が25%に上昇。特に山間部での増加が顕著になり、住民からは「買い物が困難」「健康に不安がある」という声が出てきました。葛城市役所企画部の米井氏が、同市の取り組みを振り返ります。

「当初は、職員がお宅を訪問する事業を進めていたのですが、コストがかかり過ぎて継続が困難になりました。何とかコストをかけずに、暮らしと健康を持続的にサポートする事業ができないかと模索しました。行政だけでなく市民や大学、民間企業の知恵と力を借りること、また時代の流れを考えてICTを活用することが重要だと考えて、まず2012年に、ICTを駆使した地域の活性化の提案を一般公募し、民間企業9社と共同で『葛城クリエーション研究会』を設立することにしました。そこで出てきたのがICカードの活用という案でした。研究会で練り上げた事業プランは、2013年春、総務省のICT街づくり推進事業に採択され、産官学連携による『新時代葛城クリエーション推進事業』が発足したのです」(米井氏)

ICカードによるさまざまなサービスで顧客満足度を高める

▲「市民おたがいさまサポートハウス」では血圧測定などのほか行政サービスも受けられる

事業には三つの柱がありました。まずモニターになってもらう住民に配布する個人認証ICカード(FeliCa※規格)。ここに個人情報や健康データ、利用したサービス履歴が記録されます。個人情報は格納されずクラウド上で照合することで安全性を高めています。次にサービスの拠点となる「市民おたがいさまサポートハウス」を同市の福祉総合施設「ゆうあいステーション」など3カ所に設置。そして最後は市民コンシェルジュ(ボランティアなど)の活用で、彼らはサポートハウスにおいて利用者の手助けとインターネットでの情報発信を行います。

米井氏にICカードを持つことで何が可能か聞きました。

「最寄りのサポートハウスに行くことで、住民票や戸籍謄本の取り寄せなどの行政サービスが受けられます。また、そこにあるタブレット端末から買い物ができ、提携するスーパーが配達します。あるいは、体重・血圧などの測定器で定期的な健康管理ができ、その測定結果を基にした食事改善の健康レシピももらえます。これには奈良女子大や奈良県立医大などの協力を得ています。国が進めているマイナンバー制度とカードの活用を先取りし、より使いやすいサービスを目指しました」(米井氏)

市民コンシェルジュの活動としてユニークなのがインターネット活用の情報発信です。「かつらぎてれび」の名前で、市内2カ所に設置されたメディアセンターから、インターネット放送、ポータルサイト、SNSなどのさまざまなメディアを通じて、身近な生活情報番組を流すほか、災害時には行政と連携した防災情報を提供します。

「出かけていく」から「来てもらう」へ 高齢者の外出を促すことの効果

▲サービス拠点の一つ 葛城市福祉総合施設「ゆうあいステーション」

米井氏にサービス拠点の一つ「ゆうあいステーション」を案内していただきました。ここにはサテライト市役所のほか、温泉やプール、食堂、卓球室、カラオケルーム、メディアセンターそしてICカードによる買い物支援や健康支援の受付窓口も設けられており、老若男女の多くの市民が利用し、市内循環のコミュニティバスも頻繁に往復しています。

「高齢者の方もたくさん来ています。従来のお宅に『出かけていく』方式を転換して『来ていただく』ようにしたことで、高齢者の外出が促されました。高齢者はとかく自宅に引きこもりがちになるのですが、出かけることで買い物もでき、人々とも交流し、健康も気づかうようになったなどの効果が出てきました。巡回に要した人件費も軽減されました」(米井氏)

サービスを固定させずに改良を重ね、よりフレキシブルな進化を目指す

▲「市民サービスカー」では健康相談も可能

2013年の開始から3年目の2016年、同市の「クリエーション事業」は、また新しい姿になりました。前述した市内循環のコミュニティバスは、民間と市営のバス路線を統合して2月に誕生。地区ごとの公民館やスーパー、病院などを回っています。また8月には「市民サービスカー」の試験運転も開始されました。これはパソコンやプリンター、スピーカー、モニター、LEDライトなどを搭載した車に、市職員と保健師が同乗して、市内各集落のコミュニティセンターを回るものです。そして現在、3カ所のサポートハウスで行っているような住民票発行や買い物支援、健康支援、さらにはミニイベントもできるようになっています。また、試験期間中は、生協と提携して食品を載せた移動販売車も同行することになっています。

「このサービスは、『出向いていく』方式とサービス拠点に『来てもらう』方式とのハイブリッドです。サービスを見直し、『実物を見て買い物したい』とか『集落の近くでもできるようにしてほしい』など、これまでの展開で得た市民の声を集め、民間事業者も参加する定期的な研究会で検討して実施することにしました。暮らしに元気を、地域に賑わいを取り戻し、行政の負担も増やさない。だからサービスを固定せず、課題を克服しながら常に進化させるのが基本的な姿勢なのです。ICT活用の道は多様であるほど可能性も広がります」(米井氏)

ICカードからインターネット放送まで、積極的なICT活用を進める同市のアイデアと行動力は、産官学のスタッフが集まる隔月定例の研究会から生まれています。例えば子供向けのイベントにVR(仮想現実)技術を披露するなど、最新技術を市民に分かりやすく伝えることにも力を入れています。このようにICTの活用で進化を止めない同市の取り組みは、高齢化に悩む全国の自治体からも熱い注目を集めています。

※ FeliCa:ソニー株式会社が開発したICカード。携帯電話などの「おサイフケータイ」やJR東日本の「Suica」やJR西日本の「ICOCA」などの電子マネー系で利用されることが多い。

組織名 奈良県葛城市
所在地 奈良県葛城市柿本166
市長 山下 和弥
URL http://www.city.katsuragi.nara.jp/

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