ICTソリューション紹介
ウェブを活用し、生産者と消費者が通じ合える農業を実現農家は農作物を購入したお客さまの声を聞くすべがない。そう考えた有機栽培農家の井村氏は、お客さまの生の声が届く食品加工メーカーを設立。さらに、ウェブサイトを通じて生産者とお客さまをダイレクトにつなぐ仕組みを構築しました。ウェブの活用で農業のさらなる発展を試みる金沢大地の取り組みをご紹介します。
持続可能性と環境問題から有機農業を選択
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▲代表 井村 辰二郎氏
株式会社金沢大地は、金沢市の北に広がる河北潟干拓地などで、自社グループで有機栽培をした農産物を加工、販売する食品会社です。
「私は1997年に、ここで家業である農業を継ぎました。就農にあたり私が決めたのは『有機農業への転換』『耕作放棄地に手を入れて規模を拡大』『単なる農業ではなく、味噌、豆腐などへの加工を指向』という3つの事柄です」(井村氏)
井村氏は地元金沢の高校を卒業後、東京の大学の農学部に進学。卒業後は、金沢市内の広告代理店に就職します。
「当時はバブル崩壊直後で、大企業といえども、その基盤が盤石ではないということを痛感させられた時期でもありました。そのなかで自分の進む道、つまり“持続可能な産業”とは何だろうかと考え、やはり家業に立ち戻ることを決めたのです。また当時クローズアップされていた環境問題も気にかかっていました。そこで持続可能性と環境問題という二つの柱から、事業の中心に有機農業を置き、展開していくこととしました」(井村氏)
お客さまの生の声を知るために「加工」へ進出
同時に井村氏は、当時の農家が抱える問題点を何とかしたいと思っていました。
「農家は生産した農産物がどう流通し、誰が味わっているのか知るすべがありませんでした。そこで私は『加工』への進出を考えました。農産物を自社で加工し、販売すれば、どんなお客さまに買っていただいているか、分かるようになります。つまり、お客さまの生の声が耳に届くようになるのです」(井村氏)
しかしそこには、販路、品質など、クリアしなければならない諸問題がありました。
「最終的にはそうした加工部分を、ノウハウを持つ会社にアウトソースする『OEM加工』で解決しました。また生産農家、つまり製造を主体とする『金沢農業』と、食品加工メーカー『金沢大地』で業務を分担する形を作ったのも、この時期です」(井村氏)
ウェブで自社製品の魅力をダイレクトに訴求
一方、井村氏は、就農直後から、ウェブの活用に積極的に取り組みます。「買い物かご」を備えたウェブサイトを立ち上げ、ネットショッピングにも対応しました。その後、CMS※1、大手ECサービスの提供するショッピングシステムの導入など、次々と先手を打ちます。
「ウェブは、生産者と消費者をダイレクトにつなぐことができます。私の考える農業の理想像には絶好の仕組みなのです」(井村氏)
しかしウェブサイトを立ち上げただけで商品が売れ、お客さまからの声が届くようになるわけではありません。井村氏は、いかに自社製品の魅力をお客さまに訴求するか、試行錯誤を続けました。
「SEO対策※2は重要です。しかしそうした対策を専門業者に依頼したことはありません。なぜなら、『価値あるものを販売するサイトを作り、その商品をお客さまにご評価いただければ、必ず検索順位が上がってくる』と思ったからです。ただ来訪されたお客さまの心をしっかり掴むため、弊社の特徴を一目で理解してもらえるよう気を配りました。また送料も数度の改定で、売り上げと利益のバランスが取れるポイントを探りました」(井村氏)
使いやすいウェブサイトを基盤に次世代の「農業」の実現を目指す
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▲ウェブ担当 高井 由昭氏
こうしたウェブの活用をさらに強力に進めるため、同社は2年前からプログラマーの経験を持つ専任の担当者も採用しています。
「私は有機農業に魅力を感じ、金沢大地に転職しました。ウェブページは、オリジナルのデザインを生かしつつ、よりお客さまが使いやすくなるよう工夫を重ねています。具体的には、商品の紹介テキストを詳しくかつ分かりやすくする、ページに『どんな料理に使うか』といった体験を予感・共有できるコンテンツへのリンクを張る、写真のクオリティにも気を配る、などです。また解析ツールでページビューと売り上げにどう関連性があるのかなどの分析も定期的に行っています」(高井氏)
同時に高井氏は、さらに使いやすいサイトを目指す取り組みも進めています。
「スマホへの対応を急ピッチで進め、新規のページについては『モバイルファースト※3』の手法を導入し、スマホ向けページから作成しています。またデータベースの構造や検索手段を見直し、カテゴリからツリーを追うお客さま、商品名や特徴をピンポイントで探すお客さまの双方に分かりやすくお使いいただけるサイト構造も検討中です」(高井氏)
こうしてウェブの成長とともに拡大する同社の業績を背景に、井村氏はさらに次世代の農業へと思いを馳せています。
「修学旅行生を受け入れたり、食育につながる情報を提供するなどして、持続可能性のある『農業』を広く周知しています。またこれから高齢化が進む農業が廃れることのないよう、能登半島の農地10ha規模を10箇所ほど買い入れ、再生していくことを、今後10年くらいの目標として掲げています」(井村氏)
生産者と消費者、互いの顔が見える農業を、ウェブの活用で実現し、さらなる発展を試みる金沢大地。その取り組みに、期待していきたいと思います。
▲使いやすさを第一に、ウェブサイト構築に力を入れています。
※1 CMS:コンテンツ・マネジメント・システムの略。「フォームにテキストを入力する」「アップロードしたい画像を指定する」などの方法で、直接HTMLを記述しなくても、デザインされたウェブページが制作できる仕組み
※2 SEO対策:SEOとは「検索エンジン最適化」の英文頭文字の略。Googleなどでの検索結果がより上位に表示されるよう、ページタイトルの付け方やページ内の単語の並び方、リンクなどを工夫すること
※3 モバイルファースト:Webサイトやソフトウェア開発において、パソコン版よりも先にスマホなどのモバイル版から開発する手法、および概念(コンセプト)のこと。これまでホームページの制作は、パソコン版のホームページを構築し、その後モバイル版を構築をする事が一般的であったが、スマホやタブレットの普及に伴い、モバイル環境への対応を常に最優先し、モバイル版をパソコン版と同時、または先行して提供する動きが増えている。
会社名 | 株式会社金沢大地 |
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設 立 | 2002年(平成14年)3月25日 |
所在地 | 石川県金沢市八田町東9番地 |
代表 | 井村 辰二郎 |
資本金 | 2,400万円 |
業務内容 | 農作加工品の製造及び販売 |
URL | http://www.k-daichi.com/ |
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