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-株式会社NTTデータ-
食品業界で進む「味のデジタル化」 AIで開発した商品も話題に

記事ID:D10043

近年食品業界では、これまで難しかった味覚の分析をデジタル技術で行う「味のデジタル化」が進み、AIを活用して開発された商品も登場しています。そこで、味のデジタル化が進んだ背景や現状などについて、食品業界のデジタル化を支援する、株式会社NTTデータの第二インダストリ統括事業本部 食品・飲料・CPG事業部の三竹 瑞穂氏、小林 弘明氏、上野 哲明氏に話をうかがいました。

食品業界で注目を集める味のデジタル化

第二インダストリ統括事業本部
食品・飲料・CPG事業部
小林 弘明氏

 食品業界では今、人手不足や原材料価格の高騰、食材ロスの削減など、さまざまな課題を解決するために、デジタル化が進んでいます。例えば人々の購買記録や人流などの膨大なデータを基にAIで需要予測を行い、的確な在庫管理や生産計画の最適化に効果を上げる企業が増えています。また品質管理にAIを活用する企業も増加中で、検品効率、生産速度などの向上に貢献しています。このような食品業界のデジタル化は味覚の分野にまで及び、近年は「味のデジタル化」を推進し、新商品の開発や開発の効率化を図る動きが生まれています。
 「味のデジタル化とは、これまで人間の感覚に頼っていた味覚の分析をデジタルで行い、味覚を客観的な数値で再現する技術です。これまで味覚の世界は、一部のベテランの経験や勘、記憶に頼りがちな属人化しやすい領域でした。しかし、味のデジタル化で味覚が明確に定量化されると、必ずしも経験豊富な社員に頼る必要がなくなるため、技術継承の課題が解決されるとともに、商品開発が活性化していくことが期待されています」(小林氏)

第二インダストリ統括事業本部
食品・飲料・CPG事業部長
三竹 瑞穂氏

 このほか、「味」をテーマにしたデジタル化に関連し、三竹氏は消費者の嗜好の多様化や原材料の高騰により、大きな流れが生まれつつあると指摘します。
 「現在、食品業界を取り巻く環境は大きく変化しており、原材料価格の高騰や急激な為替の変動により、原材料の安定的な調達が難しくなってきています。そのため、より安い調達先に変更したり、原材料そのものを変更するような動きが見られます。さらに、その対応にスピードも求められるため、人間の経験だけでは対応できず、デジタル化で生産効率を上げ、スピード感をもってレシピを開発するようなことが求められています。また、レシピ開発においても、新しい味の開発だけではなく、従来とは異なる原材料で同じ味を再現するレシピ開発のニーズが高まっています」(三竹氏)

食品業界で見られるAIを活用した商品開発

サッポロビールと日本IBMで開発したAIシステムから生まれた、サッポロビールの「男梅サワー通のしょっぱ梅」

 レシピ開発においては近年、AIを活用した開発が話題になっています。その一つとして昨年、サッポロビールの「男梅サワー 通のしょっぱ梅」が話題を集めました。
 同商品は、新商品のコンセプトや必要な情報を入力すると、瞬時に目標とする配合の骨格※1をもとに原料の組み合わせ、各原料が商品全体の中に占める割合(配合量)まで予測し、推奨配合と推奨香料からなるレシピを出力する、サッポロビール株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)が共同開発したRTD※2商品開発AIシステムを活用して、開発されたものです。同AIシステムは、同社がこれまでに商品化した約170商品で検討した、約1,200種の配合と約700種の原料情報を含むレシピを学習しています。このような商品開発におけるAIの活用メリットについて、三竹氏は次のように解説します。

 「商品サイクルの短周期化が年々顕著になっています。消費者の嗜好の多様化がその背景にあると考えられますが、消費者の動向をいち早く捉え、マーケットの変化に柔軟に対応するために、AIは不可欠な存在になりつつあります。人間が長い時間をかけて何度も試行錯誤して得られた味に近いレシピを、AIは瞬時で回答してくれるので、開発スピードがアップします。また試作品数が減るため、開発コストの削減にも結びつきます」(三竹氏)

第二インダストリ統括事業本部
食品・飲料・CPG事業部
上野 哲明氏

 一方、上野氏は消費者ニーズの探索や、新商品コンセプトの企画段階においても、AIが活用できると話します。

 「ターゲットとする味や香りの実現に向けた原材料・配合の効率的な探索という活用方法だけではなく、消費者の新しい好みやトレンド(流行や動向、傾向)をいかに素早く発見し、市場に商品を投入できるかという視点のアプローチもあります。例えば、弊社ではX(旧Twitter)における市場の反応や生活者の声などの膨大なデータからトレンドの兆しを発見し、さらに言語解析や生成AIも組み合わせながらトレンドの背景要素を深掘りし、商品企画や開発などに活かす『トレンドエクスプローラー™』(図参照)というサービスを提供しています」(上野氏)

図:トレンドエクスプローラー™の活用イメージ

デジタル化が叫ばれる時代に食品業界が向かうべき方向

 AIなど最新のテクノロジーを活用した取り組みは、食品業界の商品開発において大きな成果を見せつつありますが、食品業界は利益率が低い傾向にあり、思い切った投資が難しいと言われてきました。また中小企業の中には、現在もデータを紙やエクセルベースで蓄積しているため、AIの活用が現実的でないと考えている企業も存在します。そこで、NTTデータの3氏は食品業界における、大きな投資を行わないデジタル活用について、次のように語ります。

 「まずは開発プロセスの一部でかまわないので、データ分析やAI活用をスモールスタートで試行してみてください。『市場分析』『消費者トレンド分析』『コンセプト策定』『レシピ開発』『試作評価』などのステップで、それぞれ利用可能なサービスが登場しています」(小林氏)

 「最近では、デジタルサービスによる消費者コミュニティを活用した商品開発に取り組んでいる事例もあります。一般の事例にはなりますが、静岡県の三島市でウイスキー製造を行うWhiskey&Co.株式会社では、ネット上のコミュニティにて三島ウイスキーを応援したい消費者を募り、ウイスキーの購入権に加え、ウイスキー製造の 各種プロセス(蒸留やテイスティングなど)にまつわる投票企画や体験イベントへの参加権、さらには三島市の街づくりにも関与することで独自の付加価値やコミュニティ醸成を追求しているユニークな取り組みを行っています。消費者ニーズが多様化する中で、デジタル技術の活用による商品のパーソナライズ化が、商品開発のトレンドの一つであり、ローカルブランドの活路にもなるのではないかと考えます」(上野氏)

 「看板商品を持つ企業であれば、現行商品を受け入れてくれる新しい市場の開拓に力を注いでも良いでしょう。現在はあらゆる販路が世界中に開かれています。ウェブやSNS、スマホアプリなどさまざまなチャネル(媒体や経路)を駆使して、長年培ってきた自社の『強み』を世界に発信し、未知の顧客発掘に努めるのも一つの戦略ではないでしょうか」(三竹氏)

 食品業界に限らず、AIの活用は今後ますます広がると同時に、活用ハードルも下がると考えられます。現在では高価な原料の組み合わせで表現している味が、より安価に表現できるレシピを解答するなど、コスト削減を始めとする多くの気づきを提供してくれるでしょう。それだけに将来の導入を見据えて、まずは社内に蓄積されたデータのデジタル化を開始してみてはいかがでしょうか。

※1 配合の骨格
例えば、アルコール・糖類・酸味料などの主要原料の割合。
※2 RTD
Ready To Drinkの略。ふたを開けてそのまま飲める低アルコール飲料のこと。
会社名 株式会社NTTデータ
設立 2022年(令和4年)11月1日
本社所在地 東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
代表取締役社長 佐々木 裕
事業内容 電気通信事業、情報処理、情報通信に関する機器及びソフトウェアの開発、情報通信に関するシステムの開発など
URL https://www.nttdata.com/jp/ja/
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