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-NTTコミュニケーションズ株式会社-
改正航空法施行で期待が高まるドローン物流・配送のビジネス活用

記事ID:D10031

昨年12月5日に改正航空法が施行され、物流・配送におけるドローン(無人航空機の総称)の活用が一歩前進しました。そこで今回は、本格的なドローン物流・配送の実現に向けた活動と現状の課題などについて、ドローンのビジネス活用と技術開発に取り組むNTTコミュニケーションズ株式会社(以下NTTCom)の牧田 俊樹氏、小川 達之氏に話をうかがいました。

法改正で有人地帯の目視範囲外のドローン飛行が解禁

プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門 第二グループ 担当部長
牧田 俊樹氏

 ドローンが安全に飛行するには、広大な飛行エリアをカバーするモバイルネットワークが重要な役割を果たします。これまでのドローン飛行は、目視範囲内での操縦飛行「レベル1」、目視範囲内での自律飛行(事前に設定したルートに沿った自動飛行)「レベル2」、森林や耕作地など無人地帯での目視範囲外飛行(モニターなどで監視しながらの操縦・自律飛行)「レベル3」までが 認められていました(図参照)。NTTComでもこれまで「レベル1~3で可能なドローン活用に取り組んできました」と牧田氏は説明します。

 「例えば鉄塔など高所の点検、農薬散布、災害時の現場状況把握などで、ドローンの社会実装が先行して進められています。物流・配送については、Wi-Fi電波が届かない長距離飛行が必要となるため、上空でLTE(4G)の電波を用いてドローンを飛ばすなど、本格的な実用化・市場拡大を見据え、さまざまな事業者が実証実験を行っている段階です」(牧田氏)

【図:改正航空法で定められたドローン飛行のレベル区分】

 今回の改正航空法により、有人地帯の目視範囲外飛行「レベル4」(図参照)が可能になったため、広大な飛行エリアを目視範囲外で安定して飛行できるよう、モバイルネットワークのさらなる利活用が予想されます。
 また、より高度な機体の開発も進んでおり、牧田氏は「AIを搭載し衝突を回避する高機能ドローンも登場している」と言います。

長距離の正確なドローン飛行誤差のない着陸の実現へ

プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 インテグレーションサービス部門 第四グループ 担当課長
小川 達之氏

 レベル4のドローン物流・配送の実現が社会に与える影響について、牧田氏は「まずは過疎地や離島への配送のスマート化と省人化が進み、運送業の効率化や人手不足解消が期待されるでしょう。将来的に機体の安全性能、運行管理の技術、ドローンと地上の自動運転車との連携や社会受容性などが高まってくると、高層住宅の各階各室への配送を含む都市部でのラストワンマイル(運送業者と届け先間の受け渡し)の簡素化の実現も視野に入ってきます」と話します。また、より安全で正確なドローン物流・配送を実現するため、同社は新たな技術を用いた実証実験も行っています。

 「ドローンの操縦や自律飛行の際に難しいと言われる要素の一つが、目的地へ正確に着地させることです。従来のGPS情報では着地する位置に大きな誤差を生じることがあるため、弊社ではGPS情報を地上の基準点(アンテナ)からの情報で補正する『docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス』を活用し、誤差数cmで着陸させる実証実験も行っています。
 中でも昨年6月に沖縄県座間味村と豊見城市の協力により行われた、沖縄本島から座間味島へのドローン飛行による救援物資の運搬実証実験(写真①)では、これまで前例のない約40kmもの長距離の自律飛行と高精度な着陸を成功させ(写真②)、ドローン配送の可能性を大きく切り開きました」(小川氏)

  • 写真①:豊見城市から座間味島へのドローン配送の様子

  • 写真②:実証実験では座間味島の所定の着陸地(古座間味ビーチ)へ正確に着陸

 沖縄本島と座間味島の交通手段は1日3便の航路のみで、地元からは「医療物資を緊急で届けられる手段ができるとありがたい」「今後は重い物資も運べると非常に助かる」といった声のほか、「ホテルの鍵を誤って持ち帰ったり、スマホを忘れて島を発たれたお客さまには、そのような際の受け渡しに使えると助かります」など、離島ならではの悩みの解消に期待する声もあったそうです。
 さらに、牧田氏は「レベル4のドローン飛行では、操縦者は国土交通省が新設したライセンスの取得が必要ですが、高精度GNSS位置情報サービスのような操縦をサポートする技術の充実が、サービス普及の後押しになると思います」と期待を込めて話します。

ドローン市場拡大に向けて通信が果たす役割

 ドローンビジネスの市場はレベル4解禁により、2021年度の2,300億円から2027年度には8,000億円規模へ拡大すると予測されています(インプレス総合研究所調べ)。そのため、ドローンメーカーでは機体登録や機体認証などレベル4飛行に必要な要件を満たすための動きが進んでおり、今年3月にはACSL社がレベル4に対応した第一種型式認証を日本で初めて取得しました。さらに同社のドローンを用いて日本郵便が東京都奥多摩町で日本初となるレベル4飛行による荷物配送を試行し、標高約340mの郵便局から標高約480mの集落まで高低差のある区間を、総飛行距離約4.5km、9分ほどで飛行しました。こうした事例が生まれる一方、現段階では、レベル4の飛行が本格的に普及していくには課題があるようです。

 「例えば、ドローンによる安全な自律飛行を実現するために高精度カメラを活用することも想定されます。人が直接行かない、または行けない場所の状況がより鮮明な映像で操縦者のもとへ遅延なく伝送されることは飛行安全性を高める観点で重要です。その意味でも高速大容量で低遅延の5G通信は、高精細な映像伝送に適した技術ですが、上空での利用手続きが簡素化されたLTE(4G)に対し、現行の電波法では5Gの上空利用は実験や試験用途に限られているため、商用利用の制度整備が進むのはこれからです」(牧田氏)

 さらに、ドローン物流・配送が便利であっても「企業視点では費用対効果の問題もあります」と小川氏も補足します。
 過疎地や離島への配送、買物弱者を対象とした物流などの社会問題をドローンが解消するにはまだ課題があるようですが、国土交通省では、過疎地域におけるドローン物流の課題を解決するため、レベル4飛行に対応したドローン物流や、離発着前後の自動配送ロボットと連携した物流を検証する実費を支援する「無人航空機などを活用したラストワンマイル配送実証事業」の公募を行い、今年6月から実施予定であるなど、国を挙げての取り組みとなっています。
 これらの動きから、牧田氏は「おそらく2023年内は日本各地で複数のレベル4実証飛行が行われると想定しています」と話します。そのような実証を通して、安全性や制度、技術、採算性の面などさまざまな課題への解決策が見えてくると予想されますので、レベル4のドローン物流・配送はそう遠くない未来に実現されそうです。

会社名 NTTコミュニケーションズ株式会社
営業開始日 1999年(平成11年)7月1日
本社所在地 東京都千代田区大手町2-3-1 大手町プレイスウエストタワー
代表取締役社長 丸岡 亨
資本金 2,309億円
事業内容 国内電気通信事業における県間通 話サービス、国際通信事業、ソ リューション事業など
URL https://www.ntt.com/
〔ユーザ協会賛助会員〕
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