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ICTコラム

第3回 GIGAスクール構想推進に
必要となるICTの活用と
「学び改革」の今後の課題とは

今、時代は「Society5.0」※1を目指した「第4次産業革命」が急速に進展し、それを支える日本の学びが従来の教育のままでは、世界に取り残されてしまうこと、その問題意識を共有してほしいというお話をこれまで2回の連載でお伝えしてきました。最終回の第3回では、GIGAスクール構想で一気に進展する「学び改革」の課題について考えます。

「学び改革」のポイントは、まず徹底したICT活用による学び方改革

 なかなか収束が見えてこないコロナ禍ですが、昨年3月の全国一斉休校当時と今では大きく異なった点があります。それは今、小中学校の児童生徒には1人1台の情報端末が配布され、いつでも、どこでも、インターネットを通じてつながることができるようになったということです。その背景のもと、新しい学習指導要領では「あらゆる授業でICTを活用しましょう」と示されています。目的は、ICTツールを活用した「新しい学び」を始めるためです。
 GIGAスクール構想を通じて目指している「学び改革」は、あくまで「主体的・対話的で深い学び」=「自分で考えて課題解決ができる人を育てる学び」であり、アクティブ・ラーニング※2やアダプティブ・ラーニング※3の活用なのですが、その前にまず、ICTを活用できないと話にならないということがあるのだと思います。
 先生にも、子どもたちにも、ICTを活用した学び方改革を求めること、各教科の学びを探求するさまざまな場面でどれだけICTを効果的に活用できるか、それこそがGIGAスクール構想なのです(図参照)。

「GIGAスクール構想」は始まったけれど

 さて、GIGAスクール構想による1人1台の情報端末を行き渡らせる取り組みがスタートして半年以上が経過しました。皆さんの周りでは、子どもたちの学びに大きな変化を感じているでしょうか? 多くの方はまだそれほど感じていないのではないでしょうか。
 私はコロナ禍以前、多くの学校でパソコンやタブレットを使った公開授業を取材してきましたが、子どもたちは驚くほどの速さで新しいツールに順応して、新しい学び方を発見していました。ところが、そうしたICT活用を多くの学校で実施するのは簡単ではありません。ほとんどの先生方も、それらを使うのが初めてだからです。
 ここで大切なのは、先生方の「発想の転換」です。子どもたちに「教えてあげる」という従来の姿勢から、「ともに学ぶ」「学びを見守る」という役割転換です。さまざまなICTツールやアプリも、子どもたちはあっと言う間に使いこなします。子どもたちが学ぶべきことが、先生の教えられることを超えてしまっているのですから、今後は「ともに学び」「ともに授業をつくる」ことが必要になってきます。GIGAスクール時代の先生には、子どもたちの学びを創造し、見守り、まとめる「ファシリテーター※4」の役割が求められることになるのです。
 また、学校や教育委員会の姿勢がICT活用推進のスピードを緩めてしまう場合もあります。例えば、せっかく1人1台が実現したのに、学校からの端末持出を禁止したり、家に持って帰っても「充電するだけ」で使用禁止にしたりというところもあるそうです。
 その理由は、セキュリティ管理やWi-Fi環境のない家庭への配慮だったりするということのようですが、それらを乗り越えなければ、学びのICT活用は進んでいかないのではないでしょうか。セキュリティの管理にはさまざまなツールがありますし、オンライン授業のため家庭にWi-Fi端末を貸し出している自治体もあります。もちろん、こうした変化を保護者が家庭で受け入れることも大切になってくると思います。

「ランドセルがなくなる日」はいつくるか

 私が編集長を務める「ICT教育ニュース」は立ち上げに際して、ICT活用教育は「ランドセルがなくなる日」が一つの目標地点であると想定しました。子どもたちが手ぶらで登校できるか、または登校しないでも済む学びが、近い将来に実現することを想像してのスタートだったのです。
 ところが、21世紀になってランドセルは益々大きく、重たくなっているようです。2年ほど前の調査では、ランドセルと教材を合わせて平均が5.7kgで、10㎏を超える児童もいたということでした。腰痛を訴える子どもたちも増えているということで、問題解決のため文部科学省が学校に教科書などの勉強道具を置いていく「置き勉」を事実上認める通知を出していますが、どれくらい実施されているかは不明です。
 私ごとですが、来年孫が年長組となり、ランドセルの購入が現実のものとなってきました。「ICT教育ニュース」の理念からすると、お祝いはランドセルではなくタブレット端末にしたいところですが、親である息子夫婦や学校の現状がなかなか許してくれそうもありません。教科書完全デジタル化、ランドセル禁止といったことになれば別ですが、そうでなければ、少しずつでも変化させていくより仕方ありません。せめて孫の巨大なランドセルの中身がスカスカになることを願って、この連載を完了します。読者の皆さまもぜひ、ICTを活用したお子さんやお孫さんの学びの変化に興味を持っていただければ幸いです。

※1 Society 5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。
※2 アクティブ・ラーニング:従来の「受動的な授業・学習」とは真逆の「積極的・能動的な授業・学習」のこと。
※3 アダプティブ・ラーニング:児童生徒一人ひとりの能力や習熟度に合わせて学習教材や学習方法を選択する学習方法。
※4 ファシリテーター:中立的な立ち位置から意見の対立を調整したり、積極的な意見交換を促したりするなど、会議や研修を行う上で重要な役割を担う人のこと。

山口 時雄氏

株式会社ワニテル代表。メディアコンサルタント。ICT教育ニュース編集長。AIロボットニュース編集長。日本大学法学部新聞学科在学中からTV-CM業界で活動、記録映画監督、企業ビデオ監督、イベントプロデューサーなどを経てテレビ朝日グループ株式会社フレックスに入社。ニュースステーションディレクターを経て総務・人材育成・報道担当取締役に就任。2003年株式会社ワニテルを設立。メディアコンサルタントとして、企業トップ・広報担当、大学教授、医師、スポーツ選手などのメディアトレーニングを実施。プログラミング教育の普及やライター育成にも尽力している。

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