ICTコラム

第1回 GIGAスクール構想で進む
学校のICT環境の整備
その基本の考え方と目的とは

記事ID:D40014

全国の小中学校で「GIGAスクール構想」が急速に進行しています。21世紀に相応しい新しい教育を実現するための「学び改革」のスタートです。「GIGAスクール構想」でいったい何をするのか。そして、教育はどう変わっていくのか。3回連載でお伝えします。

「GIGAスクール構想」のGIGAって何?

 「GIGAスクール構想」って何?子どもたちを何万人も集めて巨大な学校を作る構想?それとも、学校のネットワークを超高速にする構想?いえいえ、GIGAはギガでも、「巨大」のGIGAや「大容量」のGIGAではありません。「GIGAスクール構想」のGIGAは「Global and Innovation Gateway forAll」の略。直訳すれば「すべての人のためのグローバルで革新的なゲートウェイ」ですが、「誰一人取り残すことなく子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けた施策」とされています。平たく言うと当初の目標としては、児童生徒に1人1台の学習者用端末を配付して、クラス全員が一度にアクセスしても利用できる高速大容量の通信ネットワークを全教室に整備するという構想です(図1参照)。

 2019年12月13日に閣議決定された2019年度補正予算案に「GIGAスクール構想」として2,318億円が盛り込まれ、3ヵ年計画で実現する予定でした。ところが昨年2月「新型コロナウイルス感染症」の拡大で学校が休校になると、子どもたちが学校に行かないということ=学べない、という現実に直面しました。昭和生まれで20世紀の教育を受けた私たちの世代からみると「学校に行かない=学べない」は不思議なことではありませんが、21世紀の今、世界を見渡せば多くの国々で学校に行かなくても学べる環境が整っています。ICT(情報通信技術)を活用したオンライン授業です。一方、日本の学校では教師がプリントを作成して郵送したり訪問して配ったりと、時代にそぐわない対応をしています。国は急遽3ヵ年計画を前倒しして、2020年度内にすべての自治体の小中学校で1人1台情報端末配付と、すべての教室にWi-Fi環境整備を目指して予算を実施しました。

 元々学校のICT環境整備は「2020年度1人1台情報端末」を目指し10年ほど前から文科省を中心に、国の方針として進められてきました。この間数千億円もの税金も投入されてきましたが、地方交付金への上乗せという曖昧なやり方だったため、多くの自治体ではICT環境整備に使われませんでした。
 ICT環境整備の必要性が、自治体や学校現場に十分理解されなかったのが原因と考えられます。近年では「2020年に3クラスのうち1クラスで1人1台情報端末」へと、国の目標もトーンダウンしていました。
 それが、「2020年度内に実現を目指す」となったわけですから、「GIGAスクール構想」に向けた国の本気度が分かるというものです。それくらい、日本のICT教育の遅れは切迫した状況になっていたのです。結果、2021年3月(2020年度)末の段階で96.5%の自治体では児童生徒の手元に端末が渡り、インターネットの整備を含めて学校での利用が可能となる状態となっています。今頃は、ほぼ100%になっていることでしょう。

なぜ今「GIGAスクール構想」なのか

 そもそも「GIGAスクール構想」は、何のための政策でしょうか。義務教育というのは、国の方針でそのあり方ややり方が決められます。しかし、その方針に影響を与えるのは社会のあり方、時代のニーズと言ってもいいでしょう。
 今、時代のニーズは「Society5.0」です(図2参照)。文科省の2019年度補正予算における「GIGAスクール構想の実現」でも「Society5.0時代を生きる子どもたちにとって、教育におけるICTを基盤とした先端技術などの効果的な活用が求められる」とし、そのために環境整備を行う、としています。

 Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことです。
 狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指すもので、政府の第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。併せて今、「AI(人工知能)・ロボット・IoT(モノのインターネット)・ビッグデータ」を中心とした「第4次産業革命」が急速に進行しています。そして学びには「第4次産業革命」を支えSociety5.0を実現することが期待されているのです。
 それでは、「GIGAスクール構想」で整備されたICT環境を利用して、どのような「学び改革」を進めていくのでしょうか。それは第2回でお話しさせていただきます。

山口 時雄氏

株式会社ワニテル代表。メディアコンサルタント。ICT教育ニュース編集長。AIロボットニュース編集長。日本大学法学部新聞学科在学中からTV-CM業界で活動、記録映画監督、企業ビデオ監督、イベントプロデューサーなどを経てテレビ朝日グループ株式会社フレックスに入社。ニュースステーションディレクターを経て総務・人材育成・報道担当取締役に就任。2003年株式会社ワニテルを設立。メディアコンサルタントとして、企業トップ・広報担当、大学教授、医師、スポーツ選手などのメディアトレーニングを実施。プログラミング教育の普及やライター育成にも尽力している。

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