ICTコラム
次の社会の主役となる「Z世代」の若者たちに特徴的なSNSの接し方、活用法とは?
記事ID:D40023
物心ついた時からデジタルに囲まれ、スマートフォン(以下、スマホ)に接してきたZ世代の若者たちは、現在、世界的にみてもSNS※1の圧倒的なリーダーになっています。「映え」に代表されるように彼ら彼女らがSNSをどのように使いこなし、どのSNSを利用してネットワークを作っているのか。連載2回目は、ほかの世代と比べて明確に異なるZ世代の若者たちに共通する特徴的な傾向から、彼ら彼女らのものの見方、考え方などを紹介していきます。
「Z世代」の主流SNSはTwitter※2やInstagram※3
前回、「Z世代」とはどういう世代なのか大まかにお話ししましたが、今回はICTと常に接してきた彼ら彼女らのSNSの向き合い方の特徴についてです。
1998年以降に生まれた「Z世代」は“スマホ第1世代”と呼ばれています。初代iPhoneが発売されたのが2007年ですが、この世代は、早い人で小学生の頃からスマホと接しており、多くの人が携帯を持つようになる高校生の頃には、世界でスマホがガラケーの普及率を超えていました。一つ前の「ゆとり世代」がガラケー育ちだったのに対し、初めて持つ携帯電話がスマホの世代なのです。この世代は、分からないことがあったらすぐにスマホで調べ、動画やSNSもスマホで気軽に楽しみ、自ら発信することもできます。
それでは、SNS利用の世代差を見てみましょう(図参照)。現在、日本で最も使われているSNSはTwitterですが、これは60.6%もの「Z世代」が使用しており、この世代の若者にとってはメジャーな存在と言えるでしょう。ミドル層でも使用されていますが34.5%と、比較するとかなり少なめです。次に使用されているのがInstagramです。“インスタ映え”が2017年の流行語になるほど人気のSNSですが、「Z世代」では52.1%、それ以外の世代は29.8%と3割を切ってしまう結果となっています。さらに、スマホを1日中見ている「Z世代」とミドル層とでは接触時間や投稿頻度に差があり、影響力もかなり異なります。こう見ると、かなりの世代分裂が起こっていて、SNSは若者のものになっているのが分かると思います。
そして、次に使用されているFacebook※4ですが、これはミドル層のほうが多く使っている唯一のSNSです。意外と「Z世代」も使用しているように見えますが、海外留学をして現地の人と連絡を取る手段として使っていたり、NPO団体やベンチャー企業やインターンをやっているなど、大人と接している一部の人が使用しているくらいの印象です。その上、接触時間も圧倒的に少なく、「Z世代」にとってオワコン※5になっていると言えます。
“動画映え”で自己承認欲求を満たす世代
そして注目したいのはInstagramのStories※6とTikTok※7です。これらは「Z世代」全体で見ると数値的にはまだ低いですが、ほかの世代はほとんどやっておらず、圧倒的に若い人しか見ていないSNSです。その上、面白いのが、「Z世代」の中でも若ければ若いほど使用されていて、中学・高校生には圧倒的支持を集めています。おそらく彼ら彼女らが成人するころには、主流のSNSになっていると思われます。これまでテキストや静止画が中心だったのが、StoriesとTikTokは動画ベース。それが人気なのは、もちろん日本全体のWi-Fiなど通信環境が整ってきたことも大きいですが、保存される通常投稿ではキメた写真を載せていたのに対し24時間で消えてしまうInstagramのStoriesは、そこまで頑張らない日常に近い写真や動画を気軽に載せられるようになったことも大きいのかもしれません。
2021年のオリンピックで、「Z世代」に近い若い層の選手が選手村での様子やみんなでふざけた動画を載せてバズっていた※8のも記憶に新しいと思います。ちなみに「Z世代」は、テレビではなくSNSの動画でオリンピックを見た人のほうが多いと言われています。それくらいメインで使用するメディアツールは変わっているのです。
映え”は今後も継続してキーとなるワードですが、これからは間違いなく“動画映え”の時代がやってきます。「Z世代」に韓国フードが人気なのも、チーズが伸びたり見た目がかわいかったりするので“映え”るからです。ブームの陰には、間違いなく“動画映え”があると考えてください。
世界中の人とつながる発信型が主流
ちなみに、「ゆとり世代」がアドレスを知っている知り合いとつながる、メールやmixi※9に夢中だったのに対して、世界中の知らない人と簡単につながる発信型のTwitter、Instagram、TikTokを複数使用するのが主流になっているのが「Z世代」です。「ゆとり世代」は世界を広げず、むしろ縮小させて同調思考を引き起こしやすい内向き傾向ですが、「Z世代」は良い動画を発信したら世界中の人から“イイネ”を押してもらえる発信型傾向にあります。消費金額、行動範囲ともに小さくなった“スモールライフ”と言われた「ゆとり世代」とは違い、「Z世代」は“イイネ”と言われるのが当たり前の状況で過ごしているので、自己承認欲求が非常に高く、自意識過剰な人が多いです。このように、SNS一つ取っても世代でかなり違うのが分かると思います。
そんな彼ら彼女らの社会特性を理解し、ビジネスでどう接していくのが良いのか......。そのあたりは次回、お話しできればと思います。
※1 SNS:ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略で、登録された利用者同士が交流できるウェブサイトの会員制サービスのこと。
※2 Twitter: SNSの一つで、40文字以内の文章を投稿する無料のウェブサービスのこと。
※3 Instagram: SNSの一つで、写真や動画を無料で共有できる無料のアプリケーションのこと。
※4 Facebook: 実名登録制を採用しているSNS。ネットワーク上で登録者の知人、友人などのコメントや画像などを共有できる。
※5 オワコン:「終わったコンテンツ」を略したインターネット上のスラング。
※6 Stories:スライドショーのような形式で、画像や動画が投稿できる機能。
※7 TikTok:SNSの一つで、15秒から1分ほどの短い動画を作成・投稿できる無料のアプリケーションのこと。
※8 バズる:英語の「Buzz」が由来。SNSなどを通じて、ある特定の話題などに対し、多人数で意見や感想を述べ合い、爆発的に広まること。
※9 mixi: SNSの一つで、共通の趣味や仕事を持つ同士が意見交換したり、知人を紹介し合えるウェブサイト。
「Twitter」は、Twitter, Inc.の商標または登録商標です。
「Facebook」は、Facebook, Inc.の登録商標です。
「Instagram」は、Instagram,LLCの商標または登録商標です。
「iPhone」は、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。
iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。
「TikTok」の表記・ロゴはTikTok Pte. Ltd.の商標または登録商標です。
「mixi」は、株式会社ミクシィの商標または登録商標です。
原田 曜平氏
マーケティングアナリスト。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーに。若者向けのマーケティングや商品開発に携わり、2003年JAAA広告賞新人賞受賞。博報堂退社後は信州大学特任教授、若者研究・メディア研究を中心に、次世代に関わるさまざまな研究を実施。テレビをはじめメディアのコメンテーターとしても活躍中。著書多数。近著に『アフターコロナのニュービジネス大全新しい生活様式×世界15ヵ国の先進事例』(小祝 誉士夫共著ディスカバー・トゥエンティワン刊)など。
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