ICTコラム
第3回 AI導入で変わる、コールセンター運営とオペレーターの働く環境【最終回】記事ID:D40007
この連載ではこれまで2回にわたり、最先端のAIソリューション導入で実現するコールセンターの業務効率化、低コスト化、お客さま満足向上などについてご案内してきました。最終回の今回は、AIによる「FAQ」の効率的な運用とその効果について、引き続きNTTコミュニケーションズ株式会社へのインタビューを通じてレポートします。
コールセンターの課題は「人手不足」と「外国語対応」
—コールセンターが現在抱える課題について、あらためて教えてください。
松本:人手不足と外国語対応です。人手不足はオペレーターの稼働の逼迫につながるだけでなく、適切な数のオペレーターを配置できないことが長い待ち時間につながり、お客さま満足の低下が生じます。また日本に居住する外国人は年々増え、コールセンターでも外国語対応のニーズは高まっています。しかし外国語を使いこなせる人材の確保は、人材そのものが少ないこと、またそうした能力を持つオペレーターを確保するには高い人件費がかかることから、容易ではありません。
落合:企業の提供する各種サービスが多様化していることも、課題として挙げられます。お客さまからのお問い合わせが細かくなればなるほど、オペレーターはマニュアルの確認などに時間を取られ、お客さまをお待たせすることになります。またそうした“自己解決”ができない場合、オペレーターはセンター内で“分かる人”に問い合わせる形となり、これが受け皿となるベテランスタッフやSVの負担増をもたらします。こうした回答をスムーズにするためにはFAQの適切な管理が不可欠ですが、その管理そのものにも時間やコストがかかります。
AIソリューション活用が業務効率化とお客さま満足向上に
─そうした課題をAIはどう解決できるのでしょう。
松本:「COTOHA Chat & FAQ」は、AIチャットボットがお客さまがテキスト入力した日本語の質問の意味を理解し、FAQの回答の中から適切なものを選んで表示します(図1)。もしお客さまの質問が複雑で適切な答えが見つからない場合は、オペレーターにエスカレーションし、対応を引き継ぐこともできます。この時、オペレーターが見るディスプレイにはそれまでの会話のログが表示されるため、オペレーターはお客さまにお問い合わせ内容をあらためて確認する必要がなく、そのまま回答に入れます。実際の利用シーンで考えると、一般的な質問は「COTOHA Chat & FAQ」に任せ、オペレーターを複雑な質問や重要、緊急の問い合わせへの対応に振り向けることで、人材不足によるオペレーターの稼働逼迫という事態を回避することができるでしょう。さらに24時間365日の対応も可能となり、お客さま満足の向上にもつながります。また「COTOHA Chat & FAQ」は強力なログ管理機能を持っていて、問い合わせの多かったキーワードなどを自動で集計し順位付けします。適切に答えることができなかった質問はどのようなものかといった分析も可能で、FAQの品質向上も図れます。
日本人オペレーターによる外国語リアルタイム対応も実現
— 外国語対応の人材不足について解決できることはありますか。
松本:AI翻訳サービスと連携した「COTOHA Chat &FAQ マルチリンガル機能」は、「COTOHA Chat & FAQ」が読み込んだ日本語のFAQをAIが13カ国語(英語、中国語<簡体字>、中国語<繁体字>、韓国語、タイ語、ベトナム語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、インドネシア語、ロシア語、イタリア語)にリアルタイム翻訳し、外国語での問い合わせに対応できるようになります。オペレーターが対応を引き継いだときも、オペレーターの画面にはAIが翻訳した日本語が表示され、オペレーターが入力した日本語もリアルタイムに外国語化されお客さまに示されるので、外国語対応可能なオペレーターを配置しなくても外国のお客さまへのお問い合わせに適切に答えることが可能になります。このマルチリンガル機能は2021年度中にAI音声認識により、お客さまの音声入力に対応する予定です。
—オペレーターの回答業務の支援には、AIはどのように活用できるのでしょうか。
落合:「COTOHA Search Assist」は、AIを使い、FAQやマニュアルを検索するソリューションです。先ほど申し上げたように、オペレーターは細かい質問に対してはマニュアルを調べ、回答する手間が必要となります。しかし「COTOHA Search Assist」はオペレーターが質問を入力するだけでマニュアルやFAQから得た回答を表示するため、お客さまの待ち時間の短縮による満足度向上が実現できます。また、オペレーターによる自己解決の範囲が広がることで、ベテランやSVの負担も軽減できますし、テレワークによる在宅勤務などでほかのスタッフとのコミュニケーションが難しい場合でも、円滑なお客さま対応が可能となります。また検索履歴からよくある質問、解決できなかった質問を抽出することで、効率的なFAQの作成、運用にも役立ちます。(図2)
学習済みのAIなので、導入後の素早くかつ精度の高い稼働も可能に
— 導入に向けて注意しなければならないことはありますか。
松本:「COTOHA Chat & FAQ」に使われているAIエンジンと辞書は既に学習済みなので、導入いただく事業者さまごとに事前学習やチューニングを行わない状態でも、70%以上という高い回答精度が得られることが確認されています(自社調べ)。事業者さまには回答のベースとなるFAQのデータをご用意いただく必要がありますが、弊社で用意している新型コロナウイルス関連、総務・IT関連などのFAQテンプレートをご活用いただくことも可能です。またSaaS(※1)でのご提供となるため、オペレーターへのエスカレーションや管理ポータルでの統計情報分析などの利用にはインターネットに接続したパソコンが少なくとも1台、必要となります。
落合:「COTOHA Search Assist」も事前学習済みなので、業界特有の単語を登録する以外、手間がかかる部分は少なく、導入へのハードルは低いと考えています。
— 今後、これら二つのソリューションはどのような発展を考えていますか。
落合:「COTOHA Search Assist」は、よりいっそうの回答精度向上を目指しています。
松本:いま「COTOHA Chat & FAQ」の利用にはあらかじめFAQを用意する必要がありますが、これを改良し、「COTOHA Search Assist」の機能を取り入れてAIとAPI(※2)でシステム連携し、AIチャットボットがSearchAssist上のドキュメントを直接参照して答える仕組みを現在開発中です。これが実現すれば、よりお手軽にご利用いただけるようになるでしょう。
導入事例 NTTコミュニケーションズ株式会社 デジタル改革推進部情報システム部門
社内の情報システム問い合わせ窓口に「COTOHA Chat & FAQ」を導入、対応負荷を軽減
NTTコミュニケーションズでは、パートナーを含め2万5,000人ほどのスタッフから社内ITについての問い合わせを受ける「デジタル改革推進部情報システム部門」で、2020年8月より「COTOHA Chat & FAQ」を導入し利用しています。弊社には社内ポータルサイトに社内向けのFAQを設置していますが、設計が古く、たとえ答えが用意されている質問でも、答えを探し出すのに何度もクリックする必要がありました。そのため、それを嫌がるスタッフによる情報システム部門への電話での問い合わせが恒常化しており、その負荷の削減が課題となっていました。
当初は社内ポータルサイトのリニューアルにあわせて導線を改善し、対応することを考えていましたが、より使い勝手を良くし、利用率を高めるため、リニューアルの際に「Teamsアダプタオプション」という機能を使い、社内での情報共有やテレワークでのコミュニケーションに広く使われている「Microsoft Teams」に「COTOHA Chat & FAQ」を組み込む形としました。
導入後は「Microsoft Teams」を開くと、左のメニューにこのサービスの愛称である「FAQ_おおるりちゃん」が表示されます。ここをクリックするとチャットのウィンドウが開き、質問を入力することでポータルサイト上の回答ページがリンクで案内される仕組みとなっています。ちなみに「おおるりちゃん」という愛称は「オールリクエスト(すべての要求)に答える」という意味合いから来たもので、すでに勤怠管理に使っていた名称をシリーズ化の意味で採用することにしました。
導入しての手応えは、利用数から見るとまずまずだと感じております。ただ一方で対応しているFAQのコンテンツがまだ一部にとどまっていることから、より多くの質問に答えられるよう、FAQの内容を充実させていくとともに、質問内容と回答を分析し、精度の向上も図っていきたいと思います。
「FAQ_おおるりちゃん」が表示されるトップ画面
※ SaaS:「Software as a Service」の略で、アプリケーションソフトをサーバー(主にクラウド)で動かし、インターネット経由で利用者に提供すること。
※2 API:「Application Programming Interface」の略で、ソフトウェア同士が連携し、あるソフトウェアから別のソフトウェアへデータなどを提供する仕組みのこと。
松本 崇氏
プラットフォームサービス本部
アプリケーションサービス部
AI推進部門 第一グループ
主査
落合 孝壮氏
プラットフォームサービス本部
アプリケーションサービス部
AI推進部門
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