電話応対でCS向上コラム
心理的安全性の「よくある誤解」記事ID:C10156
「心理的安全性」が注目される一方で、「仲良し職場」「ヌルい職場」「部下に何も言えなくなる」といった誤解も広がっています。本稿では、よくある誤解を解きほぐし、心理的安全性の本質である「成果に向かって建設的に意見を言い合える環境」の正しい理解を目指します。
ヌルい職場という「誤解」
連載第1回では「地位や経験に関わらず、誰もが率直に意見を言い合える」という心理的安全性の定義を解説するとともに、その構成要素である「話助挑新=話しやすさ・助け合い・挑戦・新奇歓迎」について述べました。
連載第2回となる今回は、その「心理的安全性」の誤解についてお伝えします。よくある誤解は「心理的安全な職場にするには、部下に優しくすることだ」「部下の意見は、心理的安全性確保のためにも何でも受け入れなければならない」という誤解です。
しかし、定義で示した通り「成果に向けて、互いにしっかりと話ができる」ことが心理的安全性であって、ヌルい職場というのは誤解にすぎません。
仕事の「基準」と「心理的安全性」の関係
出典:Edmondson,A.C.(2018).The fearless organization:Creating psychological safety in the workplace for learning,innovation,and growth.John Wiley & Sons.より筆者が一部改変
「誤解」をひもとくためにも、図のような「心理的安全性」の高低を縦軸に、仕事の「基準」の高低を横軸にとった表を考えてみます。仕事の基準とは、品質やクオリティを上げようという姿勢や、納期をしっかりと守ろうとする姿勢、いわば妥協点が高く、ハイスタンダードな仕事を目指す職場だと考えてください。
そうすると、私たちの職場は、それぞれ次の4つの職場(図の左下から時計回り)へと分類できます。
•サムい職場(低基準×低安全性):余計なことをせず自分の身を守る
•ヌルい職場(低基準×高安全性):コンフォートゾーン、充実感なし
•学習する職場(高基準×高安全性):健全な衝突と高いパフォーマンス
•キツい職場(高基準×低安全性):不安と罰によるコントロール
ここで、図左上の「ヌルい職場」を見てみましょう。ヌルい職場というのは、心理的安全性は高いけれども仕事の基準は低い職場のことです。この職場が「ヌルい」のは、心理的安全性が悪さをしているわけではありません。
ヌルい職場から、心理的安全性を下げていくと、左下=サムい職場、より悪い職場になるだけです。ヌルい職場の原因は、心理的安全性ではなく、低い仕事の基準にあります。今現在ヌルい職場なのだとしたら、やるべきことは、心理的安全性の高さを維持したまま、しっかりと仕事の基準を上げることです。
しかし、一見、仕事の基準を上げると、心理的安全性は低下してしまいそうにも感じます。どのように考えたらよいのでしょうか?
心理的安全性と仕事の基準の「相乗効果」
筆者が経営する株式会社ZENTechで日本国内の3,000チームを対象にデータを分析し、発見した事実があります。それは「心理的安全性」と「仕事の基準」は大きく相関するということです。心理的安全性が高いチームは仕事の基準が高いことが多いし、仕事の基準が高いチームは心理的安全性が高いことも多いということです。
なぜでしょうか? それは「高い仕事の基準」が共有されている組織・チームのほうが、その目標を達成するために「であれば、もっとこうしませんか?」「この懸念は、先に対処すべきだと思います」と、意見が言いやすくなるからです。逆に心理的安全性が確保された状況であれば、不十分な成果や仕事に対して「もっと、ここまでやってほしい」と相手に対し、チームで保つべき高い基準を率直に伝えることもできます。
このように、心理的安全性と仕事の基準は相乗効果があるものです。別の言い方をすれば心理的安全性と仕事の基準を、螺旋階段のように登っていくと、それらが両立した「学習する職場」が作りやすいのです。
学習する職場を実現する本当の心理的安全性とは
ここまで心理的安全性とは、上司からもメンバーからも建設的に意見を言い合える状態だということを見てきました。「上司が高圧的に話し、部下が忖度する」でも「上司が言いづらく部下が好き放題」でも、どちらも心理的安全性が欠如しているということです。
それでは、心理的安全性と仕事の基準を両立した「学習する職場」とは、どのような職場なのでしょうか? 学習する職場の特徴は「健全な衝突」です。成果に向けて仕事を前に進めるために、必要があれば、立場や状況に関わらず意見が言える職場です。
心理的安全性は「甘さ・優しさ・してあげること」ではなく、成果に向かうための「土台」です。異論を一つ言ってみるところから、異論を一つ受けとめてみるところから、心理的安全性づくりを始めてみてはいかがでしょうか。
株式会社ZENTech 代表取締役。一般社団法人日本認知科学研究所 理事。武蔵野大学 しあわせ研究所 研究員。東京大学工学部卒。シンガポール国立大学 経営学修士(MBA)。神戸市出身。研究者、データサイエンティスト、プロジェクトマネジャー。組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。心理的安全性の計測尺度・組織診断サーベイを開発するとともに、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進。
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