電話応対でCS向上コラム

心理的安全性とは?

記事ID:C10154

昨今、さまざまな組織で注目を集めている「心理的安全性」。キーワードとして知られているだけではなく、多くの組織で実践も進んでいます。この「心理的安全性」をテーマに全12回(予定)の連載をお届けしていきますが、1回目の今回は、「心理的安全性とはどのようなもので、なぜ重要なのか?」について解説していきます。

学習でき、成果の出る組織の鍵「心理的安全性」

 心理的安全性とは、何でしょうか? 一言で言えば「地位や経験に関わらず、誰もが率直に意見を言い合えること」です。
 「私はもっとこうしたほうが良いと思います」「この懸念点は、早めに対応しませんか。私の方で簡単なたたき台を作成します」「そうではなく、ここはもっとこうしてほしい」など、同僚同士、上司からメンバー、メンバーから上司、そして時には組織やチームの壁を超えて人々が協力し合える環境が「心理的安全性」です。
 率直に、意見を言うこと。それだけのことです。もちろん、相手を傷つけたり失礼なことを言っていいわけではありませんから、「相手が受け止めやすいよう、効果的に意見を伝え合えること」と表現してもよいでしょう。それだけのことが、チームを機能させ、組織をより生産的に、活気あるものにします。
 具体的な効能としては、エンゲージメントの向上や離職率の低下、また、著者が近年、大手製造業さまと共同で行った研究では、工場などの物理的な安全性や、安全文化にすら好影響を与えるのが心理的安全性です。それも、変化が激しく移り変わりの早い業界でこそ、重要で効果的だということが分かっています。

変化の激しい「今」こそ、心理的安全性が重要

 心理的安全性は、組織・チームに所属する一人ひとりが、声を上げることを可能にします。強くて有能なリーダーが一人で決断を行い、組織はリーダーの号令一下、手足のように動く…という時代は過去のもの。この複雑で変化の激しい時代の中では、いかに有能なリーダーでも未来を見通すことは難しく、方針も計画も、軌道修正をせざるを得ないことも多いものです。
 事実、コロナウイルス襲来前から、あの大きな社会的変化に備えていた企業がどれほどあったでしょうか?
 また昨今の生成AIの大きな変化を予測し、手を打てていた会社が、どれほどいたでしょうか?
 そんな変化の時代にあって、組織やチームの力が重要です。組織やリーダーが計画した時点や動き始めた時点では正しくとも、世の中が素早く移り変わり、今現在は間違った方向に進もうとする時「今の方針では、あまりうまくいっていません。こうしたほうがいいのでは?」「お客さまからの新しい要望があったのですが」といった、声を上げてくれるメンバーの存在はますます重要になっています。

心理的安全性を構成する四因子:話助挑新(わじょちょうしん)

出典: 心理的安全性のつくりかた(日本能率協会マネジメントセンター)2020. 石井遼介

 それでは、心理的安全性を作るには、どうしたらいいのでしょうか?
 ここからは、心理的安全性の四つの因子、四つの構成要素(図参照)についてご紹介します。
1.話しやすさ因子:雑談や挨拶はもちろんですが、仕事を前に進めるために伝えるべきことを、相手に伝えるために必要な要素です。
2.助け合い因子:チームをチームたらしめる要素が助け合いと言えるでしょう。通常業務やルーティンでの仕事を超えて、トラブルや繁忙期など、非定常時にも効果的に対処するために必要な要素です。
3.挑戦因子:世の中の変化に対応し、また自ら変化を先導するために重要な要素です。イノベーションや新規事業のみならず改善や工夫ができる組織のための要素です。
4.新奇歓迎因子:ダイバーシティ※1&インクルージョン※2の土台となるのがこの要素。組織の中の一人ひとりの才能を歓迎し、輝かせるために重要です。
 心理的安全性というキーワードは、「ヌルい職場では!?」など、誤解も少なくない言葉です。この「話助挑新」というモノサシを当ててみることで、自組織・自チームの現状を把握し、また仲間とともにチームを前に進める第一歩を、踏み出していただければと思います。

※1 ダイバーシティ
直訳すると「多様性」を意 味し、多様な人材を活かすことを指す。
※2 インクルージョン
直訳すると「包括」「包含」などを意味し、多様な人材が互いに尊重されながら活躍できている状態のことを指す。

石井(いしい) 遼介(りょうすけ)

株式会社ZENTech 代表取締役。一般社団法人日本認知科学研究所 理事。武蔵野大学 しあわせ研究所 研究員。東京大学工学部卒。シンガポール国立大学 経営学修士(MBA)。神戸市出身。研究者、データサイエンティスト、プロジェクトマネジャー。組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。心理的安全性の計測尺度・組織診断サーベイを開発するとともに、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進。

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