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給与計算とは記事ID:C10136
給与計算は、従業員との信頼関係の基盤です。今回は、給与計算の基本的な仕組みや注意点、デジタル給与払いなどの最新動向、よくある誤解について解説します。
給与計算の基本
給与計算とは、従業員の労働の対価として支払う賃金を正確に算出する業務です。基本給に加えて、残業代、各種手当、控除などを正しく計算する必要があります。給与計算は毎月定期的に発生する業務であり、ミスがあれば従業員の信頼を損ない、場合によっては法的トラブルに発展する可能性もあります。
給与計算には「支給対象期間」と「支払日」があります。○日締め、○日払い、というように表現されます。例えば末日締め・翌月25日払いであれば、4月1日から4月30日までの給与を、5月25日に支払うということになります。これは会社ごとに決まっています。
勤怠の締めと、給与の締めが異なる場合もあり、その場合、基本給と残業代などの対象期間が異なるということもありますので、注意が必要です。
給与計算の方法
給与計算はまず「支給額」を計算します。基本給や各種手当など、労働契約に基づいて、いくら支払うかを計算します。
具体的には、基本給など毎月支払うことが決まっている金額、それを基に残業代や深夜手当、休日手当などの契約外の賃金と必要な割増賃金を計算します。それから欠勤や遅刻などがあり、所定労働時間働かなかった分は控除します。
計算方法は、法律を最低限の決まりとして、会社ごとに決まっています。その決まりは就業規則や賃金規程など、雇用契約の内容に記載しておかなければなりません。開示してある方法で、自分の勤怠から自分の給与を計算できるようにしておくことが必要です。そうでなければ、会社の給与計算が合っているか、チェックできませんよね。あまりチェックする人もいないように思いますが、「しない」と「できない」は大きく違います。
なお、計算方法が周知している内容と合っていないと、未払い賃金となるリスクがあります。賃金規程はしっかりと作成しましょう。
次に控除額です。控除は二種類に分けられます。法律で決められたもの(法定控除)と、会社独自のものです。法定控除は、社会保険の自己負担額と税金があります。社会保険は厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険、税金は源泉所得税と住民税。両方とも、本人が納めるべきものを会社が徴収し、代わりに納めています。
また、会社独自で定めた控除がある会社もあります。例えば社宅控除や、賄い代の控除などがある会社が多いと思います。また、社割で購入し、給与天引きで支払える会社などもありますね。このような法定以外の控除を行う場合は、労使協定が必要です。どのようなものを控除するのかをまとめて、労使協定を作成しておきましょう。
さて、これで支払額と控除額を計算しました。この差額が、いわゆる手取り額となります。この金額を本人に渡し、給与計算業務は完了となります。
賃金の支払い方法、原則は、手渡し?
労働基準法第24条では、賃金の支払い方を定めています。その中には、「本人に直接・通貨で」という原則があるのです。実は、振り込みのほうが例外なのです。しかし今、給与は振り込みが当たり前になっています。そして最近「デジタル払い(資金移動事業者口座への支払い)」も、例外として可能になりました。「資金移動事業者」とは、電子マネーやアプリを通じた送金など、少額の送金が可能な銀行以外のサービスのこと。「○○ペイ」というようなサービス名がつけられていることが多いですね。
給与を受け取る資金移動事業者は、厚生労働省の認可を受けていることが条件となります。2025年4月現在、四つの事業者がその許可を受けています。まずこのサービスを使うこと、それから本人の同意、労使協定、また、送金上限などもありますので、導入する際には注意が必要です。
給与について
最近、「交通費が課税対象になる」かもしれないというニュースがありますが、社会保険料はもともと交通費も対象になっていたことをご存じでしょうか? また4、5、6月は残業をしないほうがいいと聞いたことはありませんか? この期間の平均で一年の社会保険料を計算するためこのように言われています。ただ、会社の締め支払いに注意してください。末締め・翌月払いの場合、4、5、6月に支払われる給与というのは、3、4、5月に働いた分になります。
このように、意外と知られていない細かいルールがたくさんあるのが給与計算です。労働基準法、各社会保険の法律、税金の法律が絡み合って給与金額は決定されています。

1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。