企業ICT導入事例

-株式会社福島食品-
「従業員の幸せ」を目的にしたDXが売上倍増も実現した中小企業の取り組み

記事ID:D20051

慢性的な人手不足や高齢化に悩む中小企業にとって、業務効率化による労働環境の改善は喫緊の課題です。埼玉県を拠点に業務用総合食品卸売事業を展開する株式会社福島食品は、従業員の幸せに結びつくよう、デジタル化による企業変革を進めた結果、離職率が改善され、さらに数年間で売上高も倍増しました。今回は、同社の代表取締役社長である福島 一徳氏とDX推進室の吉田 彩有里氏に、こうした大きな成果を生み出した同社のDX戦略についてうかがいました。

昔ながらの働き方が招いた現場の疲弊と高い離職率

代表取締役社長 福島 一徳氏

 株式会社福島食品は埼玉県を拠点に、病院や老人ホーム、量販店などに冷凍食品を中心とした食材を供給する総合食品卸業の老舗です。同社は2018年から、デジタル技術を活用した業務や労働環境、企業風土の変革(DX)に取り組み、大きな成果を挙げてきました。しかし、DX推進以前は手書きの書類処理や汎用性に乏しいオフコン※に頼る、典型的なアナログ企業だったと福島氏は振り返ります。

福島氏:当社は通常約5,000品目の食品を扱っていますが、DX以前は仕入れから出庫、納品、請求に至る膨大な書類の作成や、業務日報の作成などをすべて手書きでこなしていました。非効率な働き方が慢性化して残業は当たり前となり、業務過多で疲弊した従業員の離職率は年間約3割に達していました。

DX推進室 吉田 彩有里氏

 同社は創業以来、「みんなが幸せになる会社」を企業理念に掲げ、従業員思いの経営を目指してきました。しかし、実際には離職率の高止まりが改善されず、会社の未来像を描くことも難しい状況に追い込まれていたのです。そこで2018年、福島氏は企業理念である「みんなが幸せになる」を実現するため、「DX推進室」を設立し、従業員が幸せに安心して働ける職場変革のために、デジタル化による課題改善を行うことを目指し、DXに取り組み始めました。

吉田氏:私たちDX推進室が最初に着手したのが、基幹部門である事務部門、倉庫管理部門、物流部門への聞き取り調査です。各部門の従業員から困っていることや、改善してほしい慣習などを聞き取り、デジタル化による改善を図りました。

改善は従業員の安心安全が第一 人に優しいDXで会社が激変

 そんなDX推進の第一歩となったのが、事務部門に2018年に導入した販売管理システムでした。

福島氏:従来は手書きで処理していた業務をデジタル化し、入出荷から在庫管理、伝票発行などをシステムで一元管理したことで、事務部門の業務負担を大幅に軽減できました。さらに2026年からはシステムをさらに進化させ、バーコードによる商品照合で誤出荷を防止したり、賞味期限管理を自動化したりするなど、より商品の安全性を高めています。

 次に、倉庫管理部門からは、倉庫温度管理の煩雑さに加え、作業の安全性や健康面に対する不安が報告されました。そこで2020年、倉庫温度管理システムを導入し、温度管理業務のデジタル化を進めました。

吉田氏:冷凍冷蔵庫の温度を24時間365日監視し、異常を感知した際には担当者へ即時通知するようにしました。以前は人が倉庫を巡回して温度計を確認していたため、夜間や休日には故障に気づけず、商品全損のリスクを常に抱えていました。

画像①/腕時計型デバイスには、転倒検知や位置情報管理機能もついている

 さらに2023年には、担当者の健康と安全を一元管理するため、腕時計型デバイス(画像①参照)の支給を開始しました。

吉田氏:当社では商品の入出庫において、約マイナス30℃の倉庫内で作業する機会が一日に何度も発生します。低温環境で何度も繰り返される作業は身体への負担が大きく、また、ドアの凍結による閉じ込めといった危険もあります。そこで、担当者には脈拍や体温などを計測するデバイスを着用してもらい、身体情報を事務所のモニターで確認できるようにしました。万が一の場合には、事務所のモニターが赤く点滅すると同時に電話でSOSが通知されるようにし、従業員が安心して働ける環境を整えることができました。

画像②/配送車の運行状況が可視化された事務所のモニタ

 物流部門では、配送作業に付随する事務作業が想像以上にドライバーの負担となり、残業の発生原因にもなっていました。そこで2023年、配送車にデジタル運行記録計を搭載しました。

吉田氏:ドライバーは一日に約20ヵ所の取引先を回ります。その都度、顧客名から発着時間、庫内の温度、走行距離などを手書きで記録する必要があり、繁忙期には記入忘れや誤記もしばしば発生していました。デジタル化により、これらの数値を自動計測し、事務所で一括管理できるようになったため、ドライバーは入力作業から解放されました。さらに、GPSによって各車の動向を事務所のモニターから把握できるようになり、ルートの無駄や電話による状況確認作業も省けたため、残業時間は大きく減少しました(画像②参照)。

従業員のモチベーションが 売上高倍増の原動力に!

 同社では、各部門の課題解決だけでなく、新たなビジネスチャンスの獲得にもデジタル技術やICTを積極的に活用しています。

福島氏:2024年に開設したBtoB専用ECサイトは、業務改善と売上向上に一役買っています。業界の慣習として、受注は今でも電話とFAXがメインのため、聞き間違いや入力ミスによる無駄は避けられませんし、何よりシステムへの入力作業が膨大な量に上ります。しかしECサイトで受注すれば、入力作業や確認作業が不要になる上、受注ミスも未然に防げるようになりました。ECサイトでの受注量はまだ多いとはいえませんが、従業員の負担軽減と同時にペーパーレス化なども実現できるため、ぜひ積極的に推進したいです。

 こうして、推進の過程で多くの改善を生み出した同社のDXですが、予想外ともいえる成果は「売上高が2倍に伸びたのに、残業時間は減った」ことだと福島氏は語ります。

福島氏:当社のDXは、従業員が働きやすい職場を作り、それがみんなの幸せにつながればとスタートしました。それだけに、それが売上増に結びついたのは、望外の喜びです。働きやすい環境を整えたことで従業員のモチベーションが向上し、それが営業力の強化、既存顧客の売上増、新規顧客の開拓にまで結びついたと分析しています。そして、売上増で仕事量は増えているのに残業時間は減っている。この現実こそ、DX最大の効果だと考えています。

吉田氏:かつて30%を記録した離職率ですが、2022年から4年連続でゼロを継続しています。省人化と適材適所の人事も進んでおり、例えば販売管理システムを導入したことで、従来5名いた受注担当者を3名に削減できました。2名は別の部署に異動し、新たな企業価値を生み出しています。給与アップも実現し、DX以前と比べて賞与額は140%に伸びています。

 「DXは人を幸せにするための手段」と位置づけ、労働環境の改善からスタートした同社のDXは、従業員一人ひとりの力が企業の成長を左右する中小企業にとって、大きなヒントになるでしょう。

※オフコン
オフィスコンピューターの略。主に中堅・中小企業の事務処理や基幹業務(販売管理・在庫管理・会計など)を効率化するために設計された小型のコンピューター。
会社名 株式会社福島食品
設立 1977年(昭和52年)10月(法人化)
所在地 埼玉県入間郡毛呂山町川角644-3
代表取締役社長 福島 一徳
事業内容 業務用総合食品卸売(常温商品、冷蔵商品、冷凍食品)
URL https://www.fuku-shoku.co.jp/
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