企業ICT導入事例

-株式会社ケイリーパートナーズ-
ICTを駆使したワークシェアリングで眠れる人材の戦力化に挑戦

記事ID:D20047

多くの企業で慢性的な人手不足が続く中、子育てで短時間しか働けない女性が、やりがいを持って仕事ができる職場環境を構築した、株式会社ケイリーパートナーズの取り組みが注目を集めています。ICTを駆使して「1日2時間勤務」を実現し、人手不足という社会課題の解決に挑んだ同社代表取締役の鷲谷 恭子氏に、設立の経緯や短時間勤務でも業務を滞らせない仕組みについてうかがいました。

短時間でも活躍できる職場づくりを決意

代表取締役 鷲谷 恭子氏

 2019年に福島県で設立された株式会社ケイリーパートナーズは、企業の経理事務やデータ入力といったバックオフィス業務の代行を主要事業としています。「1日2時間から」を掲げる同社の勤務体制は、東日本大震災時に参加したボランティア活動での出会いをきっかけに生まれたと、代表取締役の鷲谷 恭子氏は振り返ります。

 「出産を機に一般企業を退職し、地元の福島へ戻って数年後に震災が起きました。自分も子どももこの先どうなるのかと不安でいっぱいでしたが、それでも何かしなければと気持ちを奮い立たせ、ボランティア活動に参加しました」(鷲谷氏)

 そんな折、郡山市商工会議所で福島の未来を語り合う「郡山グランドデザインプロジェクト」が立ち上がり、鷲谷氏も検討メンバーとして加わりました。そこで企業から多く聞かれたのが「人手が足りない」という切実な声でした。一方、鷲谷氏の周囲には「短時間でも働きたい」と願う女性が数多く、企業と女性たちの間にミスマッチがあることに気づきました。

 「当時の自分を振り返ると、フルタイムの勤務は難しくても、娘を送り出してから帰ってくるまでの『2時間』であれば、なんとか可能かなという状態だったと思います。それでも、2時間しか働けない人材を個別に雇用するのは企業にとって現実的ではありませんし、一般的なパート勤務ではやりがいやキャリア形成に限界があります。私自身、出産前の総合職ではやりがいをもってキャリアを歩んでいましたが、この働き方では自分が望む形での育児とは両立できないと感じて退職を選びました。ならば、自分たちで『短時間でもキャリア形成ができる』ビジネスモデルを作るしかないのではと思い至り、ICTを活用したワークシェアリングに可能性を見出しました。相談した企業の皆さまからも前向きな反応をいただき、起業を決意しました」(鷲谷氏)

多様な働き方を支えるチーム力とICTの活用

チャットツールは相手を拘束せず、履歴が残る点、Web会議ツールは細かいニュアンスが伝わる点とそれぞれメリットがある

 ケイリーパートナーズのメンバーは現在、役員を含めて19名。全員が福島県に住む女性です。「1日2時間」でも働けるよう、テレワークやクラウドツールを導入して、業務を複数人で補完し合うワークシェアを前提とし、各自が働ける時間に働ける場所で業務を行える体制を構築しました。

 「業務体制は、1社につき3~5名のチーム制を採用しています。ボランティア時代にも、女性たちの高いコミュニケーション力や互いに補い合う力、良好なチームワークが発揮された時のパフォーマンスの高さを実感していたので、チーム制によるワークシェアは相性がいいと判断しました。また、誰かが急に休んでしまっても業務の流れを止めず、補い合える組織づくりを特に意識しており、当社のクレド(行動指針)にもチーム力を重視した約束ごとを盛り込んでいます」(鷲谷氏)

 同社では、ワークシェア体制でも業務のクオリティを維持できるよう、ICTを活用して必要な情報や進捗状況の共有を徹底し、業務の属人化防止に努めています。例えば、出退勤時に確認する社内掲示板や業務報告掲示板、全員のスケジュールなどをサイボウズOfficeで一元管理しており、業務に必要なデータはクラウド上で共有して全員が同じデータへアクセスできる環境を構築しています。また、多くの従業員がテレワークで勤務していることから、リアルタイムでの円滑な連携を図るためにチャットツールやWeb会議ツールを導入しています(上写真)。さらに、勤怠管理や契約などもオンラインで完了できる仕組みを作っています。

 「働ける時間帯や働き方が多様なので、誰が何をどこまで進めたのかといった進捗状況の共有は特に重視しています。そのため、引き継ぎ事項はテンプレート化し、誰が担当しても状況を把握しやすい体制を整えました」(鷲谷氏)

 コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増えた一方で、社内コミュニケーションの希薄化が課題となっています。同社もそれを防ぐため、Web会議ツールを使用したレクリエーションや、メンバー全員が参加する全社会議を定期的に開催しています。

 「例えば、オンライン読書会を開催し、感想を共有したり業務の悩みを話し合ったりしています。その際にはあえて業務では接点の少ないメンバー同士で組むことで横のつながりを強化しています。また、全社会議では全員に発言の機会を設けるなど、コミュニケーションの活性化と主体的な発言の促進を図っています」(鷲谷氏)

未経験からの挑戦が新たな道を切り拓く

まちづくりボランティアで市民講座を開催し、司会を務めた鷲谷氏

 短時間勤務で働く人にとって、キャリアアップの機会をいかに創出するかも、同社にとって重要なテーマの一つです。具体的な取り組みについて、鷲谷氏は次のように語ります。

 「当社はアウトソーシングという形で、さまざまな業務を受託します。その中にはメンバーにとって未経験の業務も含まれます。しかし、そんな時こそキャリアアップのチャンスであり、まずは挑戦してみることで、新たなスキルを身につけられる可能性が広がります。そのため、積極的にチャレンジしてもらうことを大切にしています。その結果、リーダー職を担うまでに成長した従業員も少なくありません。新たな経験を積むことによって、『次にやりたいことができた』と“卒業”していく従業員もいて、私たちも全力で応援し送り出しています」(鷲谷氏)

 デジタルツールを日常的に活用している同社には、顧客企業からDXの相談が寄せられることも増えていると言います。

 「当社も最初はICTの知見がない社員も多く、携帯メールくらいしか使ったことがないという人もいました。設立からすぐにコロナ禍に入ったこともあり、デジタルツールの導入には覚悟を決めて取り組みましたが、重視していたのは現場のメンバーにとっての使いやすさです。その点については試行錯誤しながら進めてきた自負があるので、ご相談いただく企業さまにも役立てているかなと思っています。企業さまからのご相談で最近多いのは、便利さを優先してツールを導入した結果、かえって業務が“ブラック化”してしまうケースです。例えば、休日でもチャットを確認しなければならず、休んだ気がしないといった相談です。これは、当社でも同様の経験がありました。そのため、ツール導入時には『就労時間以外は見ない』といったルール設定もセットで行うよう助言しています」(鷲谷氏)

 同社の取り組みは、全国ワークスタイル変革大賞(企業部門)で大賞を受賞するなど、高い評価を受けたことから、現在も「1日2時間からキャリアを再スタートしたい」と、採用の問い合わせが寄せられると言います。フルタイムは難しくても社会とつながり、自分のキャリアを築きたい……。そうした思いを抱く人材は、福島県に限らずどの地域にもいるはずだと鷲谷氏は語ります。デジタルを活用したワークシェアリングは、人手不足解消の新たな選択肢として、眠れる人材を掘り起こす可能性を秘めています。

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会社名 株式会社ケイリーパートナーズ
創業 2019年(令和元年)10月
本社所在地 福島県郡山市台新1丁目31-9 山一ビル106
代表取締役 鷲谷 恭子
資本金 600万円
事業内容 企業の経理事務・データ入力などのバックオフィス業務支援をはじめ、DX支援や人材定着支援など、企業のニーズに寄り添った事業展開を行う
URL https://www.kaley.co.jp/

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