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企業ICT導入事例

震災の記憶、 教訓を後世に伝えるために

プロモーション

公開日:2021/08/25

未曽有の大災害となった東日本大震災発生から今年で1 0年。人々の記憶や関心が薄れ、震災を振り返る機会が減っていますが、過去の災害の経験や教訓に学ぶことは近年、ますます重要になっています。そこで、今回は災害の教訓を風化させることがないよう、東北地方でICTを活用しながら震災伝承に取り組む方々にお話をうかがいました。

公益社団法人3.11みらいサポート
東日本電信電話株式会社 宮城事業部
一般財団法人3.11伝承ロード推進機構

(公社)3.11みらいサポートの取り組み

公益社団法人 3.11みらいサポート
理事 藤間 千尋氏

 宮城県石巻市で、東日本大震災発生後に発足した「NPO・NGO連絡会」の事務局機能からスタートし、2011年5月13日に前身となる「石巻災害復興支援協議会」として設立。現在は、「つなぐ 3.11の学びを生きる力に」をミッションに、震災の語り部と人々をつなぎ、災害時に大切な命が守られる社会の実現を目指している。

伝承活動を「点」で行うのではなく、 協力し合う「面」で活動

被害がリアルに感じられるよう、津波伝承A Rアプリを活用した石巻市の震災 伝承ツアー

 日本だけではなく、世界中でさまざまな災害が起きている中、震災の実情と教訓を後世へ伝えていく「震災伝承」活動はますます重要になっています。被災地にも、東日本大震災の教訓を後世に語り継ぎ、災害から人々の命を守ることにつなげたいとの想いをもつ人がたくさんいます。一方で、東日本大震災の被害はあまりにも広範囲なため、個人や団体が「点」で活動するのではなく、各々が協力し合い「面」で活動することによって大きな力になると考え、「3.11メモリアルネットワーク※1」が2017年に立ち上がりました。現在、震災伝承、防災・減災活動の「連携」「企画」「育成」の三本柱を掲げ、岩手・宮城・福島の3県を中心に活動を展開しています。私たちはこの組織の事務局を担うとともに、ICTも活用しながら、伝承活動に取り組む各地の個人や団体、学ぼうとする人々をつなぎ、伝承の現場の課題解決に取り組んでいます。例えば、被災体験を語り継ぐ「語り部」の中には、10年という歳月を経て、自分の体験のどの部分を伝えるべきか迷う人もいます。私たちは、語り部と対話しながら、「なぜそういう行動ができたのか」「なせ逃げられたのか」「なぜ引き返したのか」ということを何度も問いかけて、伝えるべき内容を整理して話す「場づくり」を行っています。
 震災伝承は、社会の利益につながる活動です。世界では様々な災害が起きているので、語り部一人ひとりが少しでも多くの教訓を伝えられるようになれば、次の災害が起きたときに、被災者の命を守ることにつながります。私たちは、「3.11メモリアルネットワーク」の活動を支えることで、震災伝承の社会的な価値を高めたいと考えています。

ARやVRアプリで津波の被害を体感し、避難行動につなげてほしい

被害のあった建造物や地域の様子を3 6 0度画像として見ることのできるV Rグ ラス(現在、新型コロナウイルス感染拡大抑制のため展示は休止中です)

 当初の震災伝承活動はアナログ的なアプローチのみでしたが、2014年からはICTを活用し、より効果的な活動ができるようになりました。その一つが、AR※2やVR※3技術を使ったアプリです。このアプリでは、今はもう見ることができなくなってしまった震災前や被災直後の街の様子と、現在や未来の街の姿を比較することで、災害時の避難行動や命の大切さを学ぶことができます。実際に、AR体験をした子どもたちからは「津波って、お父さんの背よりも高かったんだ!」と声が上がるなど、津波の高さを直感的に体感することもできます。少しずつ街がきれいになってくると、石巻を訪れる人から「ここは本当に津波が来たのか」といった声が聞こえるようになりました。災害時にとるべき行動を考える上でも、「ここは津波が来た場所だ」と認識しておくのと、そうでない場合とでは、理解度が違ってくると思うのです。アプリがあることで実際に石巻に訪れることが難しい方でも、東日本大震災の学びに触れることができるため、多くの教育現場でも使っていただいています。

アフターコロナでも「震災伝承」をオンライン授業で伝えていきたい

対面による活動だけでなく、オンラインの活用により遠隔地への伝承活動も 展開

 私たちは、コロナの影響からオンライン授業にも取り組んでおり、昨年度だけで1万人以上の小中高校生に参加していただきました。海外の方だけでなく、日本でも遠方に住む人にとって、東北は気軽に来られる場所ではありません。そのため、時間、距離、お金の壁を越えて実施できるオンライン授業には大きな価値があると感じています。その取り組みの一環として、NTT東日本宮城事業部の協力を得ながら、国内・海外の小中高校生を対象にオンライン授業を実施しています。受講生の感想文には「家族とすぐに話しました」などと書かれることもあり、「語り部」の経験や想いが伝わっていることを実感していますので、アフターコロナでも続けていきたいです。
 そして、私たちの目指すところは、やはり伝承活動の社会的な価値を上げることです。例えば、平和を学ぶなら広島・長崎という考えが浸透しており、終戦から70年以上経った現在でも、普遍的な価値を発信し続けています。東北でも多くの人が犠牲になり悲しい思いをしました。以前、子どもを亡くしたお母さんから「誰かの教訓になるために子どもを亡くしたわけではない」と言われたことがありますが、同時に「せめて教訓にはしてほしい」とも言われました。そういう想いや願いを伝えるためにも、「防災や津波を学ぶなら東北の太平洋沿岸部」というイメージが浸透するように努力していきたいと思います。

【コラム】未来のかけがえのない命を守るため、教訓をしっかり伝承していきたい

公益社団法人3.11みらいサポート
語り部 高橋 正子氏

 コロナ禍でお客さまに来訪いただくことが困難な中、一度に大勢の方に聞いていただけるなど、オンライン発信に大きなメリットを感じています。開始当初は、視聴者の表情が分かりづらく、しっかり伝わっているのか不安でしたが、絵本を使い語った小学生向けのプログラムで、心に響いたという感想をいただけたことが印象に残っています。震災の記憶がない世代に災害の教訓を伝承し、未来のかけがえのない命を守るためにつなげていきたいと思います。

※1 3.11メモリアルネットワーク:東日本大震災の教訓の伝承に関わる個人・団体・拠点施設が地域や世代を超えてつながり、「災害で命が失われない社会の実現」「被災者や被災地域の苦難を軽減し、再生に向かうことのできる社会の実現」を目指して活動している。

※2 AR:「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳される。実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を“仮想的に拡張する”というもの。

※3 VR:「Virtual Reality」の略で、スクリーンにリアリティを高めた視覚映像を投影する「仮想現実」。非現実の世界をあたかも現実のように感じさせるもの。

東日本電信電話(株)宮城事業部の取り組み

写真左から、ビジネスイノベーション部 森 勝哉氏、嶋田 美里氏、担当課長 高橋 由佳氏

 地域のさまざまな産業や人々の暮らしの活性化を目指し、ICTの活用による課題解決や新しい価値創造を通した取り組みを行っています。

コロナ禍の「震災伝承」をICTで支援したい

 東日本大震災から10年、そしてコロナ禍で他地域の方が被災地を訪れることが難しい状況の中、「ICTを活用して震災伝承を支援したい」という想いから、オンラインによる復興ツーリズムの普及に取り組んでいます。これまでに、仙台市の小学5年生、東京都の小学6年生、アメリカの高校生に対してオンライン防災学習を実施しました。GIGAスクール構想で生徒一人ひとりに貸与されている端末を活用したVRコンテンツ学習や、震災伝承館からの語り部さんの講話、震災遺構※4のバーチャルツアーなど、すべてのパーツをスムーズに配信できるよう、準備から当日の運営サポートを行っています。
 今の小学生は震災を経験していないか、当時の記憶が薄い子どもたちです。そのため、防災学習はオンラインであっても臨場感をもって震災を体感することがとても大事だと考えています。ある学校の授業では、語り部さんが「中学生になる前に親御さんと新しい通学路を歩いて危険個所を確認してほしい」と伝えたところ、後日、参加した小学生から「家に帰ってお母さんと通学路を確認しました」という手紙をもらいました。オンライン授業の学びを基に実際の行動に移したことはとても嬉しかったですし、震災を伝承する意義を感じました。アメリカの高校生からも「将来東北に行き現地で学びたい」という意見が寄せられました。
 アメリカの高校生へのオンライン授業において、NTT東日本は、事前準備から当日のバックアップまでお手伝いしました。オンラインビデオツールはZoomを使用したのですが、日本とアメリカの通信となるので、万が一のトラブルに備えてバックアップを万全にしました。プログラムは、現地時間の夜に行われたので、生徒は自宅から各自の端末で参加しました。当日は、バーチャルツアーなど日本語で説明される部分を、翻訳アプリでリアルタイムに翻訳することになっていたので、音声や映像がスムーズに届いているかを入念に確認しました。また、語り部さんや通訳さん、司会の方に必要な端末を用意したり、複数台あるマイクが干渉しないようなセッティングをしたりなど、事前に細かくチェックした成果もあり、当日はスムーズに実施することができました。

「復興ツーリズム」を通して、東北地方の活性化に貢献したい

 今後は被災地が被災から再建、復興していくまでの状況を伝えるとともに、防災の大切さを考えていただく「復興ツーリズム」のサポートを継続することで、東北地域の活性化に貢献していきたいと考えています。例えば、企業や自治体などを対象とした「オンライン視察」などのプログラムが円滑に行えるようサポートし、「オンライン×リアル」の仕組みを作ることで、地域の活性化につなげていければと思います。これまで、企業向けのオンライン研修受講者からは「オンラインであってもリアルな震災とそこからの再建を感じることができた」「企業のBCP対策を考える上で意義がある研修」といった声をいただいています。
 東日本大震災から10年が経ち、今後の伝承はますます重要になると考えます。震災伝承施設などからICTを活用したプログラムを継続的に発信することができるよう、今後も取り組んでいきたいです。

日本語を学ぶアメリカの高校生を対象とした、オンライン授業の様子

(一財)3.11伝承ロード推進機構の取り組み

一般財団法人3.11伝承ロード推進機構
事務局長 原田 吉信氏

 3.11伝承ロード推進機構は、2019年8月に東北経済連合会と東北地域づくり協会が設置した一般財団法人。被災地にある震災遺構や震災伝承施設を震災の教訓の「学び」の場として、国内外に対して発信することで、地域の防災力を高めるだけでなく、被災地との交流を促し、地域活性化に貢献することを目的としている。

震災伝承施設をネットワーク化した「3.11伝承ロード」を訪れてほしい

当時の被害状況、復興過程が展示物や映像で学べる、福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館

 3.11伝承ロード推進機構では、東日本大震災の震災伝承施設をネットワーク化して、目的を持って回る方々に施設情報などを提供しています。これによって、広大な東北の拠点を効果的に巡ることができ、学びが深くなると考えています。
 初めて来られる方には、福島・宮城・岩手の3県にある伝承館を訪れてほしいですね。福島県双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」では、原子力災害とはどういうものかありのまま展示しており、放射線の怖さが伝わります。宮城県の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」では映像をふんだんに使って津波の教訓を伝えていますし、岩手県の「東日本大震災津波伝承館」では、地震発生のメカニズムから各自治体の被災状況、震災後の活動まで手に取るように分かります。また、3.11伝承ロードのイラストマップも好評で、青森県を含めた各県版を用意しています。

海水の排水作業や道路復旧など、建設業の社会貢献を映像で伝えたい

震災遺構の一つ、岩手県「たろう観光ホテル」。4階まで浸水し、1・2階は完全に破壊されてしまった

 ICTを活用した取り組みとして、震災からの復旧・復興で果たした建設業の人々の働きを震災のレガシーとして残すために、映像コンテンツの制作・配信に力を入れています。映像は、紙媒体と比べてはるかにインパクトがあります。特に私たちが着目しているのは、被災直後のメディアではあまり取り上げられない建設業のリアルなストーリーです。災害後、がれきの撤去や津波の排水をやらないと救助活動が始められません。余震の続く中、自身も被災しながらも不眠不休で行った復旧活動があまり世の中に知られていないので、この活動をしっかりと映像で伝えていきたいと思っています。
 今後は大小20施設以上ある震災遺構に注目してもらうことを目標にしています。津波の恐怖や自然への畏怖、助かった教訓など、遺構の一つひとつに必ずストーリーがある上に、リアルで脚色が一切ありません。圧倒的なインパクトがありますので、これまでの自分の生活や考え方を見つめ直す大きな契機になると思いますので、ぜひ訪れていただきたいですね。
 単に災害の怖さを体感するだけでなく、そこにいた人々がどんな想いで暮らし、どんな気持ちで逃げたかを考えると、人生観が変わる旅になると思います。進学、就職、定年退職など人生の転換期に、3.11伝承ロードは「一度は行ってみたい、もう一度周ってみよう」と思えるような「現代版 奥の細道」になると思っています。また、実際に訪れてくださった方々には、被災地が発信する教訓を持ち帰って、ご自身の住む地域の防災につなげていただきたいと思っています。

震災伝承施設はもちろん、地元の名所や名物なども紹介されたイラストマップ(宮城県版)

※4 震災遺構(しんさいいこう):震災が原因で倒壊した建物などを、震災が起きたという記憶や教訓のために、取り壊さないで保存しておくというもの。

  • 公益社団法人3.11 みらいサポート
    宮城県石巻市門脇町5-1-1 2F
    https://311support.com/

  • 東日本電信電話株式会社 宮城事業部
    宮城県仙台市若林区五橋3-2-1
    https://www.ntt-east.co.jp/miyagi/

  • 一般財団法人3.11 伝承ロード推進機構
    宮城県仙台市青葉区本町3-2-26 3F
    https://www.311densho.or.jp/

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